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僕は押し付けられた王子でしたが、何か?

 入学式が終わったら、クラスごとのオリエンテーションが始まって、淑女科のミルとは別行動になるし、

 僕の側近候補を自称する謎の3人組に絡まれるし、

 知っている人なんて誰もいないし、

 教師に呼び出されて入学式中に指を絡めてミルの手を握っていたことについて注意を受けるし、

 ミルは淑女科伝統の上級生からの歓迎会の晩餐に行ったとかで一人で帰る羽目にあうし、

 とにかく散々だった。


 ミルぅ~。

 と、泣きたい気持ちに襲われていたら、次兄が夕餐に誘ってくれた。


 次兄とは、入学式に新入生のバッジをつけてくれた兄で、この時に入学式前の聖女の反応について教えてくれた。


 前日にミルと挨拶に行ったのも合わせても会うのが3回目で、簡潔に言うと、ほぼ知らない人だ。


 赤眼赤髪の突き抜けるような美形だから一発で顔を覚えただけ。

 繰り返すが、ほぼ知らない人だ。


 僕たちが挨拶に行ってもイヤミを浴びせてこなかったので、印象は良い。



「君は10才までしかピーターバラの教育を受けていないし、それからはずっと神聖国の神の家で修業していたから、現況を知らないよね? 今の状況をどういう風に理解しているの?」


 僕は自分が知っていることを兄に話した。


 まず、ピーターバラの上位貴族たちは魔王の娘、つまりミルを王家の嫁に欲しい。


 魔王の娘は聖女のホスト国にしか下賜されないから、当代の王子たちは何がなんでもミルを篭絡しなければならない。

 

 私の生みの母は、先代ピーターバラ王の第3子で、王妃の子供ではない。

 隣国リーズの公爵家に嫁いで、男の子を3人産んだ。


 母の二人の兄たちは、男の子に恵まれなかった。


 つまり魔王の娘ミルドレッド姫のお相手は、母が生んだ3人の男の子しかいない。

 それで母が女王に即位することになった。


 そして、僕はミルドレッド姫と同じ年齢だという理由で、最有力候補としてダジマット王家で姫と共に育てられた。


「ふぅん。なるほど。王太后派はそんな風に君に教えたんだね。興味深いね?」


「王太后派?」


「そう。ピーターバラが派遣した君の教育係は『王太后派』なのだよ。僕の認識とは大きくかけ離れていて、驚くばかりだよ」


 兄上、驚いているようには見えませんよ。

 むしろ不快感があらわです。


「神聖国の政趨教育では、母上は『貴族派』でした。何故私の教育係が『王太后派』なのですか?」


 神聖国の神の家でも、広く浅くではあるが各国の政治趨勢について学ぶ。


 母は、高位貴族に担ぎ上げられている『貴族派』で、

 母の長兄は長子継承を重んじる古参貴族の『第1王兄派』、

 母の次兄は勢力拡大に意欲的な新興貴族が多い『第2王兄派』、

 そしてもうほとんど力を失っていると言われるのが元新興貴族で現筆頭貴族の『王太后派』、

 それにどこの国にもいる今はやりの『混血統派』だったように思う。



「それは君が『王太后派』の教育係に拉致されて、ダジマットに連れていかれたからだよ」


「拉致?」


 物騒な話だな。

 そんなこと聞いたことなかったよ?


「王太后は、勢いのある新興貴族の娘でね。えげつない手を使って元々の婚約者を蹴落として正妃になった。蹴落とされたのが私たちのお婆様だね」


「私たちのお婆様は、王の浮気相手ではなかった?」


「本来の正妃だよ。でも、王太后が正妃になった後、ダジマットの姫とピーターバラの王子の婚約予約が締結されたことで、古参貴族も取り込んで最大派閥となった」


「婚約予約? ん? 聖女が生まれたからミルがピーターバラに降嫁することになったんじゃなくて?」


 前からちょいちょい思っていたけど、ピーターバラって変な言葉が多いよな?


「結果的にはそのように見えるけど、実態はかなり違うんだ。聖女が生まれる前から『王太子の姫との婚姻予約』があったんだよ。その盟約は王太子の成婚の際に結ばれ、現王の兄君のお子を指したものだった」


「え? 私の婚約者はミルの従妹だったってことですか?」


「相手側はそうだね。こちら側は僕たち3兄弟の誰かだよ。ところが『王太子の姫との婚約』の後に、王太子の妹姫が紫色の瞳の王子を生んで、ダジマットの継承に変化が起きた」


「ダジマットでは紫色の瞳の子供を持つ親が王になるから?」


「そう。王太子の妹姫が王位を継ぐことになった。しかも、王位継承が大きく前倒しになって、妹姫は若くして即位し、女王になった」


「ああ。王配のクレメント様がリーズ国の王太子だから、ミルの兄上に早く継承させて戻る予定だったのかな? ん? リーズ王の方の後継はミル?」


「おそらくダジマット家はそんな風に考えていたんだと思うよ。最近のダジマットの姫達は政略結婚じゃないしね?」


「女王の兄君の姫は、ダジマットの血を継ぐ魔王の姪っ子になるが、紫色の瞳の魔王の娘じゃないだろうから、ピーターバラ貴族たちはガッカリして多くが王太后派を離れた」


 あっちについたり、こっちについたり、忙しい貴族達だな。


「それで婚約を兄君の姫からミルに付け替えてもらった?」


「ちょっと違う。ピーターバラ国王がダジマットに魔王の娘の降嫁を願ったら、『貴家とは既に別の婚姻のお約束がありますので、遠慮させていただきます』と断られた」


「ざまぁないですね。聖女なんて魔石で退治しろと言ったのはピーターバラですからね?」


 自業自得だな。


「王太后派の先約のせいで本物の魔王の娘が降嫁してもらえなくなったことで、王太后派は窮地に追い込まれ、生まれたばかりの君を攫ってダジマットに連れて行った。そして、この子が姫のお相手ですよと、ゴリ押し始めた」


「えええええ??? 僕、ゴリ押しで押し付けられた赤子だったんですか?」


 なにそれ、メチャメチャ嫌なんだけど。

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