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モノクロ
それまで、敵わない他人の存在からくる自信喪失から目を背け、テレビゲームに堕落しどこか周囲の人間を馬鹿にして生きてきた私は、ある日の放課後音楽室の重い防音扉を開けた。練習をする合唱部の人たちの視線を集めて居心地の悪かった私は、あくまで平静を装おうと「どうも体験に来ました」と腑抜けた声で言った。私を合唱部へ誘った女の子は明るく天真爛漫で、その勢いと少々の強引さに負けて私は今日音楽室に来たのである。元々、他人よりも変声期の早かった自分は小学校高学年になると思うように高音が出せず、いつしか歌うことが嫌いになっていた。次第に周囲も声変わりをして、低い声で歌っても周囲から浮くことがなくなった頃、その誘いは来た。