キモイケメンとのランチタイムに癒されちゃいましたが、何か?
「素晴らしいでしょう? この我らが王太子殿下と我らが未来の女王陛下のツーショット」
なんだろう。
今日は、キモイケメンなアンディーくんとの噴水前ランチにちょっと癒されちゃってるよ、僕。
大魔王の事は「王太子殿下」でミルの事は「未来の女王陛下」と呼んでいるってことは、大魔王をすっ飛ばしてミルが王位に就くことが望まれているってことかな?
「おかしいだろ? パートナーの僕とのツーショットじゃないんだよ?」
今朝のリーズ国の保守系新聞の一面は、晩餐会にエスコートしてきた大魔王とミルのツーショットだった。
なんだこの写真の大きさ。
ゴシップ誌かよ?
【ミルドレッド姫、クレメント王太子殿下に伴われて初めての晩餐会】
一面のタイトルもゴシップ誌みたいだぞ。
大丈夫か?
リーズの保守系新聞。
ミルは抜群にかわいいし、大魔王も麗しい立ち姿のいい写真だが……
「そりゃぁ、リーズの新聞だよ? ロスウェル第3公子がクレメント王太子殿下よりも大きく取り上げられようとするのは不敬というものだよ。ピーターバラ版の一面用は君との写真を提供しておいたよ」
は?
なにこれ?
アンディーくんが見せてくれたピーターバラのゴシップ紙には、ミルの衣装替えの前に僕がミルをお姫様抱っこした時の写真がドーンと……
無表情の僕と、しょぼいドレスで困り顔のミル。
いや、しょぼいドレスもミルはかわいいが。
てか、どんな時も微笑みを絶やさないミルが困り顔をしている時点で芝居なんだが、困り顔もかわいいな、おい。
【深窓の姫、女官に嵌められる】っていうタイトルもヒドイ。
こちらは本物のゴシップ紙だから仕方ないか?
あ~。
母上が指示した通り、ミルを嵌めた女官の顔写真も吹き出しで晒されている。
「提供しておいたよって何? リーズの近衛はそんなとこまで深入りしてるの?」
「いや? 写真頂戴って頼まれたからあげただけ。我らが女王陛下の広報活動に関してリーズの近衛の右に出るものはいないからね。どう? 姉上の写真技術にひれ伏したくなるよね?」
ああ。ミル担の姉君が撮影したのか。
すごいな。
確かなミル愛が伝わってくるいい写真だ。
それにこれ、ミルと大魔王からカメラ目線貰ってるよね?
ミルも分かってて乗ったってこと?
「君の姉君は素晴らしいね。僕とのいい感じの写真があったら譲ってもらえないかな?」
僕とのツーショット写真、欲しい。
絶対持ってるはずだ。
「聞いてみるよ。それよりさ、来月、リーズ宮殿で夜会があるんだけどさ。我らが女王陛下の夜会デビューをそこにしてくれたら、一面は我らが女王陛下とロスウェル第3公子のツーショットにできるよ?」
「乗った」
「返事、はやっ! ジョンのこういうところに仲間意識を禁じ得ないよ」
「アンディーくんの姉君至上主義も相当だからね」
僕も君に仲間意識を感じているよ。
「そういえばさ。金の日のお散歩中に、僕と姉上について何か言わなかった? あの日から姉上がよそよそしいんだよね~。ちょっと怒ってる感じもするし」
「金の日のお散歩? うーん。覚えてない。毎日毎日いろんなことがあるからな~」
「あのね。我らが女王陛下のお散歩中の人払いにはシフトがあるの。木の日は僕の担当だけど、金の日は姉上だからね。変なこと言わないでよ?」
「え? フラグ?」
「ち・が・う・よ! おふざけは絶対ダメだからね? 僕の婿入りが絶望的になっちゃうんだから、頼むよ?」
「絶望的に? 決定してるんじゃないの?」
「姉上は元々は後継ぎとして全然やる気がなくてダメダメだったから、僕が養子に入って後継者教育を受けたの。そんなことで姉上と結婚できるならって僕にとっては最高のシナリオだったんだけど……」
珍しくアンディーくんが言いよどんでいる?
何?
ハッキリ言って?
「だけど、なに?」
「ジョンが栗が好きだとわかって、我らが女王陛下がリーズに栗拾いに来た年に、姉上が我らが女王陛下にハマっちゃって、熱血近衛になっちゃったの」
栗が気に入ったのが11才だったから、その翌年?
12才の時?
そんなころから結婚願望があったの?
アンディーくんもなかなかに早熟だね?
「つまり、何? 僕の栗好きが原因で、アンディーくんいらない子になっちゃったの?」
ふぅん。
僕のせいだったから言い出しにくいのは分かったけど、栗好きはちょっと想定外すぎて不可避だったよ。
「そうだよ。我らが女王陛下はジョンを餌に釣れば入れ食いだから、『栗拾いジョナサン公子杯』とか、『聖女が教えるジョナサン公子の好物クッキング』とか、姉上が企画を立てて、我らが女王陛下にリーズにお運びいただく流れができちゃって、姉上は今や近衛のエースだ」
いろいろ突っ込みどころが多すぎるが、近衛のエースになった理由がなんとも……
「え? ちょっと待って? 何それ? アンディーくん、家に居づらいの?」
「居づらくないよ。姉上が後継者としての地位を固めちゃって、僕と結婚する必要がなくなっちゃっただけで」
あ~。
なるほど。
「あ~。それは、ほんとごめん。好きな人との縁が確定じゃなくなるのが不安な気持ちはよくわかる。ほんとごめん」
「姉上は元々後継者教育を受けるぐらいなら僕と結婚した方がマシって感覚だったんだよ。今は……」
「わかった、よくわかった! 金の日のお散歩は最大限の注意を払うことにする!!」
「よろしくね?」




