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michelle

「あの・・・ルグランさん?」



ルグランは「はい?」



ミシェルは、聞いていいのかな、と思いながら「マリエルさんをお世話しているんですか?」




ルグランはにっこり「いや、あれはね・・・ここの店のバイトと、音楽学校への入学を

薦めただけさ。少し前にね。


僕が、仕事が空いた時に。


アルバイトをしていて。そこで、マリエルがバイト仲間だったんだ。それで。」




ミシェルは、なんとなく安堵した。「そうですか。」



ルグランはにこにこ「僕が、あしながおじさんだと思った?」



ミシェルは「いえ・・・。あ、そうかもしれません。」

セシルに近づけていい人か、どうかを気にしていたのも少しある(笑)。



ルグランは「マリエルが困っているようだったから、助けてあげたくて。」


その他、ちょっとした・・・マリエルに対する親しい感情の事は

ミシェルには話せなかった。


言葉にするのは難しかったから。



それと似た気持を、セシルにも感じている、なんて事も言えない。



若いミシェルが、それを理解できるとも思えないから。




マリエルが、アルミニウムのお盆に

お水と、レモン・ジュース、オレンジ・ジュースを持ってきて。


「どうぞ」。と、にこやかに。


「ありがとう」と、ルグランは、そのレモン水を受け取った。



「ありがとうございます」と、ミシェル。



「ミシェルくん、中学生?」と、マリエル。


ミシェルは「はい。」



マリエルはにっこり「いいわね、元気で。」




ミシェルもにっこり。


すこし、俯き加減になると、マリエルの髪が

頬のあたりで揺れて、かわいらしい。

斜めにあたる光が、すこし、大人っぽく見えたりもして。

ミシェルは、なんとなく魅力を感じた。



マリエルが、お盆を持ってキッチンの方へいったので

ミシェルは「ルグランさんって、モテるんですね」



ルグランは「そう?そうかなー。モテるって、ビートルズみたいなのを

言うんじゃない?」



ミシェルは「そう、なのかな」と、笑顔になって。「でも、セシルもマリエルさんも

ルグランさんを快く思ってます」




ルグランは「そう?キミだってそうだよ。ただ、私は、あの子たちのお父さんか

おじいさんくらいだから。見守ってあげたいと思うだけさ。」



ミシェルは、なんとなくわからない。「それで、世話をするの?」と、口調が砕けた。



ルグランは「はい。助け合うのさ。人は。それで親しくなれるし。いいものだよ。」




ミシェルには、ちょっと実感がないけれど・・・・。




ルグランは「キミだって、セシルちゃんの為に走り回っている。

それと似た気持だよ。たぶん。」





ミシェルは「そうかもしれないですね。」



そういわれると、なーんとなく・・・そうかもしれないと思えた。




「マリエルさんと、セシルと、どっちがかわいいですか?」と、ミシェル。



ルグランは笑って「ふたりともかわいいよ。とってもいい子だ。」



ミシェルは「どっちかを選ぶなら、どうします?」



ルグランは「ははは。どっちも選ぶことはないよ。若い男の子の

お嫁さん探しじゃないものね。」と。ミシェルのことも可愛いとも思った。



そして

「セシルちゃんも、なんとなく・・・・かわいい仕草をしてみたいだけ。なんだよ。

可愛がられたいんだね。クラスメートに可愛がられるってヘンでしょう。

それだけだよ。」




ミシェルは「そうかなぁ・・・・。」なんとなく、不思議。





ルグランは「キミだって、かわいい人がいれば。

その人を助けてあげたいって思うよ、きっと。」



ミシェルは「可愛くなかったら?」



ルグランは「助けないかもね」と、笑った。




ミシェルも笑って「不公平だー。」



「まあ、大抵の子は可愛いけどね。見た目がどうの、と言うんじゃなくて。

ありのままなら、大抵可愛いもの」と、ルグランは笑顔で。




「私も、かわいい子がにこにこしてくれれば嬉しいし。

セシルちゃんや、マリエルだって、にこにこしたいんだ。それでいいんじゃないかな。

なーんて思うけど」と、ルグラン。




「そうそう、ミシェルくんともお友達になれたし。そうやって友達が増えていく方が

楽しいよ、きっと。」




ミシェルは「あ!」




ルグランは「どうかした?」




「モペッドを返さないと」と、ミシェル。





「ああ、そうか、引きとめてごめんね」と、ルグラン。


ミシェルは「いえ、僕がのんびりしてたからです。ありがとうございます。」と。



席を立つ。



マリエルが、キッチンの方から「あら、お帰りになるの?」



その、穏やかな微笑みを見ていると、ミシェルは

ずっとここに居たくなるけれど。


「ごちそうさまでした。また、来ます」と言って。

深く礼をした。



そして、開いているカフェの入り口から、駆け出して。





ルグランは、にこにこ「優しい子だね、あの子も。」












誰もいなくなったカフェ。

ルグランはマリエルとの、2人きりの時間を思い出していた。


ほんの少し前の事なのだけれど。


ルグランが、仕事が切れた時に

知り合いに頼まれて、あるお店を手伝っていた。


早朝のカフェ。


あまり人の来ない店だった。

そこで、アルバイト仲間としてマリエルと知り合ったのだった。




少しづつ、親しくなって。


音楽が共通の話題だったこともあって。

それで・・・ちょっとだけ、友達と言う感じになった。

少し、友達よりも親密だったのかもしれない。

年齢が親子ほども離れているので

恋愛、と言う形にもならない。けれども

ふとした事で、マリエルと触れ合う事があり・・・。

その時、ルグランは少年の心に戻ってしまった。

そんな事もあった。



しかしルグランは、自制した。

優しいおじさんであろうとした。


しかし、そのマリエルを抱きとめた、その感触や

温もり、香りは

ルグランの記憶に残っている。


越えてはならないline。


そんなものを意識させた・・・・・・。



今のマリエルにそんな気持があるのかは

解らない。


おそらく、一過性の熱病のようなものだろうと思う。





ーーーーそれで、この店には近づく事も無かったが。


偶然、図書館でセシルに出会い

マリエルのことを連想した。



偶然が重なり、ミシェルと

この店のオーナー、ヴィッキーの車のそばで出会った。



運命のいたずら、なのだろうか。


そう、ルグランは微笑む。



美しい思い出だった。


ただ、マリエルも現実に、そこにいるのだが・・・・・・。

それは、あの時の彼女ではない。


マリエルも、なんとなく分かっているのか

その頃の思い出に接しようとはしない。

少女だった自身の、幼さ。


それを気恥ずかしく思っているのかもしれない。

殊更、ルグランに会おうともしないし

こうしてカフェに来ても、あまり、そばに来ようとはしない。




・・・・美しい記憶。



その中のマリエルは、ずっと変わらずに輝き続ける。



・・・・それはそれで、いい事なのかもしれない・・・・。と、ルグランは思う。




窓の外を、シトローエン・アミ8が、ぱたぱた・・・と走り去った。





「セシルちゃんとのことも、そうして思い出になるのかな。」

などと、ルグランは思う。



そうして、すこしづつ・・・・年を重ねていくのだろう。

人生は、ステキだな。


そんなふうに思う、きょうのルグランだった。










ミシェルは、カフェを出て。

図書館のおじさんに借りた、モペッドを返す為に

カフェの前に止めてあったモペッドの、ハンドル・ロックを外して。


後輪のクラッチをつないだ。


それから、左手のブレーキの下にある、デコンプ・レバーを引いて。


自転車のように走り出す。



勢いがついたところで、レバーを離す。



ぱらぱらぱら・・・と、エンジンが掛かる。楽しい。


右手のアクセルを回す。


風が駆け抜けていく。


アーチになっている橋を渡り、図書館の駐輪場へ。

元あったところに、モペッドを止めた。


「おじさん、ありがとう」と、守衛のおじさんに鍵を返した。



「やあ、ミシェル。上手くなったね。免許取れるね。」と、おじさんはにこにこ。

ワッフルを食べている。



「あ!忘れた。おじさん、ごめん。ワッフル買ってくるんだった。」と、ミシェル。




守衛さんは「いいよいいよ。」と、にこにこ。




何度も礼を行って、ミシェルは、今度はあの・・・花屋さんに行く。


「ルグランさんに会えたから」と、言ってこなくてはと思った。



駆け出して、歩道を走る。


「モペッド・・・いいなぁ」と、頬に当たる風を思い出しながら。





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