表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/22

いやいや、あからさまに怪しいんだが

 医者の言っていた通り、帝都は熱狂の渦に包まれていた。


 行き交う人々の表情が、とにかく明るい。

俺の記憶にある帝都サクセンドリアは、みんな魔族の脅威に怯えていて、街全体もどこか暗かったのに……


 医者の言っていたことは本当なんだろう。


 ――魔王は倒された。勇者ベイリフと……聖女クロエによって。


「…………」


 本当は喜ばしいことのはずだ。

 長年人類を苦しめてきた魔王が死んだわけだし、これにて世界は平和になった。魔族の侵攻に恐怖する必要もないわけだし、喜ばしいことのはず。


 なのに。


 なのに、この虚しさは、いったいなんなんだ……


 途中、ビラ配りをしている青年に出くわした。それの内容によれば、間もなく帝都の中央広場にて婚姻式を挙げるとのこと。


 ……なんともまあ、贅沢な話だ。

 どこかの会場を借りるのではなく、帝都全体を使って式を開催しようとしているのだから。


 魔王を倒した英雄たちの婚姻式だから、それも当然かもしれないが。


「クロエ……」


 皮肉な話だ。

 転移者に出会う前、俺はこの場所でクロエに抱き着かれていた。


 当時は、それが「よくある日常の一部」に感じられていたが……


 いまとなっては、その思い出が俺の胸を鷲掴わしづかみにする。


 ――いや、まだわからない。

 この目でベイリフとクロエを見なければ、まだ信じられない。


 自分でも哀れだとわかっているが、そう思わずにはいられなかった。まだ痛みの残る身体に鞭打って、ただひたすらに走り続ける。


 やがて中央広場に出た。


 当然ながら他の場所より人が多く、いたるところに売店がある。

すさまじい人込みだが、よくよく見れば、パーテーションの向こう側に赤い絨毯が敷き詰められている。あれぞ、まさしくバージンロード……その先の壇で契りを交わすのだろう。


「きゃー! きゃー!」


「ベイリフ様、クロエ様―!」


帝都の住民はすっかりベイリフたちに心酔しきっているようで、彼を賞賛するプラカードを持っていたり、花束を用意していたり……まさに混沌状態だ。


 正直、あいつのどこに尊敬する要素があるのかはわからないが――

 前の世界でも《剣聖》と呼ばれていたようだしな。

 人心の掌握には長けているのかもしれない。


 そして――待つこと数分。


「さあ皆様お待たせしました! 魔王を倒した英雄ベイリフ・ドーラ様と、同じく魔王を倒した聖女クロエ・ドーラ様……。お二方がご登場されますっ‼」


「「わあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」」


 瞬間、人々の興奮がピークに達した。


「ベイリフ様ぁーー! 素敵ぃー!」

「こっちを向いてー!」


 そんな大歓声とともに姿を現したのは、転移者たるベイリフ・ドーラ。


 そして彼に腕を絡める形で、クロエが登場する。


「…………は、ははは……」


 なんて哀れな結末だ。

 信じたくなくて、この目で確かめたくて、無我夢中でここまでやってきたけれど。


 話は本当だった。

 ベイリフとクロエは、本当に……


 と。


「ん……?」


 なんだろう。

 目を凝らしてみると、ベイリフの周囲からドス黒いオーラが感じられる。


あの禍々しい圧力……どこか魔王にも似ているが……


 気のせいだろうか?

 あんなにあからさまなオーラなのに、住民は誰も気づいていない。


 そしてとうとう、二人は壇の手前にまで到着した。


「こほん。新郎ベイリフ殿は……」


 神父の長い問いかけが終わると、ベイリフがクロエの両肩を掴む。そして口づけをするその直前、ベイリフの「ドス黒いオーラ」がまた巨大化する。


「…………っ」


 その瞬間、俺はいてもたってもいられなくなった。

 ベイリフの黒いオーラが、クロエをも飲み込もうとしているように見えたから。


「ま、待て!」


 だから俺はありったけの声を響かせて、二人の口づけを止めた。



ここまでお読みくださり、ありがとうございました!


最初はストレス展開が多めですが、5話あたりから巻き返していきますので、どうかお付き合いいただけますと嬉しいです!


チートコードとはまた違った系統の作品ですが、こういう物語もぜひ楽しんでいただけたらと。


ブクマ・または広告下の【☆☆☆☆☆】をクリックorタップして評価していただけますと更新のモチベーションになりますので、ぜひともよろしくお願いします!


(ノシ 'ω')ノシ バンバン!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ