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さようなら、寝台特急

「学園祭が終わったら、あとは・・・受験と、卒業かぁ」めぐは、なんとなく淋しい。

楽しかった学園生活も、終わりが近いんだ。



そんな風に思うと、ちょっとおセンチになってしまう。



「でも・・・みんなの進路は解ってるけど」

めぐは魔法使いだから。

Naomiは郵便局(かな?)。

れーみぃはハイウェイ・パトロール。

リサは、国鉄。


そんなふうに。解ってはいるけれど・・・。




図書館の椅子で、ふと物思うめぐ。


イメージしたのは、あの・・・・。首都の駅に

リサの受験票を取りに行った帰り。


国境の駅へ向かう、ブルー・トレイン。

その、最終列車の機関士として乗務するリサの姿。

国境の駅で、機関室から降り

花束を受け、涙するその姿だった。



彼女の祖父が心血を注いだ、機関士の仕事。

数限りなく乗務した、国境行きのブルー・トレイン。

列車番号、1。


その、最後の列車。



リサ自身は、祖父との些細な口論が切欠で

国鉄へは入らずに。

進路を迷っていた途中、祖父が天に召されてしまい・・・・。

それを気に病んでいて。


結局、市電の運転手になろうとしたのが、実は

この間までの、リサの人生だった。



めぐが、魔法で

おじいちゃんに会わせて。


「そんなことは気にしていない、安心しろ」と、おじいちゃんに言って貰えて。

リサは心のしこりが解けて。



その結果、未来が変わって。


今のリサは、国鉄へ就職できる事になったのだった。



それまでのことは、夢・・・になった。

ひとの夢って、そんなものかもしれない。




いい夢、そうでない夢。

もしかすると「もうひとつの人生」を、歩んでいた記憶かもしれない。








めぐは、そんな風に回想していると・・・・。

time-slip。


めぐ自身、解らない空間に飛ばされた。







気づくと、何か、大きな物に乗っている。

唸り。響き。


断続的に、何か、音が聞こえる。



「・・・なにかしら・・・。」めぐは、おそるおそる。

よく見ると、小窓の向こうにレールが流れていく。

すごいスピードだ。


足もとが揺れている。

耳元にある、機械、のようなものは

低く、唸りをあげていて。すこし不気味だ。

足もとでは、狼が吠えるような・・・金属的な音が続いていて。

よく聞くと、それは歯車が当たる音のようだった。


その音が止む。


空気が漏れるような音が聞こえて。


細い通路の向こうでは、女の子の声。「場内進行!速度、75!」



どこかで聞き覚えがある・・・・・。と、めぐは思い、通路の向こうを見ると・・・。



紺色の制服、制帽。白い手袋。男の人のように見えたが、細いシルエットは

右手が、ブレーキ・ハンドルを掴んでいて。

左手、白い指先、二本。 信号を確認していた。



運転台には、旧式なアナログ・メーターに、白熱灯が点っている。


速度計。空気圧計。電圧計。


そのパネルの中央に、なぜか使い込まれた懐中時計が銀色に光っている。

午前5時。硝子のような朝の時間。


風を劈くように、機関車は驀進していた。EF66-54、と、窓の上にプレートがある。




「・・・リサ・・・。」めぐは気づく。



白昼夢のような、ひととき。



図書館で、めぐは・・・・イメージしていた時空間に飛ばされていたのだった。



でも、ここがいつかもわからない。ので、めぐは気づかれないように

そっと、機関車の中からリサの後姿を見ていた。





「そっか・・・リサのこと考えてたから。飛んだんだ。」と、めぐは気づいた。



機関車は減速する。足元で、空気の漏れる音が、断続的に。


しゅー、しゅ。



メーター・パネルの空気圧計が、跳ね上がる。

ブレーキ・ハンドル、真鍮の、使い込まれたそれを、白い手袋が動かすに連れ。



前面の硝子窓は、中央で二分され、中央が細い柱で支えられている。


輝く光が前方に見える。駅の、プラットフォームのようだ。

左右に蛍光灯の灯り。


「前方、注意!」ゆっくり減速しながら、白い手袋は、確認する。



早朝だと言うのに、人の姿が多数。

中には、写真機や映写機を持っている人も。

三脚を構えて、映像を写している人も。

そのホームが、流れるように飛び去り・・・・・ホーム先端にある屋根から

逆三角の停止位置表示。


機関車は、それに向かって吸い込まれるように停止した。

ブレーキ・ハンドルをぐるりと回す、リサ。


笑みが零れた。



拍手。沢山の人々から。

列の前に、制帽に赤・金のラインの入った年配の方。数名。

若い女性が、花を沢山持っている。

花束を持っている人も。



「停止位置、よし!、05:00!定時到着!」と、リサの声が

狭い運転台に響いた。



運転台ドアを開けて、軽やかに降りたリサは、拍手に包まれ・・・・。

一杯の花束を貰った。


横断幕には「さようなら、寝台特急」と、ある・・・。




めぐは「ああ、良かったね、リサ。」

あの夢は本当になったんだ。と。めぐ自身は理解した。


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