魔法紋を体内に埋め込まれましたが、何か?
「ああ。綺麗だな」
「でしょう? 前のより小型化できたのよ。これが召喚魔法よ。呼び出される本人が召喚紋を書かないといけないとか、呼び出される側の魔力を使って召喚するから魔力が半分以上残っていないと発動しないとか、いろいろ制約があって、廃れちゃった失われた魔術よ」
「転移ができるレベルの高位魔法使いがいつでも好きな時に自分を呼び出せるような魔法を他人に与えるとか、現実的じゃないからな」
「まぁ、どちらかというと、真名を軽々しく呼べなくなるから、真名を呼ばれたい相手に召喚魔法を掛けたくないと言うのが廃れた理由だと思うわ」
「そっか。ごめん。ミルは普段から僕にミルドレッドって呼ばれたいよね?」
「うーん。大丈夫よ。ジョナサンにミルって呼ばれるの、好きだから」
「そう? あと、これ、目の前に相手がいると真名で呼んでも反応しないんだね?」
「目視範囲にいるときは効かないわ。でも目視範囲にいない時は第3者との会話中に名前を出しただけでも召喚できちゃうから不便よ」
「ん~。でも前は『ミルドレッド、僕の唯一、帰ってきて』じゃなかった?」
「いいえ? 前から真名だけよ。多分、他のこと言っても召喚中で聞こえないし。でも、そうね、真名より拘束力が弱まるかもしれないけれど、呪文を変えてみるともう少し便利に使えるかもしれないわ。時間がある時に研究してみるわね?」
え?
じゃぁ、なんで僕は、こんなこっぱずかしい合言葉を唱えてたんだ?
もしかして、素?
子供の頃から素でミル担な自分が恐ろしい。
「真名だけの方が拘束力があるって、どういうこと?」
「うーん。この魔法は、隷属魔法に似た拘束力があるの。呼ばれた方は抗えないのよ」
「え? 隷属魔法? 禁術の??」
「そう。でも、強制執行される行動が『目の前に呼び出す』に限定されているのと、呼び出される本人が術者だから本人が望んでやってるってとこが隷属魔法との違いよ」
「なんでそんなに詳しいの? もしかして失われた隷属魔法も掛けられる?」
「混沌宮の書庫にやり方は書いてあったわ。でも、あれは本来は無機物を精霊化したい時に使うものなのよ。意思を持った存在を隷属させるなんて、残酷すぎるわ。ちなみに召喚魔法は神聖国立図書館の魔法録に収載されているから、誰でも読めるわよ?」
「え? 無機物が命令を聞いて動くの? 僕、混沌宮に俄然興味が湧いちゃったよ」
あ、まただ。
例の悲しい顔。
僕、何か言った?
ミルを隷属させたりしないよ?
「そして、緊急避難用の魔法陣なんだけれど、召喚魔法の外周につけてもいいかしら?」
召喚魔法の外周に?
「え? また、舐める?」
「あ、気持ちが悪かったわよね。ごめんなさい。ちょっと時間はかかるけど指や掌で描くこともできるわ」
いや、気持ち悪くないです。
むしろ望んでいます。
でも、指攻めも捨てがたい。
「気持ち悪くなんかないよ。全然。でも、指バージョンも体験してみたいな」
「そう? 呪文は何にする?」
「呪文?」
「そう。この術式はわたくしのオリジナルだから、呪文はこれから決めていいのよ。そうでなくても最近は呪文は変数化しておくのが一般的だから術式を描く時に術者が呪文を決めることができるように作っているわ」
「あぁ。いにしえの術式は、変数がどこに埋まっているか分からないから、呪文をかえられないのが不便だよね?」
「ええ。概念が分かったら、自分で書き直した方が早いのよ。うん。そうね。召喚魔法も書き直した方が早いかもしれないわ。ちょっとジョナサンは変数を考えてて」
ミルはそう言うと僕から降りて、隣にごろりと寝転んだ。
何、このカジュアルに共寝する感じ。
すごくいい!
夫婦って感じがする。
うーん。
いい!
そうそう、変数、変数。
「逃げろ!」だと、普通の言葉すぎてすぐに言っちゃいそうだよね?
「緊急避難魔法、発動」だと硬すぎるかな?
「いざ混沌宮へ!」だと避難先がバレちゃうし?
いや、バレちゃっても、追いかけてこれる人がいないけど。
でも、おやじに迷惑が掛かりそうだから、やっぱダメか……
バチッ。
いった~い。
ん?
もしや、ミル様、寝ちゃった?
いや~ん。
か・わ・い・いぃ~。
はっ。また僕の内なるおねぇキャラが目を覚ましたぞ。
う~ん。
それにしても、かわいいな~。
抱きしめて、寝よ。




