第5話『彼女の出会い・気付かぬ昼』
「……あなたが、メイさん、ですか?」
腰掛けていたベンチから立ち上がり、声をかけてきた女の人に問い掛ける。
イズミが偽名ではないから、というのももちろんあるが、それ以上に意外だったからだ。
こんなに若いとは、思わなかった。
確かに、電話の声で若いだろうことには気付いていたが、せいぜいが二十代半ばくらいだと思っていた。
そんな私の気持ちに気付いたのかは分からないけど、彼女は私の質問に頷く。
「そう。私がメイよ。初めまして、イズミさん」
「え? あ、はい。初めまして、メイさん」
自己紹介されるとは思わなかったため、少し呆気に取られて反応が遅れてしまった。
メイさんは慌てた私の様子を見て、少しだけ笑っていた。
そして、真剣な顔付きに変わって言った。
「さて。それでは、説明しますね。【カーネーション】のことについて。……その前にこんなところで立ち話もなんですし、どこかへ移動しましょうか。その制服も、目立っちゃってますしね」
ふと周りを見渡した彼女は、少し苦笑を浮かべながらそう言った。
周りを見渡してみると、少し人気が増えていて、私たちに視線を向けていた。
子供連れのお母さん達だろうか。
その時になってようやく、自分が制服のままだったことを思い出していた。
そりゃ、目立つはずだ。
こんな昼間に制服姿の女子高生が公園にいたのだから。
「す、すみません」
「いえ。……そうですね。制服でも、ファミレスとかならそこまでは怪しまれないでしょうし、そこにしましょうか」
「あ、はい。お願いします」
私たちはそう言いながらその場を後にして、近くにあるファミレスを目指した。