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イカリワキアガル

星の様な閃光と共に菜乃花の体と同じ蛍光イエローの爆発が巻き起こる。

土煙と黄煙が晴れた後にはオムロットの姿はなかった。


「い、いなーい!!!」

「しまっ…。出力抑えすぎたか…。」


宙を飛び回りオムロットの姿を探すがあの巨体をどこに隠したかその姿は見つからなかった。


「そろそろ合体制限時間ね。歩いて探しましょう。」


菜乃花が着陸する。

狭いようでだだっ広い看句村を見回す菜乃花。

やはりどこにも宇宙人の姿などなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


菜乃花たちがバロンの姿を探しているころ、オムロットは森を筋繊維を使った高速立体移動で抜け、腹からバロンを開放する。

バロンに吸い込まれていく黒い筋繊維へとほどけていったオムロット。

起き上がるバロン。視界はにじんでいる。


「やぁバロン。なんとなくの意識はあっただろう。自己紹介はいらないね。」

「お、お前!僕から出てけよ。」


胸の前で握りこぶしを作るバロン。

その胸からオムロットの繊維がこぼれ出す。

小さくなり上半身だけの姿のオムロット。

大きさだけならウサギと変わらない宇宙人にバロンは怯え震える。


「震えているね。大丈夫。バロン。楽しいことをしよう。」

「な、なに言って…。」


オムロットはバロンの顎に手を添え頭を撫でる。

黒い筋繊維はドームを形成し、わずかな日光のみが二人を照らす。


「望みを全て叶えてやろう。気に入らない奴は殺してやるし、欲しいものは全て奪ってきてやる。あぁカワイイ。カワイイねバロン。この地球の支配者にしてやろう。」


耳元でささやかれる取引。

近づけられる顔に思わず顔をそむける。顎に添えられたオムロットの手はバロンを逃がさない。


「私が信用できないか。なぁに簡単なこと。先ほどの少女、菜乃花と言ったか。あれを見てわかったんだよ。地球人は合体適性がギンガンの中で群を抜いて高い。私にとってバロンは力の根源そのものなんだよ。良い関係を築きたいのも納得だろう?」


バロンが繊維に腰を掴まれ持ち上げられる。

身動きもできずにオムロットの声を聞くしかできない。


「そうだ。主導権を渡してやろう。これからはバロンの意志で私の力を使うと良い。」


溢れ出していた筋繊維が全てバロンのもとに注がれる。

オムロットの全てが吸収される小さな体。

何故か不思議と高揚感と万能感に包まれる暴力の権化たる力。


「バロン。私が気に入らない者を殺すといったときに真っ先に一人思い浮かんだだろう?」


心の中のオムロットの声。

耳をふさいでも聞こえる悪魔のささやき。


「お母さん。会いに行こう。」

「だ、ダメだ!」


心までも一体化しているオムロットとバロン。

自身の取り繕えない本心を覗かれバロンは焦る。

母親へ危険が迫っている。

頭ではわかっていても脳裏にこびりついた考えが消えない。


「会いに行こう。な?」

「あ…。あ…。会いに行くだけなら。」

「あぁ。会いに行くだけさ。私に紹介してくれよバロンのお母さんを。」


紛れもないバロンの意志で。

黒い羽根が少年を炎暑の空に放り出す。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


看句村の北西部には一軒のカラオケバーがある。

田舎には不釣り合いな最新機種を備えたバーで、一年前の開業から若い村人の新しい娯楽の場になった。

人口もあって閑古鳥が鳴くことも少なくないが店主のバロンの母、美咲は夜職の頃よりも充実した毎日だと思っていた。

暗い室内。重たい扉が開く。


「どうしたバロン。今日は菜乃花ちゃんと遊ぶんじゃなかったのか。」


返事をしないバロン。

うつむきながらカウンター席に座る。

小さなバロンでは高いカウンター席は座りにくかった。

お前の居場所ではないと言われているようでバロンはこの椅子が大嫌いだった。


「さては喧嘩でもしたか。ダメだぞ。女の子を傷つけたら。」


慣れた手つきで瓶のコーラをコップに注ぐ。

消えていく炭酸の泡をうつろな目で眺めるバロン。

ぽつりとつぶやく。


「なんでこんな村に引っ越してきたの。」


電子タバコを加熱し始める美咲。


「なんでって越してくる前に言ったろ。おじいちゃんの土地がもったいないし良いところだからって。」

「僕がいじめられてたから?」

「バロン。人には向き不向きがあるんだ。その土地に向いてるかどうかとかな。」

「なんでこんなおかしな名前つけたの。」

「私は素敵な名前だと思ってるだけどな。バロン。」

「なんで一緒にいてくれないの。ずっとずっと一人だよ僕は。」

「たしかに東京にいたころは仕事ばかりであまり一緒に居られなかった。だから村に来てからは晩御飯は毎日一緒だし遅くても夜七時には帰ってるだろう?」

「ずるいよ…。母さんだけ村になじんで。僕は…。ここでも…。」

「菜乃花ちゃんがいるだろう。」


美咲が電子タバコを咥える。


「タバコはやめてっていってるじゃないかッ!」


テーブルを力任せに叩くバロン。

わが子のおかしい様子に美咲も気づき始める。


「…。どうしたのバロン。」

「もういいよ!オムロットッ!」


バロンの激昂と共に黒い嵐が巻き起こる。

椅子やカラオケ機材が宙に浮かぶ。

テーブルにしがみつく美咲。

それを冷たい目で見降ろすバロン。


「僕はオムロットと生きていく。」

「よく言った!バロン。さぁ、好きに生きようじゃないか!」


黒い刃が美咲を襲う。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


菜乃花が扉を開ける。

そこにはぐちゃぐちゃの室内と血だらけの美咲を抱くバロンの姿があった。


「ば、バロン?」


その惨状から何が起きたかは想像できた。

ひきつった笑みを浮かべているバロンの目には悲しいのに涙が出てこない。


「菜乃花…。助けて。」


バロンが悲痛な叫び声をあげる。

オムロットがバロンを包み込む。


「これからは二人で生きていくんだ。ギンガ警察。お前らは邪魔だ。」


黒い刃が飛んでくる。


「…。コルルさん。」


菜乃花は震えていた。

凶刃におびえていたのではない。

かわいい友達をこんな表情にした元凶への怒りが。


「共生合体ッ!」







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