二人の選択
思いつきの書きなぐりぃ
お前ワンシーン抜粋みたいなのしか書いてないななんて言われても思いついたのを衝動のままに書いてるからしょうがないのです。
「すまない……本当は分かっていたんだ
君が元の世界に帰るには祠の扉にこの鏡をはめ込んで扉を開けばいいと……。
君がこの世界を嫌っているのも、元の世界に必死に帰ろうとしているのも知った上で
どうしても言い出せなかった……。
私の我儘で、君の力を利用してこの世界の運命に抗おうとしてしまった……すまない。
後一度はこの鏡の力で世界を移動できる。 だから、君は帰るんだ、元の世界に。
何も君がこの世界で死ぬことはないんだ、だから」
「それならお前が死ぬことだってねぇだろ!?
その鏡を使って一緒に俺の居た世界にいきゃ良い、そうだろ?」
「いや、これも私の我儘だ。
私は一族の最後の生き残りとして此処で最後まで戦いたいんだ。 それが一族の意地なんだ」
「命あっての物種だとかご高説たれやがったテメェがそれを言うか、
ヤケッパチで死のうとした俺を強引に生かしたテメェが」
「アレは自棄だろう?
こっちは千年続く一族の意地であり生き様なんだ、生きた世界が違う私達で価値観はかなり違う。
だから分かってくれとは言わない。 だが、そういうやつも居たと覚えていてほしいんだ」
「巫山戯ろ、死んだらそれで全部終わりだろうが、
テメェが生きてりゃやり直しがきくかもしれねぇ、
最悪俺の居た世界で新しく一族を興せばいいだろ?」
「ああ、とても嬉しいお誘いだが、それじゃあ死んでいった仲間たちに顔向けが出来ない。
戦場から逃げた臆病者と謗られてしまうよ」
「それこそ逃げだろうが、何度でも言ってやる。 死んだらそれで終わりだ。
臆病者と謗られようが、笑われようが、
それでも生き抜いてその血を、意思を次に繋げるほうが重要じゃねぇのかよ」
「だから言っただろう? 価値観が違うんだ。
これ以上の押し問答で君まで巻き込むのは流石に心が痛む。
お願いだ、君だけはどうか生きて帰って欲しい」
「だけどよぉ」
「これ以上ここに居たら君を敵とみなして切る」
「……そうかよ、結局テメェの一番は俺じゃあなく一族かよクソッタレ……」
「やっと行ってくれたか……ああ、ごめんね?
本当は一緒に行きたかったさ、君と一緒に暮らしたかった。
だけど、私は一族の生き残りを率いて戦った将なんだ、
だから……ああ、君の手料理はどれも美味しかったなぁ。
向こうで一緒に飲んだちゅーはいとか言うお酒も美味しかったなぁ」
「ふふ……思い出すのが食物と飲物だなんて……なんとも私らしいな……」
「ああ、そうだ、一つ訂正、私にとって一番はやはり君なんだよ。
これでも必死に我慢したんだ……願わくば、君に数多の幸福があらんことを……」
ああ、瞼が重いなぁ……。
「なあ、旦那様、こんどは何を食べに行くんだい?」
「ああ、ちゅーはいというのは甘いくてたくさん飲めるよ」
「旦那様? 寝ちゃったのか? もっと一緒にお話しようよ」
「え? ……そうだね、明日もあるし今日はお開きにしようか、じゃあ、一緒に寝よっか旦那様!」
アイツを置いて俺は祠に向かい必死に走っていた。
ああ、クソッタレ、こんなクソみたいな世界さっさとおさらばしてぇのに、クソがクソがクソが。
なんだってこんなタイミングで帰り方を教えやがる。
なんだって最後の表情が悲しげな笑顔なんだよ。
クソが、何で俺はこんなにも弱ぇんだ。
何でアイツを強引にでも連れてこれなかった、なんでアイツのあの表情を見て気圧された。
『……おいしい……な、なあ、このぱんけーきというのはどうしてこんなにも甘くてふわふわなんだ?』
『夜這いかな? 一応君は私の旦那様だからいつでも大丈夫だぞ?』
『そんな簡単に死のうなんてダメだよ?
それは逃げでしか無い。
君は生きて元の世界とやらに帰るんだろ?
なら生きなきゃ、生きていればいつか変える方法だって見つかるかもしれないんだから』
『ああ……良かった……君が生きていてくれて……本当にありがとう……』
なんだって思い出すのがアイツとの記憶ばっかなんだよ。
ああ、クソがクソがクソが。
そうだよ、俺はアイツを愛したさ、
この偏屈なクソ野郎にあれだけ嬉しそうに接してきたのはアイツぐらいだ。
距離感を理解し、徐々に徐々に近づいてきたアイツを気づけば愛してたんだ。
多分アイツ以上の存在なんて俺には居ない。
良いのか? 良くないだろ。
今から戻って……だが……。
「アアアアアアアアアアアアアアアア
クソガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「ふぅ……オーケーこうなりゃ自棄だ。
無能なクズに大軍をどうこうできるわけはない。 多勢に無勢で勝機もない。
だが、愛した女一人強引に誘拐するぐらいなら出来るだろ。
あの頑固者の阿呆を無理やり助けるぐらい出来るさ。
アイツだって我儘で俺を生かそうとしたんだ。
ならアイツに嫌われようが俺だって我儘でアイツを誘拐する。
オーケーオーケー、そのためなら多少の荒事もやべぇあの薬もウェルカムだ!!!」
「ああ、少し幸せな夢を見てたみたいだね……ふふ、君と一緒に生きる道を夢に見るだなんて未練タラタラだね私も……。
全く、敵ももう少しゆっくりさせてくれないものかなぁ。 幸せな夢の邪魔をしたお返しだ、出来るだけ道連れにしてやるさ」
さて、私はどれだけの時間を戦っていたのだろうか? 近寄る敵を切って、刺して、武器がだめになれば、敵の武器を奪ってまた殺して……。
ああでも、そろそろ無理かな……これだけの人数に囲まれて、もう武器を握る力も殆ど無いや。
ああ、やっぱり彼についていっとけばよかったなぁ。
彼、ちゃんと元の世界に帰れたかなぁ。
そんなことをつい考えてしまったのがいけなかった。
気づいたときにはもう回避できない距離に敵の槍が迫っている。
ああ、遂に私も死んじゃうのか。
「愛してるよ……さようなら、旦那様」
最期に彼にはもう聞こえないだろうけど、それでもやっぱり言っておきたいんだ。
遂に彼に伝えられなかった『愛してる』を。
「ああ、俺も愛してるぜ、だからそのさよならはもう少し後にとっとけ」
あはは、最後の最期に彼の声を幻聴に聞くだなんて……ほんと未練タラタラだ。
ってえ? 槍が逸れた? それに煙? 何で???
「まだ無事だな石頭」
なんで!? なんで居るの!?
あ、だめだ、驚きすぎて声が出てない。
「テメェは責任を果たした。 後は黙って俺に抱えられてろ」
「どう……して」
「俺の我儘でお前を誘拐しに来た」
「へ?」
「でも、どうやって……」
「こんだけの人数に紛れりゃ意外とバレねぇ、良いから黙ってろ」
ぐっと私の体が持ち上げ、彼は移動を始める。
敵は必死に私達を探しているが視界が完全に真っ白で何も見えない。
いまお姫様抱っこされてる私だって正直周囲の状況がわからない
でも、彼には敵の位置やどこに逃げれば良いのかがわかっているみたいだ。
とりあえず、彼の邪魔をしないように黙っておこう。
振り落とされないように出来るだけの力で抱きついておくことも忘れずに……。
よし、煙幕作戦成功だ。
こちとら感度千倍の媚薬失敗作一号飲んでんだ、あらゆる感覚でテメェらの居場所はバッチリだぜ。
しかし、この石頭俺が抱きかかえたら思いっきり抱きつき返してきてんじゃねぇか。
やっべコイツの匂いをいつも以上に感じる。
あー薬の弊害だな。 すげぇ興奮してきた。
しかしまあ、ウルトラ濃煙幕君は失敗作だと思っていたが失敗作どうしで使うと最強だな。
煙吹いてから五秒で戦場全体を真っ白な煙まみれにするとかどんだけだよ。
それに媚薬失敗作一号の感度もやべぇ、今の俺なら戦場のすべてを移動しながら把握できる。
どんだけだよこれ。
まあ、その分傷みも跳ね上がるし、処理しきれない情報で普通なら気絶もんだわ。
今でこそアドレナリン全開でどうにかなってるが、早く逃げ切らなきゃやべぇ。
……逃げ切った。
扉に鏡をはめ込み元の世界へ。
石頭が何か言おうとしたが唇を唇で塞ぐマウストゥマウスで無理やり黙らせる。
……なんで一瞬驚いた後にそんな幸せそうなとろけた表情になってるんですかね。
扉を蹴り明け、中に飛び込むと、懐かしき俺の部屋に出ていた。
ゴロンと足元に鏡が転がるが、完全に割れちまってもう機能しそうにないな。
……あれ、ちょっと気まずいんだけど。
勢いで攫ってきちゃったけどコイツ自殺とか始めないよね?
いやだよそれ、せっかく生かして連れて帰ったのに舌噛んで死ぬとか辞めてよ?
なんかすごい呆けた表情してるけど、魂飛んでった?
ショックのあまり気絶中?
え、この状況どうなってんの怖い。
「なんで、責務を果たしたと思ったのかな?」
とか思ってたら急に真面目な顔になって、じっとまっすぐに俺を見つめて問う。
有無を言わさぬ迫力がそこには有る。
お姫様抱っこされた状態って絵面なのに。
「俺が来なきゃあの状況で、お前はアイツ等に殺されるか犯されるかして、最終的に結局死んでただろうし、完全にお前の表情も諦めてたからな。
だから一族最後の生き残りとしてのお前さんは死んだと俺は判断した」
「そっか……実際私も最期だなぁとは思っていたから……」
「まあ、強引な理屈だし、お前の誇りを傷つけたかもしれんが、
俺は俺がそうしたいと思い、お前同様に自身の我儘でお前の人生を捻じ曲げただけだ。
恨んでくれても構わんよ」
「……いや、もう良いんだ。 正直あの時すごい後悔してたし。
それに、門をくぐった時にさ、皆に、もう良いんだって言われたんだ」
「どういうこったそれ」
「私の願望がそういう幻覚を見せたのかもしれない。
だけど、たしかに皆が、もう自由に生きろって、どうせなら生きて幸せになれって」
「そうか」
「うん……だから……皆……見送ってくれて……」
「そうか」
涙声とぐしゃぐしゃの泣き顔でしどろもどろに話す彼女の言葉。
確かに、彼女自信の都合の良い妄想かもしれない。
だが、同時に彼女を慕い、彼女とともに戦った志願兵共ならそう言うだろう。
なにせ、最悪姫様を連れてお前が元の世界へ帰ってくれりゃ俺達だって救われる
と、決戦前の宴で俺に言ってきたような連中なんだから。
あの日、多くを俺と彼女は失った。
だが、なんとか互いの命と心と、馬鹿共との思い出ってのは残った。
あれだけの人命を消費した戦場を抜けて日常に戻ることに若干の後ろめたさを感じないでもないが、それでも俺は、俺達は幸福を謳歌しようと思う。
死んだ連中には弔いを、今と未来を生きる者に幸福を。
死者に引きずられて停滞し不幸にならなければならない道理はないのだから。
拙作……作?
まあ、若干とありきたりなものを描きました。
お楽しみいただけていれば幸いです。
まあ、こういうのって前段階でキャラクター達に愛着湧いてないと結構陳腐になっちゃいますね―。