第四話 ステータス
「さて、グレースさん。いろいろ説明を聞きたいんだけど・・・その前にやってほしいことがある」
「何ですか?」
「ステータスの鑑定をして欲しい」
「さっきやったのは何ですか?」
「さっきのはレベル鑑定。で、今からやってもらうのはステータス鑑定だ。」
何で一緒にやらないのか。
「ちなみにグレースさん以外には、後で鑑定してもらうよ。何せ、さっきのレベル鑑定であれだけの記録を出しているんだ。ステータス鑑定を全生徒の前でやったりでもしたら、どんなことになるか。」
疲れた様にため息を吐かれる。
何かすみません。私のせいで。
「という事だから、よろしくね。やり方はさっきと同じだから。」
渡された鑑定石はさっきと色違いの青色だ。
手をかざすとブォンと音がなって目の前に数字が並んでいく。
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グレース・フローレス
HP 7/7 MP ∞
攻撃力 999 防御力 999
魔法攻撃力 999 魔法回復力 999
その他 999
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どうやら私の魔法が暴発したのは私の集中力のせいだけではないようだ。
だって999だもん。そりゃあ仕方無いよね。
ていうかさ、HP7って何!?
ラッキーセブンだって?何がラッキーだよ!?完全にアンラッキーだわ!
アッ!そういえば前机の角に小指ぶつけて3日間寝込んだわ。
何かの風邪かと思ったけどこれで納得だわ。
その他とかよくわからん表記もあるし。
これ私強いのか弱いのかよく分からんな。
学園長を見ると、驚くっていうのを体全体で表してた。
まあそうなるよね。
実はこの数値の原因を私は知っている。
これはゲームの続編で分かることなのだが、実は私の母エラは、エルフの国の女王なのである。ちなみに父イーサンは今の王様の弟だ。
何で王族なのに貧乏暮らしをしているのかというと、私の両親のせいである。
何でも私をブスだとかアホだとか、悪口を言った子供がいて、もちろん自他ともに認める親バカが黙っているはずがない。
その悪口を言った子供を、
「うちのグレースは世界一よ!私の天使の悪口をいうのは許さない!」
と言い一発、
「うちのグレースをバカにするやつは例え兄上の子供だろうと許さない!」
と言いもう一発。
計二発の大人の本気のパンチをまだ4歳の、それも王太子に食らわせたのだ。
例え身内だったとしても許されることではない。
本来なら即処刑台行きなのだが一応王族だという事で、身分を剥奪し、辺境に追いやるという形で事は収まった。
これがグレースが貧乏だった理由だ。
当の本人は知ることもなく処刑されちゃったけどね。
「グレースさん。この数値・・・心当たりはありますか?」
おっと?どう答えるべきだ?本当の事を言ったら面倒なことになりそう。
そういえば、お母様に「困ったときは私の名前を出しなさい。大抵のことはどうにかなるから」
って言われてたんだった。
・・・絶対何かやらかしたよね?間違いなく問題児だったよね?
まあ何かあったら全部お母様の方にいくだけだし。
私関係ないし。
「多分母が原因だと思います。」
「お母さまの名前は?」
「エラです」
答えた瞬間学園長は納得したような顔をした。
まさか名前出すだけで納得されるなんて。ほんとに何やったの?
学校の番長とかやってたのかな?
あ、番長じゃなくて女王か。
「エラさんのお子さんか。だからか!なるほど!そういう事か!」
リズムよく納得した学園長。
まさか親子そろって問題児認定?
でも私迷惑かけることなんて何も・・・
してますね。グラウンドを中庭ごと消し去ったり教師長の髪の毛吹き飛ばしたり魔法適正999とかいう数値出したり・・・
あれ?もしかして私めっちゃ迷惑かけてないか?
「エラさんはね、史上初のレベル99という記録を出した人なんだよ。グレースさんの魔法のステータスと同じだったね。たしか999。もう驚くことはないんじゃないかと思っていたけどそれを遥かに上回ってきたからね。やっぱり、親子そろって天才なのかもね。」
「問題とか、起こしていないですよね?」
「何を言う!あれほど良い生徒はこれまで見たことがないよ!生徒の模範にしたくらいだ!」
良い生徒?生徒の模範?
誰かと間違えてるんじゃ?
だって私のお母様って言ったら・・・
すぐ近所の人に私の自慢話するし、お父様とのけんかは1日に3回はするし、その度に呪文を叫びながら家破壊するし。
自慢できるところと言えば顔と魔力の高さぐらいだ。
家帰ったら聞いてみよう。
「ふう。すまない。取り乱してしまった。そうだ。学園のいろんなところにエラさんの銅像とかその他色々飾ってあるから見ておくといいよ。」
イヤイヤイヤイヤ。そんなの黒歴史確定じゃん。自分の親の銅像とか飾られて嬉しがる人って中々いないよ?
「とりあえず、君のステータスは公開しないようにしよう。まだ入学して一日目だ。公開すると余計な混乱を招く可能性がある。君を狙う輩が出てくるかもしれない。そうならないようにこちらで対策はしておこう。イラっとしても、間違えても魔法をブッパとかはやめてね」
帰ってゆっくり休みなさい。という学園長の言葉で退室し、部屋に向かって走る。ドレスの裾を持ち上げ、全力で走る。ひたすら走る。
部屋に着くと真っ先にベッドに飛び込む。
家では親の要望で大きいベッドに三人で並んで寝ていたけど、学園に親はいないので今日からは一人で寝られる。
かなり嬉しい。
改めて、面倒臭いことになったなと思う。
これで攻略対象達に目を付けられないといいなと思うけど、多分無理だろうね。
あー頭痛い。気を付けることが多すぎる。
主人公(仮)の動き、攻略対象と会わないようにすること、机の角に足をぶつけないこと・・・
ストレスでこの部屋なくなっちゃうかも
頼むからこれ以上悩み事を増やさないで・・・!