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社交界デビューは散々でしたが、何か?

 ミルと僕の初めての晩餐会は、ヤバかった。


 おそらくこの晩餐会だけで、30家ぐらい潰れるんじゃないかと思う規模感でヤバかった。


 今回の晩餐会は、招待客が100人程度で、ながーーーいテーブルが一本で済むレベルだから、まぁ中規模ってところだ。


 開幕、ミルがゴネて、席次が大幅に変わった。

 ミルの仕込みだ。



「まぁっ、わたくしがいくら未熟でも、ユージーン上皇聖下やローナ上皇后聖下より上座に着けるほど愚かではありませんわ!」


 落ち着いた声色だが、意図的に響かせたよね?


 グランパは「ユージーン枢機卿」として、官職としては最上位の席次が準備されていた。


 先日僕たちが「ユージーン枢機卿」を訪問したのが大々的に新聞で取り上げられていたから、そこに引っ張られたんだろう。

 各国王族としては末席が準備されていた。


 各国王族と官職だったら王族が上座になるからだ。

 官職としては最上位だったが……


 ところが「幽玄上皇聖下」の格好で来たことで番狂わせがあった。


 「幽玄上皇聖下」は在位中ではないが、「旧四天王家」で「現王域6王国」の在位経験者だ。各国王族の末席においてよい人ではない。


 次に、ダジマットティアラを身に着けた魔王の娘ミルドレッド姫は、魔王の名代なので王族の最上位に席が準備されたが、「お召替え」の後のミルドレッド姫はリーズティアラにリーズドレス姿のリーズ王女で、「旧四天王家」ではあるが「現王域6王国」ではない。


 しかも、王太子の娘で、父親にすら在位期間のないペーペーの()()()()だ。


 神聖国の在位経験者よりも上席に座れるわけがない。

 というか、在位経験者が別の職位についたからと言って、そっちで招待する意味が分からないが……


 こういうところに新興貴族の経験不足がにじみ出ている。


 かくして、最上位に坐するべき魔王の名代は、お召替えの後、各国王族の末席を陣取った。

 草も生えない。



 そして、ミルドレッドは、名札の「間違い」を次々に指摘。


 ピーターバラ付き枢機卿を神聖国上皇聖下に、枢機卿夫人を神聖国上皇后聖下に、ダジマット王女をリーズ王女に書き直させたことで、ピーターバラ貴族たちに動揺が走った。


 今回の一件で、ダジマット王はピーターバラ王の招待を「欠席」したことになったからだ。

 しかも、ダジマット王配が「いや、いい」と断ったのをその場の皆が目撃した。


 あれだけ悪質な嫌がらせをした後だから、文句は言えない。


 むしろ、魔王の名代への嫌がらせをリーズのひよっこへの揶揄いに変えてくれたんだから、大変寛容な処置なのだ。


 ついでに僕の身分もピーターバラ第3王子からロスウェル公爵家ジョナサン公子に書き換えてもらっていた。結構ちゃっかりしている。


 これだって、ピーターバラの第3王子の同伴者がリーズ王女ではピーターバラ側が不都合だろうとのきめ細かい配慮だから、文句は言えまい。


 失敗の規模感からして、夜会を采配した家とどんでん返しの原因となったドレスをミルに着せた家は全て立ち直れないだろうね。



 第1王兄殿下の采配で新しい座席についた僕たちは、各国王族の悪乗りを目撃することとなった。


 但し、これも、僕の両親と各王族の間で示し合わせた出来試合だったように思う。


 ぶっちゃけ超豪華メンバーだ。

 表向きの理由は、娘の入学式に参列した後、ピーターバラー観光してたから、たまたまいた王族を集めたってことになっている。

 ミルの淑女科の同級生だけで王女が5人。

 普通科の僕のクラスにも王子の王族がいるからね、その親たちは大体在位中の王なんだ。


 セキュリティーが、大変そうだ。



 そこで、各国の姫達が最初の学力テストで酷い点数を取ってきたとの笑い話が出た。

 もちろん笑えないやつだ。


 歴史の正解が斬新すぎて、衝撃を受けたとぶち込んできたのは現三大名門国のブライト国王だ。


「聖女は聖女の予言をもたらす魔族にとって有益な存在だという解釈は、初めて聞きました」


 ブライト国に出現した先々代の聖女は、貴族の子息達を洗脳し、王宮を荒らして現在も尚、聖女牢にいる。

 この話を聞いて、さぞ不快だったに違いない。


 この設問を作った歴史の教師はお約束のごとく第2王兄派の新興貴族で、()()()()()()()()()()()()()と信じている流行りモノ好きだ。


 ここは一応ピーターバラ王子でもある僕がフォローを入れつつ、ゴミ掃除をしなければならないだろうなと、しぶしぶ口を開いた。


「その問題は、私も間違いました。むしろ私の歴史の点数は落第点で、補修を受けないとならないでしょう」


「ふふふ。淑女科は全員落第点で、皆で仲良く補修を受けることになりそうですから、お揃いですね?」


 ミルもフォローを入れてくれたから、歴史の教師の寄親の家は真っ青になっていることだろう。



「そういえば、娘が外国語の授業も斬新だと喜んでおりました」


 次にぶっこんで来たのは、インダストリア公爵だ。インダストリアは一国と見なされた公国だから、公爵が実質的な王だ。


 旧魔王軍の四天王家のマッドサイエンティスト三兄ポジションだ。


「ああ。観光用に庶民の言葉や片言や身振り手振りでコミュニケーションをとる方法を教えるらしいですね? 確かに王立学園に入学するような子女は各国の標準語を習得済みですから、そういう内容の方がためになるのかもしれませんね」


 ものすごーく具体的な説明を添えたのはセントリア皇帝だ。


 全魔法国を合わせたのと同じくらいの領土を誇る人族の国の王で、腹芸は好まないと聞いているが、なかなか凄いじゃないか……


 100年前ぐらいにダジマットの姫と婚姻を結んで皇帝自ら混血化してるから、今では魔法国連盟の加盟国だ。

 セントリアの加盟で、人族と魔族の敵対構造が消滅した。

 そういえば、この時に「魔王国」連盟を「世界」連盟に変えようかという話が出たらしい。あれから結構経つけど、まだみたいだね?



「それについては、娘も知らない母国語があって新鮮だと言っておりましたよ」


「ウチでは教育係が『姫様、そんな言葉どこで覚えてきたんですか?』と言いながら失神したらしいですわ。市井の実用に根付いた言葉を教わるそうですの」


 王たちが次々に乗って来ちゃったんで、外国語の教師は全て入れ替えられるだろうな。


 この後、ナース王とノリッジ王が血統学の話を出して、ミルの予想した通り、第2王兄派の教師は全滅級の激震を与えて帰って行った。


 でもさ、ノリッジ王族は「血統書付き」と呼ばれるほどに子だくさんで、自家に王族の血を入れたいならおすすめだとか、普通本人の前で言うか?

 

 ナース王のは差別発言だったからここでは書かないけど、完全にアウトだった。


 父上と母上は、ボッコボコにしてくれって頼んだんだろうな。

 ひっどいもんだった。


 これは頼まれたわけではなかったんだろうけど、空気を読んだグランパが「ミリーは? 斬新な学園を楽しめている?」なんて聞くもんだから、ミルもしっかり仕事してた。


 第2王兄派はバッチリ神聖国、リーズ、ダジマットも敵に回した上に理数系全般の教師が潰された後、次の話題に移った。


 教師たちの寄り親の家をどこまで連座に出来るかは父上と母上の腕次第ってとこかな?



 そして最後の話題の仕掛け人はなんとグランマだった。


「そういえば、ジョンは今日は幽玄が貴方に贈った礼服を着て見せてくれるんじゃなかったの?」


 え?

 そんな約束してないけど?


「もうしわけありません。皇王聖下から賜った神聖国の礼服は、ダメ出しが入りまして……」


「まぁ? 貴方も女官に担がれたの? あれはあの子が初めての外交公務でダジマット両陛下の御婚礼に参列するために誂えた大変おめでたいものなのよ?」


 え?

 おやじ、そんな凄いものを僕にくれたの?


 なるほど……

 僕にも一石を投じなさいとのことですね?


「いえ。女官ではなく、ピーターバラの王太后陛下のご不興を買ってしまいました。私たちの結婚式に着ようと思っていたものですので、私としてもこれ以上のケチがつくのは避けたく、ピーターバラ宮殿では着用を控えさせてもらっています」


 僕の返事はどよめきを呼んだ。


 ピーターバラ宮殿では着ないと宣言した礼服を自分の結婚式では着るのだから、ピーターバラでは結婚式をしないという意思表示なのだ。


 ごめん、ミル。

 たった今、勝手に決めた。

 僕は君を大事にしてくれるところで結婚式を挙げたいんだ。


 とりあえずだったとしても、()()()()()迎えに来てと言ったのはミルだし、大丈夫、かな?


 ニコニコしてるから、大丈夫、だよね?



 この発言は「何故、ピーターバラ王子が神聖国の礼服を着て結婚式を挙げるんだ?」という謎も残る。


 これは僕なりの各国王家への情報の手土産でもある。


 ミルが姫達に自分がリーズ王女だと宣言したのと、大魔王が婿と呼んだのも考え合わせれば、僕たちが向かっている方角が見えると思う。


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