ココナラ
合体し蛍光イエローの輝きを体にともす菜乃花。
嘆くバロンの体から放たれる刃を紙一重でかわし友達に手を伸ばす。
「バロンっ!」
「菜乃花…。た…すけて。」
上半身のみのオムロットがバロンの胸から溢れ出し菜乃花を殴り飛ばす。
扉が吹き飛び酷暑の村へとはじき出される。
「バロン。助けてじゃないだろう?私たち二人はこれから自由に生きていくんだ。よく見ろ。あの女は憎いこの村の子だ。村の人間は全部殺そう。この村は消し去ろう。なぁ?バロン。」
「そう、だ。みんな…みんな嫌いだッ!」
「そうだ!バロン!ここが終わったらいじめた奴を殺しに行こう!この星を楽園に作り替えるんだ!」
バロンのこめかみに筋繊維を潜り込ませているオムロットの狂笑がこだまする。
田んぼに突っ込み泥だらけの菜乃花が立ち上がる。
「バロン…?どうしちゃったの?」
「おそらく脳の物質を強制的に分泌されてる。早く何とかしないとオムロットを倒しても廃人になっちゃう!」
バロンが雄たけびと共に菜乃花のもとに降ってくる。
泥を飛ばしながら転がり避ける菜乃花を追うように何度も筋繊維の鉄槌による攻撃が繰り返される。
それを低空飛行しジグザグに動くことでかわす菜乃花。
オムロットが主導権を握ていたころよりも体積も武器を形成する筋繊維の数も倍以上に増えていた。
地面や電柱を切り裂きながら近づく刃の嵐。
触手での連続攻撃でそれをはじき返すが物量が足りない。
喉元まで迫ろうかという刃を二本の触手から放つ光線で吹き飛ばす。
「くっ…!ナノカの適応力もすごいけどバロンの力は段違いッ!ナノカッ!全力を超えるわよ!」
ぐっと上半身を逸らす菜乃花。
弓が放たれる前の様に体がぎりぎりとしなる。
「コルルさん。やっぱり戦わないとバロンは救えないんだよね?」
「…そうね。本気で殺す気じゃないと今のバロンは止められない。」
「だったら私…やるよ。ギンガ警察として!」
菜乃花の体が強く発光する。
力を蓄えられた体は爆発の様な瞬発力で飛び立ち、バロンの反撃を許さず遠くに見えていた山まで体を共に飛ばす。
山の表面へととてつもない速度で着弾する二人。
触手と筋繊維による嵐が山の木々を切り裂きへし折り大地を歪ます。
苦しそうにうめき声をあげるバロンが菜乃花の顔に強烈な突きを放つ。
腕で衝撃を和らげ数歩後ろによろける菜乃花だったが体制を立て直し強力な反撃のパンチを繰り出す。
「もうこれ以上!バロンに罪を重ねてほしくない!」
「何が罪だ!バロンを虐げていたのはお前たちだろう!」
「ナノカはバロンの友達っ!大事にしてた!虐げてなんかない!」
連続で放たれる菜乃花のパンチに吹き飛び大木にめり込むバロン。
「ならばなぜバロンは苦しんでいた?胸にあったのは母親やこの村への怨嗟だったぞ。」
「確かにバロンの苦しみに気付けなったのかもしれない…でも!でもッ!花火に行こうって言ったときは
うんって言ってくれた!私と居たいってきっと思ってくれた!」
「そうよ!人の感情の一面を切り出して大げさに叫ぶなっ!バロンはきっとこの村にいて!ナノカと一緒に居て!楽しいとも思っているはず!」
「ふんッ!戯言を。」
バロンの頭上にオムロットが湧きあがり、二人が手をかざし合い筋繊維を球状にまとめたエネルギー弾を作り出す。
「ナノカ!私たちも行くよ!」
「うん!」
菜乃花の上半身から現れたコルルが菜乃花と頬同士をくっつける。
強く互いを抱きしめ人差し指をバロンとオムロットに指し示す。
「いくよナノカ!ギンガ☆ガンガン♡ブレーイクッ!」
強力なエネルギーのぶつかり合い。
まばゆい爆発を起こすその衝突は頭上に広がる入道雲を吹き飛ばし赤く燃えた夕焼けが照らされる。
つばぜり合い。
菜乃花の全力を超えた一撃は漆黒の真球を貫く。
「バロンッ!今助けるよッ!」
蛍光色の派手な光線はバロンの体を包みオムロットの体を剝ぎ取り空へと溶かす。
光が宙に消えた後バロンはふわりと地面へ倒れそうになる。
それを慌てて抱き留める菜乃花。
「ナノカ!バロンのお母さんの元へ!私だったら助けられるかも!」
「わかった!」
菜乃花がバロンを抱え夕日に向かって飛び立つ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「えー土地や建物の修復完了。けが人の救護完了。特別共生捜査官以外の記憶処理完了。ふーこんなものかしらねこの地球での仕事は。」
「つかれたー。」
嵐の後のぐちゃぐちゃだったバロンの部屋は完全に元の状態に復元されていた。
オムロットを倒した後も菜乃花は後処理のためにギンガ警察の事後処理班と村中を飛び回っていた。
クーラーの下でぐったりとしている菜乃花にバロンがアイスを持ってくる。
「でもいいの?菜乃花はわかるけど僕の記憶ものこしたまんまで。それに何か罪に問われたりは…」
「そこらへんはいーの。バロンはオムロットに感情を無理やり増幅されていたからね。お咎めなし。そんなことより何か後遺症があったりしない?大丈夫?」
「うん大丈夫。」
コルルが二つのコンパクトの様なものを取り出す。
「はいこれ通信機。何か異常があったら連絡して。」
円形の二つ折りの通信機。
ふたを開けるとギンガ警察の天秤のロゴが描かれている。
「今回の件での協力本当にほんっとに感謝しています。どうか元気で。」
「そっか…もう行っちゃうんだね。」
庭に一本のボールペンの様な物が突き刺さる。
菜乃花とバロンがその前に移動すると菜乃花の体からボールペンへとコルルの体が移動していく。
「気軽に連絡していいわよ。二人とも。仲良くね。」
ボールペンが打ち上げられていく。
すぐに見えなくなり青い空へと消えていく。
手で日光を遮りながらうーんと伸びをする菜乃花。
「それじゃ、私お祭りに行く準備してくるから!時間遅れないでよ!」
そう言って菜乃花はバロンの家から飛び出していく。
アイスを口にしながらしばらく空を見上げるバロン。
扉が開く音がする。
菜乃花かと思い庭から家へと戻るバロン。
玄関にはたった一人の母親が立っていた。
「たまには早く帰ろうと思ってな。なぜだか最近、バロンと一緒に居たいんだ。」
「…母さん。ごめん。」
母に抱き着くバロン。美咲は困ったように笑ってバロンの頭を撫でる。
「どうしたんだいきなり。」
「なんでもない。」
しばらくバロンは母から離れなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
約束の時間。
日が沈み祭りの提灯が暗闇を照らす。
早めに着いたバロンは着せられた甚平をすこし着心地が悪そうにつまむ。
「バーローン!」
菜乃花の声がする。
手を振る菜乃花は青い浴衣を着ており下駄を鳴らしてこっちに走ってくる。
少し息を切らしながらバロンの元へ着く菜乃花。
「どう?似合う?」
「うん。似合う。」
髪を結い上げ編み込んでいる菜乃花の首はうなじが綺麗に見えていた。
「さ、行こ!」
菜乃花がバロンの腕をつかみ祭り会場へと走り出す。
夏はまだ終わらない。




