Bellett 1800GT
ミシェルは、守衛さんにモペッドの鍵を借りて
素直に、自転車のように河原まで押していくことにした。
興味を持って見ると、街道には
けっこうモペッドが走っている。
前のタイアにエンジンが載っているもの。
後ろのタイアに乗っているもの。
エンジンではなく、モーターが載っているもの。
いろいろ。
ミシェルが押しているのは、そのどれとも違って
オートバイのようにエンジンが付いていた。
「いろいろあるものだな」
と、結構重い、このモペッドを押して。
「乗ってみようかな」
エンジンをかけなければ、自転車なのだ。
「よい、しょ。」
立ちこぎをしたけれど、結構重い・・・と言うのは、クラッチをつないでいたせいで
エンジンが空回りしていたからだった。
「そうか、クラッチか」と、おじさんに教わったことを思い出して
左手下にあるクラッチを握った。
そうすると、ちょっと重い自転車くらい。
「あ!」ミシェルは、あの白い、古い乗用車を見つけた。
ミシェルを追い越して、ゆっくり走っていく。
驚いたので、クラッチを離してしまい・・・・。
キーを、ONにしていたので
エンジンが掛かってしまった。
ぱらぱらぱら・・・・。と、青い煙が出て、ミシェルは最初びっくりしたけれど
「そうか、こうやって乗るのか!」
右手のスロットル・グリップを捻るとスピードが出た。
「ああ、楽しい!」頬を滑る風。髪をなびかせていく。
一瞬、ルグランの事を忘れた。
けど、すぐに思い出して
スロットルを開いて、白い乗用車の後を追った。
遠くに、赤信号。軌道信号は緑で
路面電車は進んで、曲がって。
自動車は停まれ。
「追いつくかな」と、ミシェルは左端を
少し速度を落として、慎重に進む。
「ぶつかったら大変だ」
なにしろ、借りたモペッドだし。
第一、無免許だ(笑)。
目前の信号、青に変わる。
ルグランの車と同じ型の車は、交差点を左折し、市民公園の方へ向かった。
「よーし!」ミシェルは、スピードを上げて。
交差点を曲がった。
市民公園は、かつての図書館があった辺り。木々が深く、今は
市民の憩いの場所になっている。
吊橋が、大きな川に掛かっていて
図書館のある街へと。
その路地のところで、白い乗用車は、市民公園のパーキングに入った。
坂道に、エメラルド・グリーンの小さなスポーツカーが停まっている。
「時々、見かけるね、この車」
綺麗に磨かれたボンネット、ぴかぴかのウィンドウ。
低く、丸っこい。
丸いヘッドライト。その間に黒い金網が張ってあり、ステンレスの細いオーナメントが
水平に2本。
真ん中に、楕円のマークがあり
ISUZU とあった。
サイド・ウインドウの下、後席あたりに Bellett とある。
四角いステンレスのレリーフに1800。 その隣にメッキの文字で GT とあった。
車体側面に、黒いストライプ。
「かっこいい車だな」と、ミシェルは思った。
その間に、あの、白い車からドライバーが降りてきた。




