ナロウヨギンガセンシ!
ギンガ警察。自分の体に同居。訳のわからない言葉ばかりに菜乃花は首を傾ける。
菜乃花に合わせて首を傾けるコルル。
「わ…私の手…。」
「あれ?よく見たらあなた子供?。うっそ。んー…。んー!んーっと、これ見て。」
発光する触手たち。それは菜乃花の左手に吸収されていったと思ったら体内を潜り、右肩へと移動していく。
右肩からコルルが飛び出す。大きさは子猫ほどで、上半身だけを肩から出している。服は着ていないが裸と形容するのも少し違った容姿だった。
コルルの右手が石を投げ入れられた湖面の様に揺れる。その中から二つ折りの財布の様なものを出現させる。
ぱかっと開くと上部にはコルルの写真そして下部には傾いた天秤のロゴが描かれている。右の皿には丸が載せられておりもう片方は空。本来なら丸を載せた方に傾くはずが空の方が下になっている。
「これはギンガ警察の手帳。私たちギンガ警察はギンガの均衡を守るため各惑星に存在するオーパーツの回収だったり、ギンガに危険をもたらす宇宙犯罪者を逮捕したりするの。ここまではわかる?」
「…全然わかんない。」
「うんうん。でね、この地球の近くで凶悪な犯罪者と…。あれわかんない?あのギンガ警察よ。子供のなりたい職業ランキングで毎年上位に入るあのギンガ警察よ?」
「…?えっ…???…うん???」
「まいったわね。私としたことが。こんな関係なさすぎる子供を巻き込んじゃった…。」
うんうんと唸りながら自身の髪なのか触手なのかよくわからない体の部位で頭をトントンと叩くコルル。
その体に恐る恐る触る菜乃花。
「わ、私の体どうなっちゃったの…?」
「いたって健康よ。額の傷は体借りるときに私が治しておいたから。」
「…借りる?」
「地球ってかなり特殊な磁場環境なのよ。そこで生きていくには現地の人間に体を貸してもらわなきゃならないの。しかも私、さっきまで戦っててかなり弱ってて。一番最初に見つけたあなたの体借りないと死んじゃいそうで。あ、悪影響とかは特にないと思うから安心して。」
「ホントに大丈夫?」
「…多分。」
「え。」
「あっいや!絶対!なんだったら私が帰るときには元気満タンになってるわ!」
明らかな嘘にかなり不安になる菜乃花。
慌てて触手をぶんぶん振り回すコルルを尻目に部屋を見渡す。
「やっぱりバロンいない。ね、コルルさん。バロンは?変な黒いうにょうにょがバロンの事掴もうとしていたの。」
「黒いうにょうにょ。オムロットの事ね。オムロットはギンガ警察でも手を焼くS級犯罪者。さっきまで私と戦ってたんだけどこの地球に逃げられてね。多分バロン君はオムロットに寄生されたんだわ。」
「そ…そんな。」
「きっと大丈夫よ。奴もかなり弱ってるはずだしバロン君を傷つけたりしないはず。」
「でもでも…。」
コルルが触手と両手で菜乃花の両手を包む。
あたたかい人肌を感じるも菜乃花の表情は暗い。
「名前。まだ聞いてなったわね。」
「なのか。黒光菜乃花。」
「ナノカ。私とタッグを組みましょう。幼いあなたを危険な目に合わせるのは心苦しいけどあなたが必要なの。バロン君を一緒に救いましょう。」
幼い菜乃花でも自身が置かれている状況が異常であり、これ以上関わるのは危険であることは理解できた。
それでも。
「花火…。一緒に行きたい!何をすればいいのコルルさん。」
「探しに行くわよ。バロン君を。きっとまだ近くにいるはず。」
「わかった!」
急いでバロンの家から飛び出す菜乃花たち。
自転車に飛び乗り、坂を下る。
下り坂でペダルを踏むことは危ないからと禁止されていたが今はそんな言いつけを守っている場合ではない。
「この辺で人目につかないバロン君が行きそうなところってある?」
「人目につかない…。あっ!」
「そこに行って!」
ちょうど一年くらい前の記憶が菜乃花の脳裏蘇る。
今年と同じセミの声とうだるような暑さのその日。
菜乃花は村に引っ越してきたバロンに案内をしていた。
『ここが駄菓子屋みうら!ここでしかおもちゃとかは売ってないよ!そうだ、あんずバー奢ってあげる!』
『…。ありがと。』
引っ込み思案なバロン。そんな彼を弟の様にかわいがった菜乃花。
一つ年が違くても子供の少ない看句村ではあまり関係なかった。
東京というあこがれの地で暮らしていたバロンは菜乃花にとって飽き飽きしていた村での生活に入ってきたスパイスだった。
見慣れた空き家の中におしゃれで最新の家具や娯楽たち。そんなものに囲まれて生活しているバロン。だけれど村の事は菜乃花の方がうんと詳しい。
そんなちょっとした優越感。
『見て!ここすごいでしょ!村がぜーんぶ見えるの!』
『わぁ…。』
『この高台に入る道、草で隠れてるでしょ。大人も知らないんだこの場所の事。』
突然できたかわいい弟。
そんな感情を抱いて接する菜乃花にバロンは口数少ないながらもなついていった。
「絶対助けるよ。バロン。」
高台へと続く道につく。
草が邪魔で自転車では入れない。
スタンドで立てかける時間も惜しくて自転車をその場で乗り捨てる。
自分の背丈ほどある草たちをかき分ける。
草が視界から消えると高台に出る。
そこに立っていたのはバロンではなかった。
身長2メートルは巨大な女。灰色の髪はうねうねと波打っている。
背を向けているその女を見て菜乃花は瞬時に悟る。
「もしかして…。オムロット?」
「そう。あいつがオムロット。菜乃花。戦うことになる。少し体を一緒に使わせてもらうわよ。」
その声を聞きオムロットはゆっくりと振り返る。
「来たね。ギンガ警察。」
「寄生した子を開放しなさい。早くしないとぶっ飛ばすわよ。」
「怖い怖い。」
「バロンは?バロンはどこ?」
「こ、こ。」
オムロットの腹部が開かれる。
黒い筋繊維が裂けて露わになる気を失ったバロン。
「バロン!」
「大丈夫さ。今は眠ってるだけ。でもかわいいねこの子は。気に入ったよ。」
バクッ!とお腹が閉じられる。
見ていることしかできない菜乃花にコルルが叫ぶ。
「ナノカ!共生合体するわよ!」
「えぇ!え…。なにそれ。」
「ほらグータッチ。」
菜乃花右手とコルルの触手がタッチする。
瞬間。蕾が咲き乱れる様に触手が展開される。
看句村の高台で蛍光イエローの触手の嵐が巻き起こる。
そんな嵐の真ん中に立つ菜乃花だったが心地よさそうに両目を閉じる。
触手の嵐は菜乃花を中心に収束し始める。
菜乃花の身を触手が包む。
「共生合体ッ!」
コルルのその声と共に菜乃花のを包んでいた触手がはじけ飛ぶ。
まばゆい黄色い閃光と共に一人のギンガ戦士が誕生する。
コルルと同じように黄色く発光する体に変身した菜乃花。
自身の髪が触手となったその変身に驚き声を上げる。
「な、なにこれー!!!」
「ギンガ☆ガンガン!さぁ、オムロット!覚悟しなさい!」




