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最高に幸せですが、何か?

 大急ぎで迎賓館に戻ると、ミルはのんきにお茶を飲んでいた。


「まぁ。ジョナサン、学園を休ませてしまったのね? 心配をおかけしてごめんなさい」


「うんうん。ミルドレッド、心配したよ。でも何事もなくて良かった。よく眠れた?」


 僕はささっとミルに寄り添って座り、ミルの手を取って、キスを落とした。 

 仲直り、大事!



「ええ。それはもうぐっすり。ジョナサンは? 昨日は遅かったのでしょう?」


「ああ。兄上と話し込んでしまってね。いろんな話が聞けたから、ミルにも教えてあげるよ」


「まぁ。楽しみね。そうそう。パパから春摘の白茶を貰ったのよ。今年はバタバタして茶摘みに行けなかったから」


 ミルはそういうと、丸くってほっこりする形の茶壷を開けて、茶葉を見せてくれた。


 よしよし。

 昨日と違って、すごく自然にやり取りができてるぞ。

 嬉しい。


 

「神聖国の春摘の白茶は美味いよな~。あ~、でも、秋摘の紅茶も捨てがたいな~。ミルは茶摘みにも行ってたのか~。公務?」


 僕が中の茶葉を覗いたり香りをかいだりしている間に手際よく急須にお湯をかけて温めて始めた。


「ふふふ。ジョナサンはなかなかの茶飲みよね。きっかけは公務だったけど、2年目からは貴方のためのお茶を摘むためよ。ミルドレッド姫の厳選茶葉がお気に召して嬉しいわ」


 そういうと、僕が持っていた茶壷を取りあげて、茶葉を取り出し、一度サッと湯通しした後、お湯を捨てて、茶葉を蒸らしに入った。


「え? あれ、ミルが摘んでるの? なにそれ、贅沢」


 ミル様、キュンです。


「そうよ。春茶は揉まないけど、秋茶は茶揉みも自分達でやるのが楽しいの。ママとユージェとアンと4人で」


 へぇ。

 アンって、先代聖女シエルのことだよな?

 随分仲良しだな。

 ミルは当代聖女エアリーには興味がなさそうだが、先代聖女シエルには懐いてるんだよな。


「え~~。僕、ずっとミルの手摘みで手揉みのお茶を飲んでたの? お茶を飲むようになったのって、神聖国に行ってからだけど、なるほどミルのお茶だから好きになったんだな~」


 僕は嬉しくて、思わずミルをひょいっと抱えて膝の上で抱きしめてしまった。

 お!

 今日はちょっと大胆に行動できてない?


「ふふふ。ここからじゃお茶が淹れられないわ。それに神聖国は茶飲みの国だから、あそこで暮らしたらみんな茶好きになるわよ。でも、ありがと」


 ミルはほっぺにちゅっとした後、僕の膝から降りてしまった。

 今度は手際よく茶碗をお湯で温めた後、抽出し終わったお茶を注いで渡してくれた。


 僕の妻、所作がきれいで見惚れるんですが?


「あ~。うまい! お茶を飲むとホッとするね」


「ええ。寝ぼけて大失敗しちゃったけど、そのおかげで春茶を貰えたのは良かったわね」


「ダジマットの両陛下が探し当ててくれたんだよ。神聖国に()()()()()時もたまに寝ぼけてダジマットの自分のベッドに転移していましたって」


 ミルはメチャメチャ恥ずかしそうに顔を両手で覆ってしまった。


「わたくしも今朝ママが起こしに来てくれた時に初めて知ったの。神聖国に来た時は、大魔王が毎回眠ったままのわたくしを抱えて内裏の門の前でパパに預け直してたって。間抜けよね?」


「くくくっ。確かに。その場面を想像すると間抜けすぎて笑いが堪えられないね。っははははは」


「それだけじゃないのよ。わたくし家出の旅中も毎晩孤児院から自分のベッドに寝に帰っていたみたいなの。バレバレどころじゃないわ」


 ミルドレッドは唇を限りなく僕の耳に寄せて囁いた。

 ミル様、知ってますか?

 それ、凄くドキドキするよ。


「あはっ。はははっ。んははっ」


 僕がこらえきれずに大笑いすると、ミルドレッドは恥ずかしさのあまり僕の胸に顔をうずめてしまった。

 うぉ。

 ミルが腕の中に!

 可愛いがすぎるぞ。


「んもう。笑いすぎよ。おかしいけど。ふふふ」


「よっぽど寝心地が悪かったんだろうね? まぬけすぎる~。んはっ。ははははっ」


 僕はミルを慰めようと、背中をトントンしてあげながらも、笑いをこらえることができなかった。

 ミルも肩を震わせていたから、笑うのを我慢しようとしていたんだろうと思う。


 あ~。

 どうしよう。

 最高に幸せだ。


 僕たちは10才の頃までも仲良しだったけど、これからもっと仲良しになれそうな気がして嬉さが溢れた。


 でも、お約束のごとく、侍女が女官を呼んできて「節度ある行動を!」とお小言が入ったので、僕はミルと外に出ることにした。


「ねぇ。ミル。僕、神聖国のことを思い出したら()()()に行きたくなったよ。まだお昼で時間もあるし、神殿へ行かないか?」


 ミルは、優しく見守るように首を傾けるようなしぐさで「はて?」っと伝えてきたので、もう一歩踏み込んだ。


「あ~。僕たちは、まだピーターバラの神殿に行ったことがないから、最初は馬車で行こう。二回目からは転移できるけど、初回は転移紋の場所と状態を()()しておいた方がいいだろう?」


 ミルはこれでもっとワケが分からなくなっただろう。

 神官は精神統一のための瞑想はするが、「お祈り」なんて言わないし、高位神官は転移紋の「下見」などしない。

 味方がわざとワケが分からない話をする時は話を合わせるようにとミルも教わってるはずだ。


「いいわよ。ローブを着ていく?」


 よし。

 乗ってくれた。


「あ、それ、いいね?」


「何色?」


「紫」


「おっけー」


 僕たちの王族の品性を感じられないくだけた話し方に、女官は眉をひそめていたが、侍女の方は僕たちが本当に仲良しだということに気付きつつあると思う。


 今後どういう距離感を見せていくかについて、ミルと話しておきたくて、母上おすすめの密談場所「馬車」で移動することにしたんだ。


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