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遠い親戚のお墓の前で痴話げんかすることが多くなってきましたが、何か?


「ん~。も~。そんなにこの世界の仕組みに興味津々なら、混沌宮に行って、自分で『手紙の僕』の資料に目を通せばいいじゃない?」


 最初にモードリン様のお墓参りをしてから、3ヶ月が経った。


 僕はミル目線の『手紙の僕』の話を聞いて、吹っ切れた。

 なんというか、いい意味で、真面目度が下がった。


 というのも、ミルと僕は、週末と月の日、火の日にピーターバラとリーズの公務を入れるようになった。


 国内外を精力的に回り、沢山の魔族と触れ合うようになった。

 まだ若いから、大した公務ではない。


 夏野菜の収穫イベント、漁港の視察、魔道具の生産工場の見学、病院の慰問、新しい劇場のこけら落とし、スポーツイベント、などなど。


 その裏で、僕のベスト求婚ポイント探しをしている。


「ミルドレッド。愛しています。結婚してください。一生大切にします」


 それぞれの訪問地で美しい景観スポットを聞いて、もう数十回ほど求婚しているが、どうもしっくりこなくて、何度もやり直している。


 ミルは何度でも喜んでくれるけれど、最近は割と呆れながら笑っていることが多い。


 やっぱ、あれだよね、戸籍上は既に結婚しているから、真剣味が足りなくなるのかもしれないよね?


 ポロっとそう言ったら、ミルに泣かされた。


「じゃぁ、一回離婚する? 18才を過ぎてからもう一度求婚してくれれば、後見人がいらないから、何度でも離婚と結婚を繰り返せるわよ?」


 酷すぎると思わないか?


「わかった! では、離れて暮らしてみるのは? しばらくお互いを恋しがっていれば、ジョナサン的にグッとくる求婚ができるのではないかしら?」


 当然、僕は、もっと号泣した。

 僕を離さないで!!


 脱線が長くなったが、週に4日公務を入れて、水の日と木の日が休養日で、キモイケメンなアンディーくんの最愛の義姉君がお散歩コースの警護担当の金の日だけ学園へ通っている。


 アンディーくんと昼食をとって、姉君がアンディーくんを気に入ってくれるようなネタを仕入れてお散歩中に姉君の耳に入るように工作してる。


 お散歩中に「ミルの夜会デビューは、リーズ国にします」と言った時なんて、帰宅した後、大喜びでハグしてくれたらしい。



 学園は、週に1度でも、全然困らない。

 僕もミルも神聖国の第9位階神官だからね?


 学園の学力試験とか、魔術試験とか、児戯だよ。


 ストレスが溜まる原因って、児戯と茶番しかない場所に週に5回も通うことだったと思うよ?


 唯一、有意義なのは、アンディーくんに幸せになってもらうための情報収集の場ってところだけ。


 んで、休養日の水の日は、大体モードリン様のお墓参りしてる。


 何故、毎週、とおーーーーい親戚のお墓参りしているかっていうと、その場所、風が心地いいんだよね?


 見晴らしの良い私有地で人払いも完璧だし、そこでミルにこの世界の仕組みについて話を聞くのがお休みの日の習慣になってる。


 でも、最近、ミルは、ちょっとキレてる。


「ジョナサン、何度も言っているようにね、わたくし、アンの話を真面目に聞いていなかったの。そういう話に興味があるのはジョナサンなのよ。今も、昔も」


 どうも不真面目だったミルを責められている気持ちになるらしい。


 いや、責めてない、責めてない。


「ジョナサンの胸元についている召喚紋は、ジョナサンの個体情報の最後の行に新しく小さなライブラリを加えるのと同義なの。それでジョナサンは条件を満たせばわたくしを召喚できるでしょう?」

 

 最近は同じ話の堂々巡りになってきた。


「うん。それで僕に新しいライブラリを追加して、混沌宮に行けるようにするのと、混沌宮に行っても戻るときに記憶を失わないようにできるんだよね?」


「それ以外にも、『手紙の僕』の記憶をライブラリ化して記憶球からジョナサンに移し替えることも出来るのよ?」


「それも聞いたけど、『手紙の僕』の記憶を僕に移し替えると別人になりそうじゃない?」



 ミルも僕も自分たちが幼かったころのことを忘れつつある。

 6才ごろまでミルがどこに行ったか分からなったら、号泣して、大魔王に抱っこされてあやされてたとか、全然覚えてない。


 だから風化されるべき記憶が、個体情報の最後に記述されることで、昨日のことに鮮明に覚えている状態になった後の僕の精神状態をミルは心配しているみたい。


 記憶を戻すなら早い方がいいって主張している。


「それなら混沌宮へ行って資料を読むしかないわ。持ち出したらその瞬間に壊れちゃう資料だもの」


「ミルが教えてくれればいいじゃない? 世界の仕組みは、曖昧にしか覚えていないかもしれないけれど、聖女の世界が過去に一度滅亡していて、その時に聖女の種族『ヒト』を電子化したとか、そういう話でもいいんだよ? お伽噺みたいで楽しいよ?」


「それだって、エドワードが後見人になって、わたくしたちを聖女の世界に招待してくれるって言っているんだから、混沌宮へ行って、その準備資料に目を通せば大体の歴史がわかるのよ?」


 アンの世界の人々は超長寿で何万年も生きるらしい。

 というか、電子化されているから、自己消去しないと死なないらしい。


 自己消去は「死ぬ権利」と呼ばれていて、自分で「も~、ムリ、飽きた!!」となった人とか、何か思想や主義でこだわりのある人なんかが使うらしい。


 もう「~らしい」でしか語れない世界だ。


 興味深くて仕方がない。

 でも、自分で行くのは、な~。


「ミルは行きたいの? アンの世界」


「あ~ん。ジョナサンのわからずや~。わたくしはジョナサンがいればどこでもいいって、何度も言ってるのに~~」


 そうだった。

 ミルにどこかに行きたいかどうか聞くのは愚問なのだった。


 ミルは不貞腐れて、僕の膝を枕に横になってしまった。


 硬いって、ぶつくさ言っている。

 

 ミルは「ヤキモチ」は捨ててしまったけど、「好き」や「一緒にいたい」は悪役令嬢ライブラリから強い気持ちを引き継いでくれているから、きっと他のことは本当にどうでもいいんだろうと思う。


 あ~。

 混沌宮か……


 僕は何ライブラリの影響か知らないけれど、新しい場所に行くのが嫌なんだ。


 それで、訓練のために沢山公務を入れてるってのもある。


 どうしようかな~。

 悩むな~。

 ふぅ。


 それにしても、この丘の風は気持ちがいい。


 きっと「涼風ライブラリ」とかあるんだな……


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