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国鉄車掌心得


リサやミシェルが従順に過ぎたのは

育てられかたが間違っていたかと言うと

そんな事もない。



思いやりのあるふたりだから、おじいちゃんや

おばあちゃんの愛に応えなくてはと

そう思って、窮地に追い込まれていた心。




それは、当たり前で


おじいちゃん、おばあちゃんの願いが

見える訳もないから



考えすぎてしまう事になる。



コンピューターでもよくある事で

プログラムの上で、他のプログラムからの

計算結果を上手く拾えずに


数値が不定になってしまって

結果の計算が難しい事、などは

よくある失敗である。



計算結果を共有する設定にすればいいのだが



おじいちゃん、おばあちゃんに限らず



人の思っているイメージを、言葉にして

伝えるのはとても難しいから




コンピューターみたいに、計算結果を

共有できればいいのだけれども。




魔法使いめぐは、それを

夢の中、と言う設定にして


実行したりするのだけれど


果て、それがいい事かどうか?は

これから解る事になる。






この世界は、神様が

人の心の善意を尊重するように


神経回路を抑制した世界だけど

それでも、リサやミシェルのように

善意のせいで、窮地に陥る事も

あったりもする。





向こうの世界のように、悪意も適当に

持っていると



おじいちゃん、おばあちゃんの願いも

あるけど



まあ、自分が大事だからって(笑)


適当に聴いたりするのだけど。

この国でも、世界の戦争に巻き込まれた時期があって

その後に生まれた子供たちは、戦争を恐れたし

こどもを自由に育てようとした。


戦争中に生まれた子供たちは、反対に

親世代の無理な行動(たとえば戦争)を

嫌っていたし、それに心を痛めたから.....。



戦後生まれの子供たちを、軟弱だとか言った。


それはもちろん、戦前の大人に痛められた心が

救いを求めたせいで


ほんとうは、心の奥底で自由に憧れていた。



なのだけど、自由と言うものの経験がないので

分からなかった、どうしていいのか。


奔放に無軌道にする事は、知っていた。

戦前の親たちの強要から逃れるために、時々そうする事があったりして。



それと違って、自由は

何者にも囚われない心、であるのだけれども


社会の中で、容認されてすること。


例えば、母親や父親が優しく擁護する中で

子供が遊ぶような。



社会の中での自由は、そんなものだ。





リサやミシェルも「自由にしていい」と言われても

さて、今までなんでもおじいちゃんや、おばあちゃんの

喜ぶような事をしてきたのだから

(笑)



自分でなにかしていい、と言われても

何も思いつかない。





幸い、ミシェルには恋心が生まれて

ひとつの目的が生まれるけれど。




そこで、[おとなしい、いい子]の演技からは

離れないとならない。


なぜかって?


お姉ちゃんや、おばあちゃん、お母さんの

行動様式を見て育ってきても、女の子を好きになって

愛する、なんて事の方法は分からない(w)



当然だけど。



でも、どうしていいか分からないけど、誰かを恋する。



そういう過程で、Naomiがいたずらしたので

男の子としての基本プログラムが読み出されたりして困惑。



「僕は、なんであんなことをしたいと思うのだろう?」



それまで、文学の中でのふんわりとした恋愛を夢見てきたのに

好きな女の子を抱きしめたい、とか

どうしてそんなことをしたいと思うのか、さっぱり自分でもわからない。


抱きしめて、いったいどうすればいいのか

それもわからないけど、そうしたいと思う気持は

まったくミシェルにも理不尽である。



「めぐお姉さんは、恋人がいるのだろうか?

誰かと抱き合ったりするのだろうか?」


そんな夢想に心が震えるけれど、そのミシェルに連想されるのは


めぐお姉さんの家にホームステイしていた、ルーフィ、と言う青年だったりする。




今は、いなくなったんだけど。




もしかすると、彼が恋人なのかもしれないと思うと

ミシェルは、それに嫌悪を感じる。



ルーフィが嫌いと言うのではなく、めぐお姉さんが他の人に

心を奪われるのが嫌、そうした感情である。


人間は、社会環境のおかげで

霊長類ヒト科、ホモ・サピエンスになったのだけれども

環境が、だんだん変化してきて


人間として生きていく事が、段々動物として

辛くなってきていたりするから


リサが、旅に出なくてはならなかったように

ふだんの暮らしが、息づまったりする。



そんなことは野生では起こらない。


定住、と言う生活がやっぱり、変化を好む動物としては

疲れてしまうのであろう。




そのためにロックを、リサは見出したから

不思議な事だけど、そういう物があって

解放される、人間はそういうヘンな生き物だったりする。




それも、社会の中に生きるせい、である。



ミシェルが、妙におとなしい恋愛をするのも

動物としての恋愛から見ると、ストレスフルであったりする。


そもそも動物の生殖は、発情期にしか起こらないから

恋愛と言うより、遺伝子を継承する作業である。




人間は発情期がないから、常に抑圧的であって

それが恋愛と言うプロセスになったりもする。



動物なら、接触して終わり、であるから

想う事もない、悩まずに。



それは健康的であるかもしれないけれど、あくまで発情期があるので

それで済んでいる。


人間は基本的に、抑圧されつづけていかないとならない

ヘンな行動様式を持っている。




ミシェルは、目眩がした。


恋の思いのせいか、と思って

ロフトになっている階段を降りたら


本当に、足元がおぼつかなくなって。



引き戸になっている扉にもたれるように倒れた。





「どこか悪いのだろうか?」とは思ったが



扉を開いて、廊下に倒れ込んだ。




列車は止まっているので、その衝撃で

隣人が気づいたのだろう。



白髪の老人が、壁の車掌コールを押したので




ミシェルのおじさんは、最後尾から。




「おお、どうしたミシェル?」と


おじさんは、ミシェルを抱き起こすと


熱っぽさを感じた。






「薄着だはんでなー。」秋の東北は冷えるのだ。




個室なので、暖房のスイッチを入れて

部屋を暖めて、ミシェルを

ベッドに寝かせて。



それで、手持ちの粉薬、解熱剤を飲ませて。




ミシェルを、休ませた。




「疲れたんだべな」と


おじさんは、扉を閉じて







動かない列車の廊下を、ゆっくり歩いて

最後尾に戻る。



ただの風邪だ、と

ミシェルのおじさんは、慣れてそういう。


風邪、空気の中にある細菌が

増えようとして、人間に取り付いて


増えた結果。



細菌に敵意がある訳でもないが

人間にとっては侵略であり、迷惑。



細菌とて生き物である。生きていくための

プログラムに従って、たまたま

温度や湿度、エネルギーのあるところで

増えようとしているだけ、だ。



たまたま、風邪の原因になる細菌に生まれただけで

人間に迷惑がられてしまうのは

不憫な事だが




それは、ミシェルが

生まれ持った生きる為のプログラムのせいで

愛しい人に嫌われてしまうのと


同じ。


生きる為に、仕方ない事であったりもする。



めぐお姉さん.....と


ミシェルは、苦しい息遣いで

そんな、譫言を言ったけれど


個室寝台、ひとり用だから


誰にも聞かれる事はない。







病気になった時、心細くなって

つい、本音が飛び出したり

するものだけど。




15歳のちょっと、向こうっ気もある。




誰にも聞かれなかった事を

幸に思うミシェルでもあった。




「でも、今なら言えそうな」そういう

気持ちでもあった。




愛の告白を。








その頃のめぐは、みんなと一緒に4人個室で


夢の中。




でも、廊下を歩いて行った


車掌の靴音、絨毯敷廊下で

ゴム底の靴なんだけど



でも、なんとなくその音に


眠りが浅くなって。





夢を見た。




ふんわり、雲の上を

さくさく歩いて行く自分。



なぜか、ミシェルは


遠い雲の上に横たわり

苦しい息遣いで


めぐお姉さん、と



熱っぽく呟くのだった。





それは、夢と言うか

魔法使いの第六感、だったのかもしれなかった。






めぐは、ミシェルがかわいそうになった。



その夢で、めぐはちょっと

ミシェルが気になったから


起きて、寝台車に備えつけの浴衣のまま

スリッパで、廊下に出た。


ちょっと、短いめの浴衣だから


ふくらはぎが見えてかわいらしい(笑)。




よく、学校で

体育授業の時

長いジャージを、めくって

ふくらはぎを出しているひともいたっけ。



なんて、めぐは回想。







車掌室

ミシェルのおじさんのとこへ行くと


彼は、休息の時間だったのに

地震のせいで仕事になってしまって、

起きていた。





「もしかして、ミシェルのとこへ行きました?

」と、めぐは、夢が本当の事でないといいな、と思いながら、車掌、おじさんに尋ねた。






「わえは、よぐわがったの」




わえは=あれま>(笑)






ミシェルは、熱にうなされていると聞いて。



「やっぱり!」と、めぐは



Uターンして(笑)




廊下を歩いて(笑さすがに夜中だから)




ミシェルの個室へと




子供相手だから無遠慮、と言うか

15歳のミシェルを怖いとは思わないのか



めぐは、ミシェルの個室の引き戸を開いて。





鍵が掛かっていなかったから



からから、と

扉は簡単に開く。



ベージュの壁紙、スカーレットの絨毯



ブラックのシート。





見慣れた景色に、でも


ひとり用の個室は

ちょっと狭いような気もした。








眠るミシェルに、声を掛けず、めぐは


お姉さんっぽく、毛布を掛けてあげて。




少し暖かさが過ぎる個室は、

汗を書いて解熱するように



おじさんが考えたのだろう。






ロフトを半分昇って、毛布を掛けていためぐを、意外に強い力で

ミシェルは、引き寄せた。




「お姉さん」と、ミシェルは夢現。





夢の続きでも見ていたのだろうか(笑)。



風邪の細菌が起こした、ちょっとした

ハプニング(笑)だけれども


もちろん、細菌にいたずら心がある訳でもない。


ただ、ミシェルの環境で増殖しようとした

結果

ミシェルの防御反応が、体温を高めただけ、である。




そのせいで、ミシェルは少年らしい

体面を忘れ

本心で、めぐを愛しいと思った。




それは、風邪のせいで。



そういう事に人はするけれど


本当は、自分が素直になれなかったせい、である(笑)。



めぐの魔法によれば、それは本来

3年ほど後に、ミシェルが18歳になった時に起こるはずだった。




しかし、それは

リサが国鉄に入社できず


路面電車の運転手になった場合の話だったから



すでに、未来が変わってしまった(めぐの魔法のせいで笑)




それで、こんなに早く

ミシェルは愛を告げてしまった、事になった。




風邪の細菌に、魔法使いがいたのかもしれない(笑)。










「いやっ!」と、めぐはミシェルを

ひっぱたいて(笑)



意外に力の強い女の子である(笑)。





ミシェルは意識を取り戻す。



もともと、愛しいお姉さんに

だきついたりするミシェルではないので



それは、ミシェルの夢、どちらかと言えば

生物反応が起こす行動、だったりする。



同じ頃のリサは、やっぱり眠っていたけど

地震の揺れで、眠りを妨げられた時


夢をみた。



夢は、眠りが浅くなるとき

つまり、心が休息から戻る時に起こったりする。




それはもちろん、脳細胞が死滅する時に

必要な情報を残す為、でもあり


言って見れば、風邪の細菌が数を増やして

死滅する事や


人間が、生殖と選択を行って

自分が死ぬように



生きるものが、生き残る為に

持っている本質、それだから生き残れた

特質であったりもする。




みな、同じプログラムで自らが生き残ろうと

しているだけ、で



それ自体は無垢な行動である。




ただ、生き残る為に争ったりはするけれど。


生き物は、仕方ないそういう本質があるけれど

それは、細胞の中にあるプログラムが

細胞が死滅する時に、コピーを作って

情報を残そうとする仕組みのせい。



人が死んでも、フェースブックに

言葉が残るのにも

似ていたりする(笑)。






ぐらぐら、と地震が起きて


リサは、揺り起こされたような気持ちを

夢の中で感じた。



不条理なようだけれど、そういう刺激がきっかけで


夢は起こる。




リサは、おばあちゃんに抱かれて

ゆらゆら、揺られていた

赤ちゃんの頃の風景を、思い出していた。


思い出すと言っても、しっかり覚えてる

訳じゃあなくて

雰囲気を感じる、って感じるだけど。




そよ風が吹いている、暖かいところで


にこにこ、おばあちゃんは

リサを抱いている。




赤ちゃんがかわいくて、喜んでいて。


しあわせなおばあちゃんと、赤ちゃん。



それも、心の中にある、細胞の中の

プログラムが起こしている気持ち。





生き物としての。





もし、魔法使いだったら

生き物として、ではなくて


魔法使いとしての喜びがあるのだろうけれど。



生命とは関係ない、喜び。





魔法使いなら、解る喜びだけど


或は、天使さんや神様にも解るだろう喜びである。



例えば、生命を慈しむ。

花を愛でたり、幼い者を守るような

そうした感覚は、生き物なるが故の

本質である。



しかし、人間は損得で争うようになって

ともすれば、それを忘れる事さえあったりも

するから


それを、神様は正した。



心の治癒力に任せ、傷を作らないように。





それはもちろん、神様故の愛である。




神様自身は、何も得する事はないのだけれど

そうする事で、皆が喜ぶと言うような。











リサは、揺られている夢の中でふと

醒める。




半分、それは夢だと思い。


地震で床が揺れていると感づき





「大変。めぐたちは??」と、思って



携帯電話を掛けて見るも、当然不通である。




みんなが電話をかけるから。






ラジオを聞いて見る。




おじいちゃんの家は、とっても広いので


携帯ラジオの音は、よく響く。





アナウンサーの声は、淡々と


地域の被災状況を伝えるけれど、どうやら


大きな地震ではなかったらしい。





「よかった」と、リサは思った


夜明け前である。



そのリサの気持ちが伝わったのだろう、

列車は、レールの安全点検が済んで


ゆっくり動きだした。




簡単に、安全点検と言っても



駅から駅まで、人が歩いて点検するのであるから


大変な人と手間が掛かる。





でも、みんなの為に

厭わず、それをするのが

保線、と言う人達である。



レールが、地震に堪えたか?

橋やトンネルは?




それを、夜中にも関わらず

点検して歩くのは、普通誰でも嫌だと思う。

けれど、その人達は



お金の為でも、名誉の為でもなく

黙々と作業するのである。


損得で言えば、損だ。



でも、レールを

守るのは愛である。



ひょっとすると、神様や

天使さんに近い



利益にならない愛である。




国鉄には、そんな人達がたくさん居る。



リサのおじいちゃんも、そのひとりだった。




そう、国の為とか

オーバーな善いかがじゃなくても


みんなの幸せの為に生きるのも愛。


若者、ミシェルたちだって本当は


そうだ。




国鉄、みたいなフィールドが

少なくなっているだけで



例えば地震、災害なんて時になると



みんな、すごい力を発揮したりする。



レールを点検する人々のように。





普通の仕事とかって

大抵、自分達の利益、つまり得しか考えないから


そういうのって、実は

若者たちが嫌がる、勝手な

大人のみみっちいところ。



そうじゃないひとたちは

こんな風に、レールを守る、列車の安全を守る、

そんな事に喜びを見出だしたり。



無意識に、リサはそれに

惹かれるように

機関車乗りを目指す。



それは、生き物として

基本的に持っている善だ。


みんなで、生きていく。

そういう、高等な生物の感情だ。



地震のせいで、列車は大幅に遅れてしまった。

なので、めぐたち食堂車クルーの仕事も

予定が変わってしまった。


朝5時に起きて、仕事をすると言っても


着くはずの駅で、積むはずの

お弁当とか



飲み物とか、お菓子。



そんなものが、積み込めないのに


乗客たちは、目覚めれば

珈琲を飲みたい、ご飯を食べたい。




人間の生理である。


珈琲は趣向にしても。







昨夜、乗り継ぎを心配していた

婦人は、やはり


乗り継ぐはずの駅に列車が着かず、

その癖、乗り換える列車は

地震が納まったので


出発してしまった。




でも、リサの

おじさん、車掌が無線で

計らったので




遅れて、無効になるはずの指定席券は

振替輸送の後発列車に変えられた。




特別扱いを認めると、皆がそれを要求するから

認めない、などと言うケチな事は言わない

国鉄である。




皆の為の国鉄、お金儲けの為の鉄道ではない。


だから、職員たちは使命感を覚える。

それが、仕事への愛に変わるのだ。



ひとりのためのみんな、みんなのためのひとり。



そんな、みんなの心にある

暖かい気持ちは

たぶん、心のなかに

魔法使いが居たのだろう、なんて

夢想的な人々は言うかもしない。

理屈で言えば、優しい気持ちで居ると

嬉しい。



そう思う習慣がついているだけ。



心の中で、その時、なぜかオキシトシンと言う

ただの化学物質がスイッチになっているのだけど



生物が進化の過程で、それをスイッチにする事を


たまたま選択したと言う、それだけの事で。




それも、誠に不思議な事だ。




比較進化論、と言う


形態などを比較しながら、進化の過程を

調べて行くジャンルでは



比べるものがあるからこそ進化と呼べるのだけれど。




でも、そうした神経内分泌の仕組みは


みんな、似ている。


なぜか、心が作られる

場所、ハードウェアで言えば脳だ。

コンピュータならメモリーの上になるのだろうけれど


そこで、感情に沿った物質が

いくつも存在して


感情に沿って、いろいろな記憶が呼びだされる。




つまり、怒ってる時に覚えた事は

怒ってる=ノルアドレナリン(おおまかに笑)

なら、その記憶が呼ばれる。




その記憶に、感情が関連付けられるので




だから、国鉄のひとも、みんなも


優しい気持ち、みんなを守る気持ち。




そういう気持ちにあう物質が、心に満たされている。




普段、そういう癖がついているだけ、なのだけど。



そういう癖があるのは、いい事なのだろうし



守るものがある人々は、それで幸せになれるのだから


幸せなのだ。



生き物なので、時間が経てば

お腹が空いたりする。


列車が遅れたから、食べ物が

足りなくなって。




それでも、この列車の乗客たちは


不平も漏らさずに

我慢強いあたりは

東北の寒村のひとたち

らしかったりもする。






普段、恵まれている事に気づくのは

そんな時だ。





当たり前に、コンビニで

ご飯が買えたりするのは



コンビニのひとたちや、お弁当を作るひとたち、それを運ぶひとたちが


眠らないで働いているから。



そういう仕事だって、お金の為だと思えば

つまらないかもしれないけれど



みんなの役に立つ、みんなの為に

働いている。


そう思えば、使命感のある仕事だと

思えてくる。



お金儲けの為に、無理矢理スケジュールを

詰めたりしなければ、の


話だけれども(笑)。




そういうところで

生きる事の楽しさは決まってしまう、そんなような気もするけれど



でも、この世界は



神様が、ひとの心の欲を

適当に抑制したから



スケジュールを詰めるようなマネージャーは

いない。



だから、みんなが

使命感を持とうとすれば、できない事もない。



そのひとの、心の持ち方次第だけれど。





めぐは、考える。





「食べ物を

魔法で載せちゃおうか?」と

方法を考えていると、ゆっくり走っていた列車は


小さな駅に臨時停車した。


車掌のアナウンスが聞こえる。



「臨時停車します。地震の影響で

先行列車が詰まっています」と


リサのおじさんは、のんびりとした口調で語る。



その口調だけで、気持ちが安らぐから

不思議だ。



車掌は、お腹を空かせた乗客たちのために

この駅で、食料を積めないかと思って


列車無線で、この小さな駅の駅長に連絡を取った。


「駅のそばに温泉街、旅館に協力してもらっで

炊き出しさ、して貰えねっけ?」



駅長も、このあたりは似たような気質で

言葉の訛りも似ていて「んだ。頼んでみっか。」




駅からひょこひょこ歩いて、温泉街へ。


温泉の女将さんたちに話す。



「いいっけな。」


「まかしとけ。」


「よっしゃ。」




列車の乗客全員のご飯はたいへんだと思うけど。



でも、それでもみんな助け合うのは

North・Eastの人々の温かさ。


みんな、一緒に生きていこう。

それは、雪深い地域だから、と言うのもあって



助け合わないとみんなが困る、そういう意識もある。






列車は、止まりつ走りつして

その、小さな駅に臨時停車するはずだった。


でもその時、指令が無線で

車掌へと。



「前方進行せよ、列車遅れ回復のため」と



それでは、炊き出しをしてくれた


人々の好意を無にする事になるし

第一、お腹を空かせた乗客がかわいそうだ。



「積み込みさ、待ってくれんかの?」のどかな言葉で

リサのおじさんは、そう告げる。



列車指令もまた、東北の人である。




「んだな、青だから進めるルールだが」と。






でも、遅れを気にしている乗客もいる。




そういう人は、臨時停車しない方がいいと

思うかもしれない。






そこで、車掌は車内放送で




「次の駅で、食べ物が届きます。


沿線の方々の善意です。



積み込む間、臨時に停車致します。

お急ぎのところ恐れ入ります」と




こんな風に言う、訛り言葉で


聞く人々の心も和らいでいく。




それも、言葉の響きの持つ


不思議な効果。



メールや活字では伝わりにくい、音の

響きの

楽しさだったりする。

やっとこさ、駅について

機関車も、機関士もひと休み。


でも、信号は青なので


東北地方の、鉄道管理局からの指令は「進め」。



遅れを取り戻すと言っても、もう2時間以上。

取り戻しても知れているし、それよりは


お腹を空かせた乗客たちに、あったかいスープや

焼きたてパン、ヌードル、などなど。


食材を積めば、食堂車で料理も作れる。



駅長さんと車掌さん、地方鉄道管理局は


それでいい、と



臨時停車を決めた。



だけど.....。後ろから列車が来ているらしい。



積み込みを素早くしないと、後ろの列車が停まってしまう。




それはちょっと困る(笑)。



貨物列車だったりすると、荷物を待っている人もいる。








特別、誰も欲に駆られていなくても

思い通りにならない事も、あったりもする。


こんなふうに。



誰のせいでもない。






食堂車で、めぐたちは

食材や、沿線のひとたちの善意のお料理を

積み込みながら、その話を聞いた。




駅長さんと、車掌さんの話。



「急いで積み込まないと、後ろの列車が赤信号で停まるな」と、駅長。


「線路を切り替えて先に行ってもらえば」と、車掌。



「そうすると、中央管理局に理由を質されるかも。」と、駅長。




「うーん....。」と、車掌。




めぐは、一計を案じ、

後ろの列車の進んでいる時空間を歪めた。




それは、カンタンな魔法で

いつも、使っているE=MC2である。


光の速度と質量は、エネルギー。



列車の質量は、大きい。


光速度を越えれば....時空間は歪むのだ。


それで、時間を少しだけ待って貰った(笑)





そういう事は、よくある。





幸い、貨物列車だったし

この列車も、地震のせいで遅れてた。


なので、普段の機関士の

場所の勘、いつもの列車、

このあたりなら

何分、と言う

そういう感覚に触れずに



時間を少し動かせたのは


めぐの魔法にとって幸いだった。




機関士が「あれ?もうこんな時間?」なんて

思ってしまうだけで(笑)


うまいこと、積み込みの時間を


稼ぐ事ができる。




食堂車の中で、魔法陣を書いて


魔法を使う、なんてできないから(笑)。




めぐは、心の中でイメージした

空間の中で

自分が、魔法陣を書いて

その上で、凛々しく(笑)


魔法の杖を振るような、そんな映像を


想った。



なんていっても、まだ17の女の子だから。




ちょっとだけ、ヒロイン。





ひゅう。と魔法を動作させた。






その一瞬、後ろに近づいて来ていた貨物列車は


陽炎の彼方で、動いていないように



見えている。




良く、映画で映るそれは


望遠レンズだから、そう見えるのだけど




この時、貨物列車の機関士は


一瞬、気が抜けてしまったように

思ってしまったのかも(笑)





その間、食堂車クルーは

素早く、キッチンの扉から

食材を積み込んだ。


それと、善意のお料理をたくさん。



お金は?なんて事は誰も言わない。


困ってる人を助けてあげるのは当たり前。




雪の降るこんな地方だと、そうして助け合うのは当たり前だし



それは、生き物として

一緒に生き延びて行こうと

言う、人間以前の動物としての

群れの記憶である。



でも、人間だって助け合うのはふつうさ。



そう、みんなほんとは思ってる。



めぐが、ちょっとの間

魔法に集中してたので




「何やってんの?」とれーみぃが

にこにこして、見てる。



まさか、後続列車を止めてるとも言えず(笑)




「ごめん、ちょっとね」と


少しの間のタイムラグを詫びた。




その間にもキッチンのドアから

食材は続々と運びこまれて。



「これで、食事はできるな」と

列車料理長は安心した。








中央の列車司令部では、この線路上の

ほんの少しの時間の歪みは



列車位置を示す、ランプがひとつ

瞬くかどうか、くらいの違いでしかかなかったから




それに気づく指令もいなかった(笑)。


まずは、万歳だった。




機関車についている運行記録計の

時計の針が、ほんの5分くらい止まった事になるのだけれど(笑)。





それを気にしなければ、どうと言う事もない。





ただ、青信号で駅に止まっている



めぐたちの乗った列車の記録は、後で

バレるとまずいかもしれないけれど(笑)。



でも、この駅の時間を止めてしまえば


荷物の積み込みもできなくなってしまう(笑)。








「よーし、おっけい!」と

食堂車の料理人さんたちは、素早く食材を

積み込んで



ホームに下りている、車掌さんに合図。




駅長さんは、即座に発進、との指示。



ホーム上の信号を進行、にした。






それは、駅長裁量である。




後で、責任を追求される、なんて野暮は

言わない。


それが、みんなの為なら


処分だろうとなんでも受ける、それが

みんなの為に働く駅長の、心意気である。




そんな事は口に出さなくても

機関車乗りも、車掌も

揃って、処分するなら受けて立とうと

意気込んでいた。




みんなの為に。



駅長さんが、懲罰を掛けてまで

積み込んだお料理。




おいしそうで、あつあつで。




食堂車の中いっぱい、おいしそう。



お腹を空かせたみんなの、嬉しそうな顔を

めぐは、カウンター越しに眺めながら


なんとなく、嬉しい気持ちになったり。






「食べてる人って、なんとなくいいなぁ

、幸せそうで」と



つぶやくでもなく、そう言うと




「あたしたちも食べたいね」なんて

れーみぃは言ったりするから


めぐも、お腹空いてきた。




でも食堂車に並んでる人たちが、

とりあえずお腹を満たすまで

ウェイトレスとしては、ちょっと頑張らないと。






列車全部の乗客、と行っても


オフシーズンだから、そんなに行列ができるほどでもない。






とはいえ。




暖かいスープと、パンとヌードル。



パスタ、ジャガ芋バター。





素朴なお料理が、やっぱり嬉しい。






めぐも、食べたくなって



キッチンに引っ込んで、ちょっとだけ

つまみ食い(笑)。



「あ、だめだよー」なんて

れーみぃは言うけど、自分も



おいもをつまんでいた(笑)。




お腹には勝てないね、なんて

笑いながら。



おいしいね、って言う顔は

罪はないけれど。



おいしいと感じる味は

もともと、生き物のもつ

タンパク質、つまり




誰かの生命だったりもする。



それが嫌で、植物しか食べない人もいるけれど



植物だって生きている。



それを、原罪と言ったり



もするけれど




でも、生きているんだもの、仕方ない。





れーみぃは「お腹には勝てない」と言ったけど



食べない訳にも行かない。







「あ、Naomiぃ」って

れーみぃがかわいい声。




Naomiは、クールな顔立ちで



お腹すかないのかな?

なんて、めぐは想ったけど(笑)


でも、ヌードルスープのお鍋を



ちら、と見る視線は


食べたいよー、って感じ。






なんたって若いんだもの(笑)。









Naomiがスリムなのは

ダイエットしてる訳でもなくて。



もともと、あんまり食べないたち、だったからもあったり。





ちっちゃい頃、わりと好き嫌いがあって




お母さんが「Naomiが食べてくれないよーって泣いちゃうよ、トマトちゃん」って




食の進まないNaomiに、かわいいたとえで


そう言った事を



いま、彼女は思いだしたりして。






お母さんに世話焼かせたな、なんて




懐かしい思い出に浸ったり。





でも、トマトちゃんは

食べられない方が幸せじゃないかな、なんて

幼かった彼女は


そう思ったりして(笑)。



Naomiがトマトが苦手だったのは

果汁が、なんとなく有機的な感じが

するからで



見た目、クールな彼女は

実はは、とっても優しい子供だったので




傷つけたりするのは嫌いだったから




生き物を食べていると実感したくない。



そんな、幼い心に思う優しさで



トマトを、だから



お母さんが寓話で


諭そうとしている

その気持ちが



でも、和らかい気持ちになれて




とても嬉しくて。





その気持ちに答えて、トマトを食べて見ると


その、有機的な味も



そんなに悪くはないような、気にもなった。





思いとしては、お母さんの優しさの方が

心に残ってはいて




それから、トマトを見ると



お母さんの、優しい思い出が


心に蘇るのだったりして。






今は、日常の雑事で忙しくて



あの頃のお母さんの気持ちは、どこかに行ってしまったような


お母さんだけど。



でも、どこかに

その思い出は


お母さんにも残ってるんだろうな、なんて





Naomiは思い、オートバイを好きな




Naomiを心配する母に



こんど、トマトの


お料理を作ってあげようかな、なんて思うのだった。



いつのまにか、忘れてしまった


優しい気持ちを


もう一度思い出すために。



ちょうど、キッチンで煮えている

トマトソースの匂いも

彼女に、そんな連想をさせたり。


ひとの気持ちって、そんなきっかけで変わる。



トマトの味とか、香りで



トマトがあった記憶が呼びだされたりする。





それで、Naomiもちょっと

懐かしい気持ちになった。


こんど、お母さんに


少し優しくしてあげようかな、なんて

(笑)


でも、顔見ると


喧嘩したりするのだけど。



そういうものだし、喧嘩相手に

ならなくなると



それはそれで淋しい(笑)。






ひと、それぞれに排他性が



生物だから当然あって。




だから、誰かと気軽に喧嘩する事も

必要だったりする。




そういう解消がないと疲れてしまうのて



でもそれは、Naomiの人格ではなくて



生き物としての細胞が

それを動かしているのであるから



彼女になんの罪もない。




もちろん、人類すべてに言えること、なのだけど。


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