表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【カーネーション】  作者: 神崎慧
第二部
16/21

第二部プロローグ


 光。

 雨が降っていて薄暗い中、ただそれだけが印象的だった。

 迫ってくる車のヘッドライトが、眩しくて、思わず目を閉じていた。

 耳に響くのは、クラクションと、ブレーキの音。

 そして、誰のモノかも分からない、悲鳴。

 場違いにも、うるさいと感じてしまった。

 それから、すぐに衝撃を感じた。

 だけどそれは、思っていた方向とは違っていて。

 思っていたよりも、ずっと軽いものだった。

 ほとんど痛みを感じない体を不思議に思いながら目を開けると、道路の脇の方にいて、中心の方に人が倒れていた。

 そのすぐ傍には、さっきまで私に迫っていたはずの車があり、そのライトの照らす先にある水溜まりが、赤く染まっていた。

 たくさんのクラクションが鳴り響く中、呆然と、ほとんど無意識に体を起こしている自分に気がついた。

 擦り傷でも負ったのか、痛みを感じながら、それでもその倒れている人に近づく。

 なんだか、見覚えがある気がして。

 どうしてか、知っている人だと、思ったから。

 そんなわけ、ないのに。

 あるはずが、ないのに。

 それなのに、何故か、そう感じてしまったから。

 近づくにつれて、影になっていて見えなかった顔が、見えていくのがなんだか印象的だった。

 少し、茶色く見えるその髪の色は、私の知っている彼に似ていた。

 その服も、なんだか見覚えがある気がする。

 いつか彼が同じ服装でいたように記憶している。

 その顔も、双子なんじゃないかと、そう思うほどにそっくりだった。

 そう。

 それはあまりにも彼に――最近付き合いはじめた彼に、とてもよく、似ていた。

「――ぃやだ……いやだあぁぁぁぁあぁぁっ」

 私の口が、叫びをあげた。

 認めたくない頭が、現実を否定するように動いていたにも関わらず。

 それでも、体は正直に、現実を見つめているように。

 心が拒んでいたにも関わらず、この人が、彼本人だということを、理解していた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ