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旅日記

砂時計の流れ

作者:

 砂の中で太陽に焼かれた町は陽炎に覆われていた。

 吹き荒れる砂埃は目に見える風のように町へと流れ込んでいた。

 土壁に覆われた町に足を踏み込むと石畳と靴の間で砂が軋んだ。

 いつもなら宿屋に向かうところだが今の私には気になることがあり高台を探す。砂漠を一望できる高台を。

 探した結果、町の二か所にある見張り台を見つけた。片方は新しく衛兵のような奴らが見張りをしていたが片方は古く使われていないようだった。

 私は人気の無い古い見張り台に向かうことにした。見張り台を登るための鉄の梯子は錆びて砂に一部削り取られていた。

 心もとない足場に体を預けて上に登ることにした。

 細く、高く、風にさらされ続けるこの見張り台はひどく頼りなく思えた。

 上り始めるとすぐに民家の作る影を抜け、横から夕陽が差し始めた。もう一つの見張り台から鐘の音が聞こえた。ここの時間管理は鐘の音で行われているようだ。

 見張り台に登り切ると町と砂漠が一望できた。

 土づくりの街並み、どこまでも続く砂の地平線、その奥にかすみながら夕日を浴びる傾いた宇宙船、そして砂漠にぽっかり空いたアリジゴクのような穴。

 円錐を逆さにしたような穴は砂を引き込んでいた。

 私がこの町に来る前に見た時よりも大きくなっている穴はこの町をも飲み込もうとしていた。

 どうやら時間に厳しいこの町は砂時計に従い、ガラスの向こうに消えるらしい。

 砂に流され町は徐々に傾いていた。

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