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一生ヤキモチを焼いて貰えないことが確定しましたが、何か?

「ダジマット家の子供たちには『悪役令嬢ライブラリ』という特別な決まりごとがくっついているの。例えば、瞳は紫色、女の子は嫉妬心=最大、プライド=最大、そうでなかったら嫉妬心=強め、プライド=高め、みたいなね?」


「そうでなかったらって、女の子じゃなかったらと言う意味?」


「ややこしいわよね?」


「それって、魔術の術式みたいだね?」


「そう。できることは順次、分岐、反復の3つで、それらを組み合わせて火とは何かを定義して、強さを定義して、いっぱいいっぱいいろんなことを定義して、『ファイア』という名前の魔法をつくったら、『ファイア』と唱えれば炎がでるのと同じ仕組みのようよ」


「ええっ? 『魔族』が『ファイア』と同じ仕組みで出来ているの?」


「そうみたいよ? 混沌宮にいた頃にアンがジョナサンにそういうことを教えている時に、わたくしはあんまり真面目に聞いていなかったの。だから上手く説明できなくてごめんなさい」


「僕たちは両親から生まれるよ?」


「そういうのも魔族ライブラリで定義されているようよ。魔族の親Aと魔族の親Bの子供は何パーセントの確率でAからどれだけの魔力量を引き継ぎ、Bからどれだけの魔力を引き継ぐ、みたいな定義が盛り沢山で子供が生まれるのですって。確率の要素を入れないと、子供が全部同じになっちゃうとかなんとか」


「魔族と人族が結婚しても子供が生まれるよ?」


「それも魔族ライブラリで定義されている項目の内だと思うわ。ライブラリの中でいろいろなことが定義されているの。たしか、人族は『ヒト標準ライブラリ』だけで、魔族は『ヒト標準ライブラリ』+『魔族標準ライブラリ』で出来ているのではなかったかしら?」


「で、ミルにはその上に『悪役令嬢ライブラリ』がくっついているの?」


「まぁ、そんな感じ。ルールは後に書いた方が強いから、例えば魔族標準ライブラリではわたくしの父さまと母さまから引き継いだヤキモチが50だったとしても、後ろに書いた悪役令嬢ライブラリがヤキモチ最大だと、最大になっちゃうの」


「ミルは本当はヤキモチ最大だったってこと?」


「それがね、ヤキモチ最大、だけど、理性のステータスを上げると2%減少、思いやりのステータスを上げるとヤキモチ3%減少、ライバルが聖女の場合ヤキモチ10%アップに加え凶暴性30%アップとかなんとか、とにかく細則が多くて、ヤキモチの定義だけで何万行も決まりがあったの」


 こわっ。


「よっぽど執念深い人が作ったライブラリなんだね?」


「そうでしょ? それでこれはいらないと思って、ヤキモチの定義はゴミ箱に置いてきたの」


「ん? でも、悪役令嬢ライブラリの前に書いている魔族標準ライブラリとか、ヒト標準ライブラリでもヤキモチが定義されていて、それが有効になるんじゃないの?」


「いいえ。悪役令嬢のライブラリの中にヤキモチ=ヤキモチライブラリを参照、見つからなければゼロって書いているってアンが言ってた」



「え? じゃぁ、本当にヤキモチを焼く機能がないの?」


「ないわ。ずっと『これでジョナサンの負担が減るわ』って喜んでいたのだけれど、最近ジョナサンがヤキモチを焼いてくれたのが嬉しかったから、わたくしもちょっとぐらいはヤキモチがあったほうがジョナサンが嬉しいかもしれないって、不安になったの」


 え?

 鬱陶しくなかった?


 そう。

 アチコチヤキモチ焼いてるから、ウザイだろうなと心配してたんだ。


 ちょっとホッとした。


「ああ。そっか。うーん。あー。確かにヤキモチ焼いてくれると嬉しいのかもしれないけれど、そのヤキモチライブラリ、執念深すぎて怖いから、ミルがそんなのに苦労するぐらいなら、ヤキモチを諦めるよ」


「ほんと?」


「うん。ほんと。それに僕、ミルがヤキモチを焼くようなこと、しなくない? 聖女とか基本はスルーしてるし」


「そうね…… でも、あのヤキモチライブラリだと、入学式に転びそうな聖女を支えたっていうだけで、聖女の殺害が脳裏に浮かびそうよ?」


「げ。なるほど、それ、やっぱり、ない方がいいね。接触ゼロとかムリだもん。それに心はミル一筋なのに、些細な出来事でミルに疑われたらメチャメチャ嫌だ」


 ヤキモチ自体は嬉しいけど、冤罪は嫌だ。

 疑われるのも嫌だ。


 ヤキモチって、奥が深いな。


「はぁ~。よかった~。わたくしね、その仕組みを知った後、ずっと悩んでたの。あのヤキモチをゴミ箱に取りに行った方がいいんじゃないかって」


「取りに行くことも出来るの?」


「取りに行くことはできるわ。でも再起動の時に今までのヤキモチが一気に押し寄せてきて、壊れちゃうかも?」


「いや、それは、ダメ」


「でも、これまでの悪役令嬢はそのライブラリと戦ってきたのよ? 私だけ逃げてごめんなさいっていう気持ちもあったの」


「そうか。そうだよね。魔王は悪役令嬢だったから、今もそれを抱えている?」


「そのはずよ。だけど、手記を読むとそんな気配が全くないの。脚色して良さげに書いているだけかしらなんて疑ったりもして……」


「そっか、魔王を見てると、そんな感じしなくもないね?」


 魔王は大魔王と違ってなんだか近づき難いんだよな~。



「モードリン様は、結構、あのライブラリに忠実だったの。おばあちゃんになってもすっごくヤキモチ焼きで。若い頃はヤキモチ焼いてたことしか思い出せないって言って、手記を書けなかったのよ。そういう自分に正直なあの方が大好きになったの」


「猛烈に自己研鑽して軽減しようとしなかったってのも、親近感がわくね。モノグサで」



「ラファエラ様は、ずっと神聖国の神の家で女性だけで暮らしていて、自分の王子様に出会うのが遅かったの。出会ったときにはいろいろ手遅れで、聖女は牢に入れられた後だった。そして出会って割とすぐに手記を書いたから、手記がヤキモチ焼きっぽくなくても嘘っぽくない」


 ミルも手記を書かなきゃいけないのか……


「ミルはヤキモチの機能をゴミ箱に置いてきちゃったから、他の悪役令嬢から見たらすっごく嘘っぽくなっちゃうかもね?」


「でしょ?」


「それ、書かなくて、良くない? もしくは僕が書こうか? 僕はヤキモチ焼きだから、未来の悪役令嬢たちに共感してもらえるかもだよ?」



「ふふふ。そうかしら? まぁ、でも、今は、ホッとして気が抜けているから、唯々風に当たっていたいわ?」


「ああ、この丘の風は凄く爽やかで心地よいね。お昼寝もしていく?」


 風があまりに心地よかったから、お墓の前でお昼寝をしてしまった。

 罰当たりかな?


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