第二話 魔法学園へ
鳥の鳴き声で目が覚め、清々しい朝を迎え・・・
られるわけない
何て言ったって今日は魔法学園の入学式。
我が母上と父上は今日も安定して親バカをやっている。
どうやら私に関する、自分たちに都合の悪い記憶はリセットされるようだ。
「グレースゥゥゥゥゥ!!!行かないでぇぇぇぇぇ!!!」
「私たちの可愛い天使がぁぁぁぁぁ!!!!!悪魔に連れていかれてしまうぅぅぅぅぅ!!!」
「いや。学園まで送ってくれる方だから。悪魔じゃないから。」
悪魔ってのはちょっと、いや、かなり失礼じゃないか?
「そろそろ行かないと遅刻します。」
「ぐすっ。グレース。手紙は毎日必ず書いてね。」
「気になる殿方がいたら報告するんだぞ。私たちが証拠を残さずに消してあげるから。」
そんな方できませんよ。だって私は悪役令嬢だから。
「はいはい分かりました。じゃあ行ってきますね。」
「「行ってらっしゃいぃぃぃ」」
顔が涙と鼻水でやばいことになってるんだけど。
お隣さん。両親のこと、頼みましたよ。
「いい親御さんですね」
「そうですか?まあでも、愛されないよりはましですかね。」
こうして私は家を出て、魔法学園へ出発した。
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???side
「ここが魔法学園・・・!」
一人の少女は嬉しそうに笑った。
「皆から好かれて、魔王を倒して、この国の女王になるのは私よ!」
そう呟くと、少女は意気揚々に魔法学園の門をくぐった。
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途中に休憩を挟みながら馬車に揺られること2時間。
ついに魔法学園の大きな門が見えてきた。
「わあ。すごい。」
流石は国で一番大きい学園なだけあって、門がとてつもなく大きい。
王族の馬車でも余裕で通れそうだ。
「ここまでですね。送ってくださりありがとうございましたサムさん。」
「いえいえこちらこそ。グレースさんとのお話楽しかったですよ。」
ここまで送ってくれたサムさんにお礼を言う。
道中にめっちゃ喋って、お互いに名前で呼び合うほどの仲になった。
私は友達が少なかった為、こうして名前を呼び合えるのはとても嬉しい。
友達がいなかったのは両親のせいだけど。
「では、お気をつけて。また夏季休暇になりましたらよろしくお願いします。」
「はい。待ってますよ。学園でのお話待ってますね。」
別れを惜しみつつ、サムさんと別れた。
そして学園の校舎に目を向ける。
一歩を踏み出したその瞬間___
ズザァ
「いったあ」
目の前に女子が一人滑り込んできた
と言うかこけた
「大丈夫ですか?」
「酷いです!急に押すなんて!」
あれ?私の目には自分でこけた様に見えたんだけど。
しかも私の言葉はガン無視ですか。
?・・・この顔何か見覚えが・・・?
「何でこんな事するんですか?」
「いや。まだ出会って30秒なんですが。」
周りがざわざわしてきた。面倒くさいな。
「はあ。お名前とクラスを教えてください。後ほど伺います。」
「私の名前はエマです。クラスはAです。」
まさかヒロイン!?
あの明るくて可愛くて優しくて一生懸命で、どう頑張ってもいいところしか出てこないあの!?
おかしいな。私の記憶ではこんなイベントなかったはずなんだけど・・・
「私はグレース・フローレスです。クラスは同じですね。はあ。」
ため息しか出ない。早速面倒ごとに巻き込まれたし。
「ひっ!」
「どうかされましたか?」
「睨まないでください・・・。怖いです・・・。」
本当にヒロイン?
噓泣き(多分)を始めるヒロイン(仮)。
というか睨んでませんけど。
「ではもう行きますね。」
「え!?ちょっと待・・・」
何か言っているが無視だ無視。
頼むから面倒ごとに巻き込まないで。
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「では今から能力の測定をします。呼ばれたらこちらの鑑定石に手をかざしてください。」
そうそう。これが一番最初のイベントで、ヒロインが貴重な光属性の魔力を持つことが分かって、攻略対象達に話しかけられる。ここで相手を決定して、親密度を上げていくんだよね。
「グレース・フローレスさん!」
「はい。」
いよいよ私の番だ。レベル上げ結構頑張ったからなあ。
もしかしてカンストしてたりして。
この世界では、レベルは鑑定石でしか見ることができない。
しかもこの鑑定石、もの凄く高いのだ。
私の家は貧乏なので、一度も自分のレベルを確認することができていなかった。
今日をもの凄く楽しみにしていたのは言うまでもない。
結果は・・・
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名前 :グレース・フローレス
レベル :1
適正属性:全て レベル999
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なんとレベル1だった。
え!?あんだけレベル上げ頑張ったのにレベル1!?でも適性のレベルはマックスって・・・
どうなってるのか説明を求めたいけど先生方もそれどころじゃなさそうだ。
その後もう一度測ったけど、結果は同じだった。
後で校長室に来いって言われたけど。
ちなみに、ヒロインちゃん(仮)のステータスはこうだった。
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名前 :エマ
レベル :1
適正属性:光 レベル1
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うん。これはゲームの通り。ゲームのグレースは確か火と水の属性が適正だったはず。
どうしてこうなったのかは分からないけど、これだけは確かだ。
家に帰りたい
絶対先生方に聞かれるじゃん。何か面倒くさそうじゃん。
以前、一度だけレベル99の人が入学してきたことがあるって本に書いてあったんだけど、適正レベルが999の人はいなかった。
しかもこの後魔法の試験みたいなのがあって、これでクラスが決まる。
このまま行くと魔王の討伐に行けとか言われるかもしれない。
それだけはごめんだ。私は別に魔王を倒しにこの学園に来たわけじゃない。
よし。魔法の試験では手を抜こう。そして適正レベルが高いだけで、別に私自身は強くないということを見せればいい。
うん。そうしよう。我ながらいいアイデアだ。
しかし私は知らなかった。この考えがどれだけ甘かったかということを。