第6話『彼女の困惑・お茶目な昼』
ファミレスにつくと、順番待ちも無く、席に案内された。
「それでは、ご注文が決まりましたら、手元にあるボタンでお呼びください」
ウェイトレスさんはそう言い残してから、別の席へと向かって行った。
それをのんびりと見送ってから、向かい側の席に座った彼女は口を開いた。
「とりあえずドリンクバーで良いですか? 何か食べるなら遠慮無く注文してください」
「……いえ。ドリンクバーだけで大丈夫です」
ちょっと呆気に取られてしまった。
よく考えてみれば、この状況ってだいぶ不自然じゃないだろうか。
そもそも、彼女は【カーネーション】を売っている『罪人』で、私もそれを買おうとしている『罪人』なのだ。
そんな私たちがこんなところでのんきにお喋りというのは、どう控えめに見てもおかしいと思う。
ふと、彼女が声を殺して笑っているのに気付いた。
「どうかしました?」
「……あ、すみません。あまりに不思議そうにしているので、なんだかおかしくて」
どうやら顔に出ていたみたいだ。
恥ずかしい……。
なんだかさっきから度肝を抜かれてばっかりだったから油断していたのかもしれない。
「すみません。悪ふざけが過ぎましたね。それでは、そろそろ本題に入りましょうか」
彼女はさっきまでの笑みを消して、真剣な顔で私の方を見つめた。
それを見て、私も急いで思考を切り替える。
「……はい。お願いします」
「まず、【カーネーション】について何を――」
「ご注文はお決まりになりましたでしょうか?」
彼女が何かを言いかけたのを、さっきのウェイトレスさんが遮った。
「え、っと、ドリンクバーを二つお願いします」
言葉を遮られて少し止まった後、彼女はそう言って注文を済ませる。
それから、ウェイトレスさんが去って行くのを見送ると、再び私に真剣な顔を向ける。
「【カーネーション】について、あなたはどこまで知っていますか?」
そう、問い掛けた。