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第一話



ここは前世で流行った乙女ゲーム『七人の勇者とヒロイン』の世界。(略してナナヒロ)


ヒロインのエマは庶民の出だが、魔法の才能が認められ魔法学園に通うこととなる。

ここまでは大体の乙女ゲームと同じだが、何より違うのは、悪役令嬢が貧乏なことである。

大抵の悪役令嬢は、庶民の出であるヒロインをいじめるのに家の権力を使ったりするのだが、この悪役令嬢の家は貴族とは名ばかりの庶民である。



そして私はグレース・フローレス。貧乏悪役令嬢である。



私がグレースになったと気づいたのは、3歳の誕生日だった。

乙女ゲームの中のグレースが死ぬ瞬間まで大事にしていたぬいぐるみを、両親にもらった時に思い出した。


このぬいぐるみは悪役令嬢の持ち物ではあったが、可愛いと評判で実際に売りに出されるまでそう時間はかからなかった。

私も可愛いと思った一人であり、販売日当日に学校を休んで買いに行ったほど好きだった。

抱きしめた時の感覚は、死んで尚覚えているほどである。


ぬいぐるみを抱きしめた瞬間、前世の記憶が蘇ってきた。

異常な量の情報の処理に頭が追い付くはずもなく、激しい頭痛に襲われながら意識を失った。

次に目が覚めたのはその日の夜で、一番最初に目に入ってきた両親の心配そうな顔を見て、思わず安心して涙が出てしまった。



しばらくして私は泣き疲れ、両親に抱かれるようにして眠った。



_____



そして時は流れ、記憶を思い出してから12年が過ぎた。


前世でナナヒロが流行った理由は悪役令嬢の他に、RPGの要素が入っていたことだ。


自身のレベルを上げ、攻略対象との親密度も上げる。

そして最終的に一番仲が良かった攻略対象と一緒に魔王を倒し、攻略対象は英雄として、ヒロインは聖女として、幸せに暮らしていく・・・というのが大体の内容だ。


レベルを上げれば上げるほど攻略対象との仲が深まるので、プレイヤーは必死になってレベルを上げる。

もちろん私もその一人だった。

そしてレベルが上がるにつれて使える呪文も派手になっていき、レベルをカンストさせれば、魔王城一つ位は余裕で跡形もなく消すことができる。


ゲームの画面越しでも凄い迫力だったので、実際にできるとなるとやらない人はいないだろう。

なので私はこの12年間レベル上げを頑張った。

今なら魔王を倒すとまではいかなくても、お城に帰すくらいはできるだろう。

ゲームの知識だけではここまでが限界だったので、魔法学園で本格的に習うのがとても楽しみだ。


ちなみに記憶を思い出すきっかけとなったぬいぐるみには『ミラ』と名付けた。

意味は『可愛い』など。


「グレース!明日は早いんだから早く寝ましょう!」


「そうだぞ!夜更かしは体に良くない!」


「お父様。お母様。」


私の父はラカス・フローレス。母はエラ・フローレス。


二人は、このあたりの町では有名なおしどり夫婦でいつも仲がいい。

そして二人とも見た目が良い。

ゲームの中のグレースはヒロインと並んでいても問題ない美人ほどだった。

親が美男美女なのに生まれた子供がブスな訳がない。

これもナナヒロが流行った理由の一つだ。

しかしこの二人、見た目はクール系なのに、口を開けばグレースが可愛いだの天使だの、私の惚気話をずっとしている。

結論から言うと、親バカなのである。


「明日ついに可愛いグレースが学園に入学してしまうのね」


「寂しくなるなあ。私たちの太陽のような存在なのに。」


「やっぱり今からでも遅くないわ。入学をやめましょう。そしていつまでも私たちと暮らすのよ。」


「そうだな!そうしよう!」


「しません!昨日も一昨日も同じ話したじゃない!私は魔法学園に行って魔法を学ぶの!」


「「ええ~」」


「えーじゃない!」


ここまで親バカが酷いと疲れる。


「怒ってるグレースも可愛いわね!」


「そうだな!」


もう何を言っても無駄なので諦める。

諦めることも大事なのだ。


「じゃあ、おやすみなさい。お父様。お母様。」


ずっと惚気ている両親をおいていき早々にベッドに入る。

明日は待ちに待った魔法学園の入学式だ。

私は期待とほんの少しの不安を胸に、私は眠りについた。







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