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たかられそうになっていますが、何か?

 魔王の闇は、ピーターバラを壊すにあたって、この国が抱える唯一の問題「ガラスの天井」を利用した。


 少数精鋭で国が回っていたことで、新参者が国政に携わる道が存在しないことに関する一部の民の不満だ。


 ピーターバラの貴族は、それぞれ一階層下の貴族を叙爵する権限を持つが、同時に寄り子に関する全責任も負うことになる。

 それでどこの家も軽々しく不必要な叙爵はしなかった。

 ゆえに貴族の家数が他国に比べ少なかった。


 その上、ピーターバラは、貴族だけじゃなく官職も少なかった。


 侯爵家が6家、それぞれの家が3家ずつぐらい伯爵家を従えて、他国で言うところの官公庁の機能を果たし、その下に子爵とか男爵とか必要に応じて配して、他国でいうところの公務員的な業務を執行していた。

 特別事業は、プロジェクトごとに王家の名義で公募して民間に発注するだけで国が回っていた。



 才能ある平民が政府で活躍したいと思って、数少ない公募による官職を勝ち取ったとして、一定以上の地位に上がることがない。


 見えない何かに阻まれているかのように。

 これが「ガラスの天井」問題だ。


 当初、魔王の闇はこれを問題視していなかった。

 元々は諜報部だ。

 見えないところで物事を動かすのはピーターバラのスタイルだった。


 100年ぐらい前から混血統派という謎集団が現れて、国家運営に関わらせろと「ガラスの天井」問題を盛んにつつき始めた。


 魔王の闇は、別に純血統とか混血統とか気にしていない。

 自分たちの配下にどれだけ混血系がいるのか知らなかったレベルに。


 魔族の純血種でも魔王軍で最弱だったからね?

 純血統としての自分たちに関する自己評価は低かった。


 国のために働きたいなら、侯爵家の直属の家臣団でも、伯爵家の家臣団でも、どこでも好きなところで働けばいいじゃん?


 それじゃダメなの?


 って疑問に思ってた。


 国は活気があるし、民の豊かさは魔法国でトップレベルだ。


 魔王の闇は、この国が抱えると思しき唯一の問題「ガラスの天井」を国家()()()計画に利用した。



 具体的には、王家の名で7家目の「侯爵家」を叙爵してみた。

 王太后の実家だ。


 ド素人に任せれば、問題が起きそうじゃない? って感覚だ。


 王太后の実家は、先王の在位中だけで貴族を300家も増やした。

 これは残りの6侯爵の傘下貴族を全て足した数よりも多い。


 そして予想通り、すぐに腐敗が始まった。


 新しく貴族になりたいものがこぞって王太后の実家にすり寄った。

 6侯爵の傘下の下位貴族も昇爵を目当てに王太后の実家にすり寄る家が出た。


 魔王の闇は、ずっと国が壊れるのを眺めてた。


 魔王の闇は今でも出来る子なんだと思う。


 国を壊すときにもちゃんと民の暮らしに影響が出ないように配慮して、伯爵以下の実務部隊が当時は正妃派と呼ばれた王太后の実家の派閥に移ることを快く許していた。


 ただし、魔王の闇は、この千年で致命的な欠点が出来ていた。


 長年の仲良しクラブでの国家運用で、敵というのがどんなものか忘れてしまっていた。


 こちらは眺めているだけでも、相手が攻撃してくることを忘れてしまっていた。



 第1王子は、毒で謀られ、身体がちゃんと動くようになるまでに10年以上の歳月を要した。

 第1王女は、隣国リーズ国の公爵家で保護されたが、第3子が誘拐された。

 この時誘拐された第3子が僕ね。


 国王は、突然急激にやせ細り、ついには儚くなった。

  

 魔王の姫を派遣してもらうための待望の聖女が生まれたが、それどころじゃなくなっていた。



 第一王女は、誘拐された後に魔王の宮殿で育てられていた第3子と魔王の姫の婚約を取り付けたことで、6侯爵家から王太后派に移っていた伯爵家以下の実務部隊を取り込んで、女王に即位した。


 これが、貴族派だ。

 魔王の闇は、貴族派の貴族たちが自身の欲のために腐敗に身を委ね、国を食い物にしようとした貴族たちだということを忘れていない。


 魔王の闇は、王太后派に鞍替えする時には快く見送ったが、元の派閥に戻りたがった貴族たちを傘下に受け入れなかった。

 新しい実務部隊をようやく育て終わったところで、君たちまで養う余裕はないと言われれば、諦めるしかなかった。



 先王と共にあった魔王の闇は、身体が動かない第1王兄について第1王兄派を組織した。

 貴族社会が腐敗していく中でも6侯爵に対する忠義を忘れなかった貴族たちだ。

 そして少しずつ政務の実務部隊を担える新たな伯爵家以下の家を育てた。


 

 新興貴族たちは、力を失った王太后派の次の依り代として王太后の唯一の実子である第2王兄についた。

 第1王兄派は受け入れを拒否したし、貴族派は新興貴族を養う余裕がなかったため、他に行くところがなかった。

 

 第2王兄は一応王族で担当政務に相応の国家予算を配布されているが、300家もの新興貴族達を抱えることはできない。

 元々、王太后派は、王の担当政務に相応する国家予算で膨れ上がったのではない。

 各家からの賄賂が集まって上手く運用された結果、300家にまで膨れ上がることができただけだ。


 王太后の父親が寿命で亡くなってからは賄賂の循環が悪くなり、第2王兄の国家予算を300家で食い合う熾烈な戦いが始まった。

 流石の新興貴族も傘下の貴族を増やすことをやめた。


 そして、新興貴族は、新たな予算を欲した。


 増税だ。


 ピーターバラでは、5%の消費税のみで国の運営が賄われている。

 すべてが国庫に入り、担当政務の内容に応じて王族と6侯爵に配布される。


 所得税や富裕税が存在しないことが国民が豊かになる源泉なので、議決権を持つ王族と6侯爵家の中で「新税の創設」に賛成票を投じるのは第2王兄と王太后のみで、可決に至らない。


 消費税の増税も同じだ。


 王家の闇はゴシップ紙を立ち上げて、新興貴族たちが増税したがっている「欲豚」だと盛んに喧伝したから民の支持も得られない。


 欲豚たちの醜い争いだとか、乱れた私生活に関する記事は、飛ぶように売れるし、識字率が上がったらしい。

 すごいね?

 魔王の闇は元諜報部だからこういうのは得意なんだって。



 そこで、新興貴族たちは増税は諦めて、政務を担当する新しい王族を求め始めた。


 それが現在欠員が出ている「王太子」と「王太子妃」だ。


 王太子候補の僕たち3人の内、長兄はリーズ国に移ったし、母の後継者のように傍で育った次兄が王太子になっても貴族派の予算が増えるだけでしょ?


 だから、王太后派の教育係から教えを受けた僕が、ターゲットにロックオンされてるらしい。


 結婚して家を持ったことがバレれば未成年でも政務を担当する責任が出てくるから、王になる気がないなら、まだ結婚していないと誤解されているままの方が都合がいいってさ。



 そして、王太子妃は、名門中の名門で、簡単にお目通りが叶わないダジマットのミルドレッド姫よりも限りなく庶民に近いことをアピールしてきた聖女の方が好まれてる。


 今のところ、ミルの悪い噂を流して僕の心変わりを誘うレベルで済んでいるけれど、既に結婚していることが分かったら、亡き者にするしかないと考える輩が出ないとも限らないからね。


 いや、ほんと、こんな国さっさと出よう!


 と、言いたいところだけど、ちゃんとミルと話し合う時間を設けてミルの意見を聞きたいと思っているよ。


 というか、その前に、時間ができたら、ちゃんと求婚したいな。


 愛してます。

 結婚してください。


 早くそう言いたい。

 

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