頑張ってお掃除することにしましたが、何か?
「ジョン、おつかれぇ~。ご協力、ありがとね~。君が我らが女王陛下の結界を解いてくれたから、今回は第2王子派を5家ほど潰せそうだよ」
さて、今日も楽しくキモイケメン、アンディーくんとのランチタイムである。
「ん? ミルの結界?」
「そ。結界と捕縛が有名なダジマットの寝室だよ。我らが女王陛下の許しがないとカギを持ってたぐらいで入れるわけないじゃない?」
「え? アンディーくん、僕を嵌めたの?」
「ちゃんと君を通して我らが女王陛下に報告したじゃない? 直接接触してこないところが賢いってお褒め頂いたし」
「も、もしかして、昨日の庭園散歩の時の話?」
「そうだよ。我らが女王陛下も君がリーズでいいのか確認してたでしょ。まぁ、君に何かあったらこの世界は無くなると思えって、釘を指されたけど」
君に何かあったらこの世界は無くなると思えってのは、「この世界にいたくない」のくだりだよね?
あれって、そんな怖い話だったの?
結界を解く代わりに死ぬ気で護衛せよって、リーズの近衛隊に牽制を入れてたのね?
僕が心を丸ごと持って行かれたように立ち尽くしていた時、水面下でそんな高度なやり取りが進んでいたとは……
「君、あの場にいたの?」
「我らが女王陛下のお散歩中の人払いはリーズの近衛の担当だからね」
リーズの近衛がピーターバラの王宮警護?
「ん? リーズの近衛って、ピーターバラの魔王の闇と協力関係にあるの?」
「いや、ありえないでしょ。ヘタレなロスウェル第3公子のためにピーターバラ女王が時間帯と場所を限定して魔王の闇が入らない状態を作ってくれたんだよ。つまりセキュリティーに穴をあけてくれたんだよ」
「で、なんで、代わりにリーズが入ってるの?」
「それは、君が、ピーターバラの側近候補を避けて、リーズの側近候補を侍らせてるから、我らが女王陛下がリーズが入ることを許してるんだよ」
「あ~。アンディーくんのコレは、侍ってるとは言わないと思うけど。君の方が俄然いいのは、認めざるを得ないよね。姉君とは同担なのでね」
「ジョンはブレなくて、すがすがしいね。ところで、明日の晩餐会と明後日の夜会は何を着ていくの?」
「ん? 決めてない。なんで?」
「君達がどこの国の装いをするかによって、次に削る派閥が違うから。前もって準備できるといいじゃん?」
「なるほどね? んじゃ、お散歩中にミルに確認するから、聞いててよ」
「へぇ~。ジョンってば、すっかり協力的だね。聞かせてくれるんだ」
「うん。リーズは僕とミルの間に入ろうとしないからね」
「それに、秘密の話は寝室でできるようになったから、余裕がでたんだよね?」
「羨ましいか?」
「羨ましい。姉上はこの任務が終わるまで寝室に入れてくれそうにないから」
「ありなの?」
「血は繋がってないからね」
「へぇ。頑張って」
「ん。ありがと」
**
「とまぁ、そんな感じで、アンディーくんと姉君のためにも、ぱぱっとリーズに引っ越さない?」
待ってました!
一日の疲れを癒すミル様とのお散歩の時間である。
「アンディーくんと姉君を応援したい気持ちは満々ですのよ。でもわたくしたちここについてまだ1週間も経っていませんのに、早すぎではないかしら?」
「早すぎない! ここはダメだ。ミルと僕の間に割って入ろうとする輩が多くて、嫌いだ」
「わたくしは貴方が拉致されたことで貴方と結婚できたので、こんなことを言う資格はないのですけれど、ピーターバラはリーズの赤ちゃんを攫ったりするのよ? 次はわたくしたちの子供かもしれないわ。リーズが気に入ったなら、リーズに落ちてきそうな埃やゴミをもう少しお掃除してからリーズへ行くのも悪くないと思うわよ?」
ワタクシタチノコドモ
なんてことだ。
どうしてミル様は毎日、毎日、最高キュンレベルを更新できるのだ?
確かにそうですね!
姫、次はどこを潰しましょう?
「そうだね。アンディーくんと姉君にはもう少し待ってもらって、ちょっとお掃除しようか?」
ごめんな。アンディーくん。
「でも、わたくしたち、ずっと神聖国に引きこもっていたから、ゴミの分別の仕方が分からないでしょ?」
「そうだね。たった5日間の滞在でも、第2王兄派が断トツでうざいから、そこばっかり捨てたくなるよね?」
「ええ。それに明日の晩餐会で、第2王兄派はもっと潰れてしまうでしょうから、なんだか集中砲火になってしまうのよね」
「へぇ。第2王兄派は他にも恨みを買ってるの?」
「恨みって程じゃないわ。でも、そうね、全く礼儀がなっていないから、締めたくなっている王女達がいるわね」
「あぁ、淑女科の? 取り巻きごっこのメンバーに失礼なことをいう教師がいるってこと?」
「まぁ、最小2家、最大で学園の第2王子派の教師を全員潰せるぐらいの規模感かしら」
「振れ幅が広いね。ピーターバラの両陛下も頭が痛いだろうね」
「ええ。だからね。今回の晩餐会と夜会については、よくよく両陛下のご意向を伺った方がいいと思うの」
「うーん。昨日、君が父上に稽古をつけて欲しいって言っていた件をお願いするために、散歩の後に少しお時間をいただいているから、そっちも一緒に聞いてみるよ」
「ありがとう。ちゅっ。わたくしたちは礼服と呼べるものは、貴方の神聖国の正装とわたくしのリーズのドレスしか持っていないから、そのことも伝えてご助力いただいてね? 来週末に買いに行きますからアドバイス下さいって」
わーい。
ほっぺにちゅっ。
いただきました~。
「んじゃ。サクッと聞いてくるね。ちゅっ」
僕も額にちゅってしちゃいました~。
ん~~~。
いい!
恋人って感じ!
くるっと踵をかえして父上の元に足を運ぼうとする僕を引きとどめるように急に足を止めたミルは、ちょっと意味深な上目遣いで、小さな声でつぶやいた。
「あと、わたくしの週末の朝寝坊のために、例の女官を潰してよいか、聞いてくれると嬉しいわ。あ、でも、これは、わたくしの係で」
ん?
ミルとまったり朝寝坊?
うわ~。
いい!
頑張るぞー!と、浮かれていたら、その後の父上と日付が変わるまで話し込んで、部屋に戻ったら、ミルは寝てた。
僕のベッドで。
部屋に戻ったらミルがいる暮らし。
幸せ過ぎて涙出そう。
シャワーを浴びて、また上下逆さまになってしまっているミルをそっと抱きかかえて正位置に戻して……
自分もベッドにもぐりこんで再びミルを抱え込んで眠った。
明日はミルに謝らなければならないことがある。
それが気になってよく眠れなかったけど、ミルは既に許してくれていることを知っているから、気持ちを落ち着けて、でも心の中で「ごめん。ごめんね」と謝り倒しながら、頑張って眠った。




