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へべれけになって醜態を晒しましたが、何か?

 大魔王の魔術で茶室へ転移したら、クッソ小汚い男と魔王が優雅にお茶を飲んでいた。


 違和感しかない。


 も、もしかして、この小汚い男が大魔王をして「放浪者」と言わしめた次男、暗黒神セオドア?


 黒髪黒目のセクシーイケメンを想像していた僕はその場に固まった。


 暗黒神の容姿に関する感想を聞いたときにミルが言葉を濁したのは、この小汚さが原因だったんだな……


「おぉ! ジョンかな? 大きくなったね?」


 小汚い男は立ち上がって僕に近づき、両頬にキスをするダジマットの家族挨拶の後、僕をハグした。


 くちゃい。


 くちゃいよ、暗黒神。


「て、テオ兄さん?」


「あぁ、そうか! 見た目が変わって分からなかった?」


 うぉ~~。

 大魔王、これ、かわいいの?

 懐が大きすぎない?


 魔王は眉をひそめている。


「最近、トレジャーハンターたちとリーズ周辺の古代アーティファクトを探査しているんだ。それでちょっと精悍になったって言われるよ」


 魔王は眉をひそめている。


「テオ兄さん、それ、精悍になったってレベルじゃないよ?」


 魔王は眉をひそめている。


「ガブリエル、この子たちは久しぶりに会って積る話もあるだろうし、私たちは晩餐までに少し政務を片付けようか?」


 大魔王は、魔王が暗黒神に口撃を仕掛ける前に、連れ去った。


 って、どうするの、この状況?

 積る話なんて、ないよ?



 僕が戸惑いながらも暗黒神の宝探しの話に耳を傾けた。


 神聖国の混沌や深淵は、滅多に生まれないし、超がつく高位魔術師だから、彼らの残した物品は「聖遺物」と呼ばれ、人気が高いらしい。

 テオ兄さんはトレジャーハンターの間で「黒専」と呼ばれるこれらの黒ローブたちが残した聖遺物を探して回っているグループと行動を共にしているらしい。


 それで冒険者みたいな恰好をしてるのか?

 そして、よく見ないと分からないが、よく見たらカッコイイ服を着ている。


 きっとこれも大魔王のデザインだろう。




 しばらくすると、茶目茶髪に変装した妖精ドレスのミルと猫背でボサついた茶髪をひっつめぎみに一つに括ったビン底眼鏡のダッサイ男が転移してきた。


 僕はそれが誰か分かった。

 分かったんだけど、ショックを受けすぎて、口元に手を当てて絶句してしまった。



「やあ。テオ、戻っていたんだね? ジョンもよく来たね。久しぶり」


 ダッサイ男は、僕と暗黒神に近づいて、両頬にキスをするダジマットの家族挨拶をしてきたから、これは、もう、疑いようがない。


「リ、リッチ兄さん、だよね?」


 ビン底眼鏡はご満悦だ。


「ふふふ。ジョンも僕の完璧な変装に驚いた? まだダジマット王太子リチャードだと見破られたことはないんだよ?」


「う、うん。その格好でダジマット王太子リチャードだと言い張ったら、投獄されそうだよ」


 色のはげたブルーのジーンズに、濃いブルーのチェックの長袖シャツをイン。

 太めの白いベルトが違和感しかないアクセントになっている。


 このブルーのジーンズの丈は謎に短く、キャメル色のスニーカーとの間に十分に空いた隙間から白いソックスがしっかりと存在を主張している。


 いやいやいやいや。


 だっさ!


 ど、どうしちゃったの?


「リッチ兄様は、ダジマットでオタク文化を盛り立てるために民に紛れて様々な活動に従事されているのよ。今日は新しいイベント会場のこけら落としに行ったって聞いて、迎えに行ったの。活気があったわ」


「ミリーは茶目茶髪の変装姿で迎えに来てくれたんだけど、リーズのフェアリードレスで来ちゃったから、周りが騒然としちゃったね。今頃、新星地下アイドルが爆誕したって話題になってるかもね?」


「仕方がないじゃない? 今日はリーズ王女ミルドレッドとしてダジマット女王に拝謁賜ったのだから。妖精姫のコスプレなのではなく、正しく妖精姫なのよ?」



「ははっ。リッチ兄様がオタク文化にハマったのって、君たちが神聖国に引っ越しちゃった後にミリーロスを埋めるためだからね。ダジマットのアイドルには妖精ドレスが多いんだよ。まぁ、お茶淹れるから座りなよ」


 小汚い放浪者がこの上なく美しい所作でお茶を淹れている。


 なるほど?


 子供の頃、小魔王はミルに「かわいい妹」を期待して、ミルはそれにオートモードで全部応えていた。

 それが、こんな路線に発展するとは……



「それにしても、兄さんが市井に紛れるためにそんな格好をするとはね? 父さんが泣いてるんじゃないの?」


「いや、これは父さんのデザインだよ。ダサさも突き詰めると一周まわってかっこよく見えるんじゃないかって仮説を立てて、ダサさを極めようとしているみたいだよ?」


 うーん。

 まだ、一周まわり切れていないのかな?

 フツーにダサいよ?



 かくして、大魔王のかわいい子供たち……

 清潔感はあるがすっごく「ダサい」長男と、すっごくカッコイイ冒険者服を着ている「小汚い」次男、新星地下アイドルにしか見えない長女、神聖国の正装で異国の王子様な三男は、しばしの間、違和感しかないコスプレ茶会を楽しんだ。


 晩餐の少し前に解散したと思ったら、晩餐には2人ともちゃんとした王子様に戻ってたのが一番驚いたかもしんない。


 そして……







「ミルぅ~。しゅき~。大しゅき~~。けっこんして~~。しゅき、しゅき、しゅきぃ~~~」


「もうっ! みんな飲ませすぎよ?」


「いや、ごめん。飲めないって知らなくて」


「うん、ごめん。ウザがらみするタイプだと知らなくて」


「すまん。ここまでおバカだとは……」


「今日は泊まっていったらどうかしら?」


「ありがとう。でも、明日は学園がありますから、このまま寝室へ転移いたしますわ。それではごきげんよう」

 


 晩餐で結婚の「祝いの盃」を受けすぎて、へべれけになった僕の醜態が、最も皆に驚かれましたが、何か?


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