人は同類の人間を集める習性があるようです
会場内は凝らした肉料理やこれでもかと甘くしたようなお菓子の数々が偏った形で並べられている。そして極めつけは目が痛くなるような内装である。この場に合うように多彩な色の流行を身に付けた貴婦人、紳士であふれかえる。ここが広い室内であることを忘れてしまうほどだ。片手にいかにも高価そうなワインの入ったグラスを持ち、使用人の一人として偽っている。収集活動をこなして来賓の数々に目を光らせる。もちろん、今夜の獲物の情報把握にも勤しむ。そんな中でいかにも身なりがごつく、顔の主張が激しい人が自身の背後に近づいていることに察知するが、あえて知らぬふりをしておく。厄介ごとは御免であるからだ。しかし、その工程をすべて無駄にする羽目になる。
「おい、そこの男、お前だ。この上着を預かっていろ。言っとくが、それは最高級の生地でできたオーダーメードだ。お前の給料では一生払えない代物だ。汚すなよ。」
この館の主と同様に人は同類を引き寄せる。この男も例外ではない。下位の者の挨拶をすることもなくパーティーの主催者に歩を進ませる。鮮明に会場の窓が彼を映し出す。その体型はここの主人と何ら変わらない。人とは人なりも体から滲み出しているのだ。
「いゃーご無沙汰ですね。お元気で何より。いつ来てもこの屋敷の作りは素晴らしい。」
まんざらでもないように話しているが、自身の価値観が他の人と違うことに気づかないのだろうか。そして、賛同するように首を振るお仲間達。普通に考えて、こんないかにも金をふんだんに使って痛々しさを表立っている趣は息苦しい。やはり、人間、欲があふれているとろくな思想に呑まれてしまうようだ。彼らの茶番を聞きたくないため早々会場の入り口から出る。もともと情報の真意の確認と新たな情報がないか調べるだけなのでここに用はない。だんだんと夜会に参加している貴族の声が遠のくに反して窓が震える音が響き渡る。水と風のコントラストは今日の私の心のようだ。主の絵画コレクションが私を笑うかの如く壁に配置されている。その配置している逆の壁の窓から先ほどの上着を投げ捨てた。数分後には泥にまみれるだろう。さて、荷物はなくなった。今晩の目的を果たそうか。最終確認は先ほど済ませた。話は変わるが、人間にはそれぞれの小さなこだわりがある。私の場合は面倒なことは先に片づけてしまうのが習慣である。だって面倒なことは先に済ますのがいい。ここの主の始末は後に回し、難関からやろうと目的の場を目指した。