華麗に手のひらを返しましたが、何か?
ラファエラ様と玄妙様は晩餐を食べていくとのことだったので、僕たちも同席させてもらい、次にミルと話ができたのは、癒しのお散歩時間だった。
「あ~。も~。今日のダンスは散々だったよ。聖女エアリーは踊れないんだ。ミルのペアは上手だったね? 平民なんでしょ?」
ご婦人方との晩餐で少し冷静になった僕は、気になっていたイケメン氷の貴公子キャラについて、さりげなく話題に出すことができた。
一呼吸置くのは大事だな!
しかし、氷の貴公子、正体がとんでもなかった。
「あの方は平民に扮しているリーズの次期近衛隊長よ。ジョナサンは同じクラスでしょ? まだ話したことないの?」
え?
同じクラス?
あんな美形いたっけ?
そういえばアンディーくんが、小回りが利くように平民に紛れてる近衛がいるとは言っていた。
「僕はピーターバラの側近候補3人とキモイケメンのアンディーくんとしか話したことがないよ」
「まぁ、ジョナサンったら、ボッチ気質なのかしら?」
いや、神の家では友達いたよ?
「そんなことより、次期近衛隊長ってどういうこと?」
ミルがリーズ女王になったら、あの氷の貴公子が傍に侍るようになるってこと?
それ、すっごく嫌なんだけど。
「そのまんまよ。昨日もダジマットまでついてきてくれたじゃない? 気づいてなかった?」
「昨日? ダジマットまで?」
全然気にしてなかった。
リーズ国宝「モードリンの首飾り」を運んでいた男かな?
普段は目立たないように気配を消してるってことか?
「元々はダジマット宮殿で大魔王についていたのだけど、わたくしたちと同年齢だから学園の方に配置換えになったのよ。ほとんど顔が知られていないから平民でもいけるでしょって」
いやいや、高貴な雰囲気バリバリで、全然平民っぽくなかったよ?
「え? 彼はダジマットで暮らしていたの? もしかして教育もそこで?」
だからミルとのダンスが合わせやすいのか?
「そうみたいよ? 昨日リッチ兄様が『泥んこになったテオにゃんを洗ってやってくれ』って頼んでいたでしょ? かなり親しくしているんじゃないかしら?」
泥んこになったテオにゃんって、小汚くなったセオドア兄様のことだよね?
なんでリーズの次期近衛隊長がダジマット王子のテオ兄様を風呂に入れるんだ?
え?
もしかして?
その二人って……
「そ、そういえば、すっごくキレイに洗ってもらっていたね?」
晩餐までには放浪者から王子様に戻ってたし。
「ええ。毛並みもつやつやにしてもらっていたわ。どんな施術をしてもらっているのかしらね?」
ええっ?
ミル様、それもしかして、下ネタ?
いや、まさか、ね?
なんかいろいろドキドキしちゃうから、止めて?
「そういうことなら彼はダジマットにいたかったのでは? リーズの次期近衛隊長は、ダジマットで暮らすリーズ王太子殿下に付く方が自然だよね?」
「そうね? でもそれだってリーズ王太子がダジマット王配も兼ねていて、リーズ王として即位できていないからダジマットに配属させないとならなくなったという特殊状況なのよ?」
「それなら大魔王の兼任を解いてミルをリーズ王太女にした方がスッキリする?」
「わたくしの学園が終わればリーズで公務もできるようになるわ。普通はリーズ王太子から外れてダジマットに婿入りするものですからね?」
「え? そうなったら次期近衛隊長は学園が終わった後もダジマットに戻れなくなっちゃうよ?」
「テオにゃんの事を心配しているのなら、首輪なんてついていないんだから、好きなところで暮らせばいいのよ?」
確かにテオ兄様は養子だから、ダジマットの継承権を持っていない。
ダジマット王子ではあるから、少しは公務が配分されているハズだけど、完全に引っ越しちゃえば外してもらえるしね?
「なるほど、なるほど。うん、うん。そうだね。好きなところで暮らしていいんだもんね?」
テオ兄様があのイケメンをしっかり捕まえておいてくれたら、僕としても安心だ。
ミル様が突然立ち止まって、僕の瞳をジッと覗き込んできた。
「ねぇ。ジョナサン。テオにゃんの心配より、自分のことはいいの? わたくし本当にリーズの王位が約束されちゃうかもしれないわよ?」
いいよ?
気分は既にリーズ王配だよ?
アンディーくんがミルの事を我らが女王陛下って呼ぶの、耳慣れてきちゃったし。
リーズの近衛の警護下では口には出せないけど、ピーターバラの王位継承については、僕が噛んでも新興貴族に国家予算をたかられるだけで良いことない。
そもそも国家予算は貴族のお小遣いじゃないんだよ?
それで国家事業を進めるためにあるんだよ?
バラマキがメインになりつつある第2王兄派の貴族に寄って来られても困る。
魔王の闇がついてる第1王兄殿下の一の姫あたりに王位を継いでもらうのが丸いんじゃないかな?
「かの国で暮らしたことのない僕たちをリーズの臣や民が暖かく迎えてくれるのであればね。きっと居心地がいいよ」
立ち止まったミルの手を取り直して、残りの散歩タイムを満喫した。
いや、なんていうかさ、リーズ周りはさ、今回の氷の貴公子事件みたいに、何かあってもすぐにスッキリ解決するじゃない?
そういうところも、凄くいいと思うんだよ。




