どこが清楚なんだか
「おい、そこのおまえ」
どう考えても友好的ではない声。
聞こえてないフリでもしてやろうかと思ったが、
「おい、無視してるんじゃないぞ。偽勇者」
「…………」
いかにも裕福そうな出で立ちをした男が目の前に回り込んできたため、無視を決め込むわけにはいかなくなった。
金色のショートヘアに、真っ白なスーツ。
胸ポケットには赤い薔薇が差し込んでおり、なんとも痛々しい――訂正、やんごとなき身分の男であることが想像される。
「……なんだよ」
「なんだよ、じゃない。僕はヴァハーム・レイド。名門校たるサクセンドリア士官学校、その超難関試験に、特待生入学した者さ!」
ヴァハーム・レイド……
そうか、たしかに同じ名前が俺の隣にあったな。
しかも《レイド家》となると、かなりの名門貴族にあたる。おそらくは侯爵家……そこいらの貴族よりもよっぽど身分の高い家の生まれだ。
その侯爵家の倅が、特待生として合格を果たした……
まあ、思いあがるのもわからなくはないが。
「よっ! さすがはヴァハーム様!」
「素敵でございます!!」
実際にも、取り巻きと思われる男たちが、後ろでヴァハームに賞賛の声を送っている。
こいつらは中級の貴族あたりだろうな。たぶん。
「……これはこれはレイド様。俺になんの用ですか?」
とりあえず敬語を使った俺に満足いったのか、ヴァハームはにやりと笑って言った。
「決まってるだろう! そこにいる、可憐な女の子のことだ!」
「……は? 可憐……?」
なんだ。
そんな女、どこにいる。
あたりをキョロキョロ見渡していると、レナスがドヤ顔で自分の顔を指さしてきていた。
げっ、嘘だろこいつ。
「なんだおまえ、レナスが好きなのか?」
「と、当然だろう! こんな可憐で可愛い少女など……そうそう、お目にかかれるものではない!」
「……いやいや、駄目だ。やめておけ。後悔するぞ」
なにせこいつは清楚系ビッチ。
こんなのと付き合ったらどこまで搾取されるかわかったもんじゃないぞ。
……という意味で「やめておけ、後悔するぞ」と言ったのだが、ヴァハームには別の意味で伝わってしまったらしい。
「貴様……僕を脅すとは良い度胸をしているな……!」
「は? いやいや……」
「ふん、まあいい。おまえは最下位クラスで僕は最高クラス。レナスちゃんもきっと、いずれは僕になびくはずさ」
「…………」
俺が呆けていると、ヴァハームはレナスにウィンクをして言った。
「そういうわけさ、レナスちゃん。こんな最底辺の男は放っておいて――いつか僕と、ロマンティックな夜景でも見に行こう」
「よっ、さすがはレイド様!」
「男前!」
これのどこか男前なのか、やたらめったらヴァハームを持ち上げる取り巻きたち。
……こりゃ、参ったな。
特待生になってしまったうえに、天下の大貴族様に目をつけられてしまうとは。
この学生生活……できるだけ目立たないようにしないとな。
ただでさえ悪目立ちしてしまっているので、これ以上、余計なことをするわけにはいかない。
――と。
「合格者はこちらに! 学校案内を行います!」
教官の声が一帯に響き渡った。
昨日の今日でもう学校案内か。
早いな。
そのスピードに舌を巻きながら、俺はレナスとともに教官のもとへ歩みだすのだった。
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