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家族のノリがおかしいですが、何か?

「あぁ~。ミルぅ~。会いたかったよ~」


 僕は馬車に乗り込むや否や、ミルをぎゅぅっと抱きしめた。


「ジョナサン。わたくしも貴方に会いたかったわ」


「昨日はごめん。結婚の解消の話が出て、気が動転した。ミルはそうしたいのかと……」


「えっ? そんな意味じゃないわ!? ジョナサンの好む形式で『結婚しなおせばいいのよ』って、言いたかったの」


「僕の好む形式?」


「皇子と王女じゃなくて、平民ジョンとミリーでもいいし、公子と王女でもいいし。貴方はわたくしの4つの身分でわたくしを迎えに来れるのよ?」


 え?

 全然そんな意味だとは想像できていなかったよ


「平民ジョンと、ピーターバラ第3王子と、ロスウェル公爵家第3公子と、神聖国第2皇子?」


「そう。わたくしはどれでも良いのよ? だけど、ジョナサンはどれがいいかわかんなかったから、パパのおすすめに従って『とりあえず』守りを固めるために一番戦闘力が高い称号で迎えに来てってお願いしちゃったから……」


「え? その『とりあえず』??」


「ええ。その『とりあえず』だったの」


「あ~。ミルぅ。ミルドレッド~。会いたかったよ~~」


 僕は緊張が緩んだというか、安心したというか、とにかく同じことを何度も繰り返し言いながら、ミルを抱きしめて、その柔らかさを堪能した。


 ん~。

 「落ち着く」と「ドキドキ」が同居して、離れがたいな。

 いいにおいがするし。

 スー。ハー。


 んん~。

 スー。ハー。


「え? ジョナサン? わたくしの匂い嗅いでる?」


「うん。いい匂い。ずっと嗅いでいたい」


「変態?」


「変態はきらい?」


「もう少し変態について理解を深めないと、答えられないわ」


 うぉ。

 ミルは、ミルである。

 しゅき。


 侍女や女官の前での距離感の話をしようと思って外に連れ出したのに、「会いたかった~」から先に会話が進まないまま、神殿についてしまった。


 いかん。



 馬車を降りると神殿の入り口で、ピーターバラ付きの枢機卿が待っていてくれた。


「ジョナサン皇子殿下、ミルドレッド王女殿下、ピーターバラ大聖堂へようこそ」


「まぁ、ユージーン枢機卿猊下が自らお出迎えくださるなんて、ありがとうございます」


「どうか私のことはジョン、彼女のことはミリーとお呼び捨てください」



 第7位階の緑色のローブの枢機卿猊下を筆頭に、第6位階から第1位階まで20人ほどのピーターバラの神官がずらっと整列して圧巻のお出迎えだ。


 ピーターバラには20人ぐらいしか配していないはずだから、全員集合なんじゃないか、これ?


 仰々しく通された応接室のドアが閉まるや否や、ミルが枢機卿猊下にハグして、素早く両頬にキスをするダジマット流の家族挨拶をした後、猊下を質問攻めにし始めたので、焦った。


「グランパ! どうしたの? ピーターバラに来ちゃったの? どうして緑色のローブ? 黒じゃないから上皇聖下って呼んじゃダメなのよね?」


 グランパ……

 ユージーン枢機卿猊下、正確には幽玄上皇聖下だ。

 おやじの父君で、前皇王聖下で、神聖国第2皇子の僕の祖父ということになる。


 が、僕にとっては、神の家で上位の神官試験に挑むときの鬼教官だ。

 ほんと、なんで来ちゃったの?

 てか、黒ローブ、どうした?


「ん。だって、かわいい孫たちが危ないかもしれぬというからの。しばらくここで見張ることにしたのじゃ」


 うわっ。

 鬼教官がデレてる。

 こわっ。


「やーん。グランパ。ありがとう」


「各国の神殿のトップは『枢機卿』で、皆んな第7位階の緑色のローブを着てるんだそうじゃ。統一した方が神聖国以外の民に分かりやすいからだそうじゃ」


「まぁ。そうなの? グランパ、緑色もお似合いよ?」


「ミリーも紫色のローブが似合ってるぞよ。ジョンも受かってよかったのぉ?」


「はい。その節はご指導ありがとうございました」


 鬼教官が別人すぎて戸惑いしかない。

 この人、ヒマつぶしで神の家の指導官やってるんだが、スパルタ式で厳しいんだ。


「いいってことよ。ところで、ジョンはまだ家族のグループチャットに入っておらぬのか? 招待しようかの」


「グループチャット?」


「高位神官専用の通信網のプライベートグループ設定よ。習ったでしょ?」


 ミルが説明している間にもグループ参加招待が送られてきて、同意すると……


『ユージーン: うぇーい。ジョンを招待したぞい!』

『ゆっぴー: うぇーい。そういえば、招待するの忘れてたわ。すまんな』

『めめ: うぇーい。今、神殿?』

『みりー: うぇーい。グランパいて、ビックリ!』

『ロナ: うぇーい。わたくしもついてきてるわよ。そっち行くわね』


 ええぇぇ?

 ノリが、想像を絶しているんだが……


「ねぇ。ジョナサンも何かテスト送信してみて」


 うぅ。

 ミルぅ。これ、返信すんのムズイよ。


『じょん: うぇーい。どうぞよろしく』


 この後、全員から『うぇーい』との返信がきた。


 いや、もうね、この際「うぇーい」は、意味が分からないことにして「ごきげんよう」と脳内翻訳することにしたよ。


 まぁ、あれだよね。

 後宮で孤児たちと一緒に暮らして言葉が崩れちゃったのは、他の皇族も同じだったってことだよね?


 この後、ローナ上皇后聖下も応接室にお出ましになって、僕からお二人への呼び名について話し合いが始まった。


 皇王と皇后を「おやじ」と「おふくろ」と呼んでいるんだから、「じぃじ」と「ばぁば」じゃろ?

 それは子供っぽ過ぎるわ。「じじい」と「ばばあ」がよろしいわ。

 語調を揃えるなら「じいさん」と「ばあさん」じゃない?

 「おじい様」と「おばあ様」ではダメですか?

 それは距離が遠くていやじゃ、などなど。


 激論が交わされた結果、ミルに揃えて「グランパ」と「グランマ」で行くことにした。


 初対面の上皇后聖下を「ばばあ」なんて呼べそうにないよ。


 猛烈に疲れた。



 この後、グランマの提案で僕とミルは神官のステータスをアクティブに変更し、パートナー登録を行った。

 これで、平民ジョンと平民ミリーになったとしても、僕たちがくいっぱぐれることはないだろう。


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