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14/22

仮面を被った者同士

こちらコミックグラスト様にて、6/10にコミカライズがはじまります!

その記念として、これより更新頻度をあげていきます!

「ここは……」


「そう♡ ここが私たちの愛の巣ってとこね~」


 下級魔族を倒してから数日後。

 俺はレナスの《転移魔法》に連れられて、まったく見知らぬ土地を訪れていた。


 ――もちろん、依頼主さんもタダであなたに頼むつもりはないそうよ。とりあえず、一生分遊んで暮らせるお金と、ミューラ地方の一部領地をあなたにあげるって――


 そう。

 この場所は《俺のもの》になる領地であり――《R》としての活動拠点にもなる場所だった。


「ふふ。てっきり荒廃した土地でも押し付けられると思っていたが……悪くないではないか」


 地平線まで広がっている草原に、眩しくなるほどの青い空。

 近くには森や川もあるようだし、のんびり過ごすには悪くない場所だろう。


「この地に人は住んでいるのか? 居住地になってもおかしくない場所ではあるが」


「ううん、いないみたい~。ここでひっそり過ごすもよし、人を招いて賑やかにするもよし……。完全にあなたの自由ってことね」


「ふむ……」


 一生分遊んで暮らせる金と、そしてこんなにも豊かな土地。


 随分な大盤振る舞いだよな。


 改めてレナスの言う“依頼主”とやらの正体が気になるが……まあ、いったんは後回しにしていいだろう。レナス自身、“依頼主”のことはよくわかっていないみたいだしな。


「とにもかくにも、《月詠の黒影》の拠点はここ♡ 決定ね♡」


「ふむ。まあ……いいだろう」


 活動の拠点としては悪くない。

 当然のことながら、帝都では目立った行動はできないからな。ベイリフが魔族の手にわたっている以上、軽率な動きが命取りになる可能性さえある。


 それにしても。


「レナス。どうしておまえは……さっきから俺にくっついているのだ?」


「え?」


 彼女は、さっきからずっと……俺の傍を離れないのだ。


 いや。《離れない》というレベルではない。

 腕を絡ませて、ときにはあざとく自分の身体を押し付けて……過剰なくらいに男心を刺激してこようとするのだ。現に同級生・・・のバルフだって、レナスにメロメロだったしな。


「そんなの決まってるじゃない♡ 男の人は、みんなこういうのが好きでしょう?」


「そうか。おまえは俺を落とそうとしているわけだな」


「正解♡ そのほうが色々と活動しやすそうだしね~」


「クク、違いあるまい」


 ああ……そうだ。


 良い人ぶる必要なんてない。

 人はみな、どこかしら腹黒い一面を持ち合わせている。


 他人の活躍に賛辞を送っている隣人が、心の底では嫉妬の炎を燃やし。


 昨日まで親しくしていた恋人でさえ、より素敵な異性に出会った途端、心変わりが始まっていく。


 だったら……最初から本音で話していたほうが、気が楽というもの。


「その意味では、俺たちは似ているのかもしれないな」


「へ?」


「自分の本性を晒し出すのではなく、仮面を被って、相手にとって好ましい自分を演じる。俺たちの本音は……どこにあるのだろうな」


「あ…………」


 その瞬間。

 俺を掴むレナスの手が……一瞬だけ、離れた気がした。


 それだけではない。

 妙に大人びている彼女ではあったが、いまこのときだけは――12歳相応の戸惑った顔を浮かべていたのだ。


「ん? どうした」


「ううん、なんでもないの♡」

 そうして再び、俺に腕を絡ませる。

「《R》ってば、とってもかっこいいこと言うのね♡ 惚れ惚れしちゃうわ~」


「…………」


 これは、仮面を被った者同士の。


「……ふ、お褒めにあずかり光栄だ」


 世界を救う物語――になるのかもしれない。



続きはまた近々、投稿していきます!

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― 新着の感想 ―
[一言] マァ、いつもの事かと。(´д`)(書籍売上にもBAN・Aされんでしょう。)
[一言] BANして終わりな件。(´д`)(いわゆる書き逃げ。)
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