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鉄道員

凛々しい鉄道員

でも、トライアングルになったって

めぐたちは、別に

争うまでもない。


神様や、魔法使いルーフィが


この世界に住む人々の、心に

入り込む

悪、その心が

起こらないように

粛正したからだった。



もともと、100年前には

そういう事は起こらなかったのだけれども

貨幣流通経済が


人々の悪意を煽って、競争を激化させた

せいだった。




その悪意には、魔界の住人たちが

関わっていたけれど




もう、今では人間世界に

彼らは入る事はできない。



だから、次元の歪みと言うよりは



隣接宇宙の並立で、時空間が歪む事は

あるかもしれないけれど

そこから、悪意が生まれる事は


ない。




なので、恋の争いで


誰かが不幸になる、なんて

起こらない。






今は、そういう世界。




なので、めぐたちも


自由に恋を楽しむ事はできるのだろうけれど



でも、そういうゆとりは

まだまだ、なかったりして(笑)。




「ねぇ、じゃあやっぱり

めぐは図書館に就職するの?」と


れーみぃは聞く。





当の、彼女は

もう、警察官になる事を決めているらしいけれど。




3年後、ハイウェイパトロールをしている姿を

もう覚えていない、めぐだったりするので




なにげに「お巡りさんになるよりは楽そうだけど」と

めぐは言ったり。






れーみぃとめぐは、並んで歩きながら

階段を下り、改札へ向かう。




Naomiと、リサはその前を歩く。




4人、と言うと

時々、こういう2:2になったりする事もあるけれど。



別に、仲良しと、そうでない、なんて言う分類でもない(笑)。





ただ、並んで歩くには道が狭かったり。


4人だと、会話が端っこまで届かなかったりとか(笑)。




そんな訳で、この時は

めぐとれーみぃは、並んでた。





「うん。お巡りさんの試験は難しいらしいけど。

入ってからの方が大変みたい」と





れーみぃは笑顔で言う。


それほど、気になる訳ではないらしい(笑)。






「そっか。図書館も

働くだけなら今でもしてるけど。


正規職員だと、公務員になるので


結構大変らしいよー。」お

めぐは

そこまで話して




あんまり、真面目に将来を考えていなかった事に気づく(笑)。



ちょっぴり、恥ずかしい(笑)。





リサみたいに、レールが敷かれた人生も


それなりに葛藤はあるだろうけれど



選ばなくていいから、楽かな(笑)


なんて、思ったり。




「どうせ、お嫁さんに行くと

辞めないとならないんだろうね」とか

めぐは、半ば諦観(笑)。




改札で、優待券を駅員に渡すと



駅員は、国鉄の関係者だと思って

めぐたちに敬礼、をした(笑)。




その敬礼って、兵隊さんがしてるのと違って


駅員さんがしてるのを見ると、清々しい気持ちだったりもして(笑)。


服装とかで、違う印象になるんだね、なんて



めぐは思う。



駅員さんも、カラフル女子高生4人に

敬礼をするのは、半分ずつジョークだったのだろうけれど。



にこやかに礼をする姿は、なんとなく好ましい。






「リサも、あんな風に

素敵

な駅員さんになるのかな。」


なんて、れーみぃはイメージしてる。





「うん。駅員さんもするんだろうね。運転手さんになる前」なんて、めぐも、その

凛々しいスタイルを想像した。



白いシャツで、紺色のスーツ。

帽子をしっかりとかぶり、髪は

さっぱりとまとめて。


白い手袋で、信号を指差したり。






「でも、大変だろうな。朝も、早いし、夜は遅いし」と、れーみぃ。





そんなこと、考えもしなかったけど


めぐも、それに気づく。




始発列車や、最終列車も

駅員さんは見守るんだものね。



信号を変えたり、、切符を売ったり。




通り過ぎた改札を振り返って、思わずめぐは見る。



爽やかだった駅員さんの笑顔を。





とても、真似できないな。


そんな風に、めぐは思った。



人知れず、みんなのために頑張ってる人も

いるんだな。







そういうひとって、きっと幸せになれるだろうな。



そんな風にも思って。




駅の改札を過ぎたあたりに、カフェがあって

ケーキセット、とか


魅力的なおさそい(笑)。


だけど、もう夕方なので


「きょうは、ありがと」と言う、リサのお言葉に従って(w)



みんな、名残惜しいけど、きょうは解散。





「さよなら」って、Naomiは

颯爽と。


ほんとにモデルみたいに、さっさっ、と

歩いていったかと思うと


モーター・プールから


シルヴァーのオートバイ、YAMAHA TR1で

片手を上げて駆け抜けていった。




おじいちゃんの愛車だと言う、そのクラシックなオートバイは

柔らかな、猫の足のようなサスペンションを一杯に伸ばして

前輪を路面に捉えていた。



深い、軽い排気音。

V型72度バンク、4ストロークエンジンは軽快だ。

長い鍍金マフラーが、時代を感じさせる。


長四角のバックミラーに、彼女の視線が写っていた。





「ありがと、ほんとに」と

と、リサは

路面電車の停留所へ行って。



黄色と緑の、金属塊。路面電車に乗り込んだ。


デッキのところで手を振って。



一番後ろの、車掌室のところに立っていた。



そのうち、ドアが閉じ


路面電車は、海岸通りに向かって坂を下っていく。







「あー、行っちゃった。」めぐは、あれに乗れば良かったかな(笑)と。


思ったけど。

まあ、歩いていけばいいか。と



「あー、行っちゃった。」と、同じ顔してるれーみぃと(笑)。




「次の、すぐ来るね。」土曜の夕方だから、普段よりは少し

間隔は空いているけど。



6分くらいか。




れーみぃは、にこにこ。



「もう、卒業なんだなー、って

リサを見てて、思っちゃった。


なんか、淋しいから。

学園祭で、なんかしよう!、ね?」と、れーみぃは

にこにこ。



夕方の陽射は、もうオレンジ・ヴァーミリオン。


そろそろ、ブルーに暮れようとしている。



「なんか....? 屋台でも?」と、めぐは


食べ物主体(笑)。



「それもいいけどぉ。 そだ、バンドとか?どぉ?」



れーみぃは面白い事を言う。





「4人でバンド?ビートルズとか、ストーンズみたいに?」と、めぐは

海の向こうのイギリスの、ロック、それもクラシックなそれを言った。



「ビートルズかぁ...うん。いいね、女の子でやると、かっこいいかも。

リサは、ジョージ・ハリソン。

Naomiはマッカートニー。

あたしは、レノン?かな。」と、かわいく笑うれーみぃ。



「レッド・ツェッぺリンとか、ヴァン・ヘイレンとかは?」と、めぐが言うと



うわーハードぉ、と、れーみぃは笑う。



「かわいいのもいいねっ。ロネッツとか、クリスタルズとか。」と、れーみぃ。


「Da-do-ron-ron♪」とか?と、めぐは最初のフレーズを口ずさむ。



「そうそう。それそれ!コーラス合わせたらステキよ、きっと!」と、れーみぃは

楽しそう。




夢が広がって。こんなお話してると

本当に楽しいとめぐは思った。



楽器ができるか、は別にして(笑)。





「それじゃ、ヴォーカルはめぐかな。」とれーみぃは

にこにこ。



「あたしはダメよ、華がないもん。やっぱ、れーみぃだよ。

なんたって、かわいいもん。」と、めぐは


いつもあんまりおしゃれじゃない、短い髪に

簡素な服が好きな自分と



長い髪をきれいに整えて、ベレー帽かぶってたりして

おしゃれでかわいい、上品なれーみぃの方が


ステージに華がある、そんなふうに思った。




「歌....は、自信ないの(笑)、声が軽いし。」と、れーみぃ


そういえば、可愛らしい高い声だけど。




「それもいいんじゃない?男の子が来るでしょ。学園祭だから。」と

めぐは言う。


ふと、思い出すのは....。


向こうの世界でマジックを披露して、有名になった怖さ(笑)だった。




プライバシーなし!(笑怖)。





.....やっぱ、やめようかな、バンド(w)。なんて、めぐは一瞬思った。





「あ、ママ!」と、れーみぃは白い、ちいさなセダンが近づいてくるのに


手を振った。




白くて低い、ファストバックのセダンは

ペイントも美しく、深みがある。


メタルのフロントグリルは気品があって。


ヴァンデン・プラ・プリンセスだった。


イギリスの古参である。




ドライバーは、れーみぃによく似ている女性で


お姉さん、と見間違うような、お母さん(笑)が


ナトーのハンドルを軽く、回していた。




「よかったぁ。めぐ、乗ってって?」と、れーみぃが言うので

路面電車には乗らずに。



家まで送ってもらう事にした。




ドアは重厚で、静かにかちゃり、と開き


シートは、柔らかくて腰のあるレザー。


室内のあちこちに、ローズ・ウッドが使われていて

その、自然な香りが不思議な安堵感を醸していて


作った職人さんの心が感じられた。



いい車なんだな、と


車にあまり関心のないめぐにも、それは分かる。





ヴァンデン・プラは


さすがにロールスロイスのミニチュアと

言われるだけの

乗り心地で


すっ、と走り出し

揺れる事もない。



格別、変わった機械を使ってはいないのだけれども



その道の職人が作ると、機械もそうなる。



そんな見本だった。



路面電車のレールが光る、下り坂を


3人を乗せ、ヴァンデン・プラは


静々と走って行く。


マニュアル・ギアボックスなので


もちろん、れーみぃの母の

運転技能もあるのだろうけれど。




「いい車ですね」と、めぐは、本当の感想を述べる。



「ううん、古いばっかでね。

オイルも漏るの」と


母は、そういう。



声は、ややれーみぃよりも低いけれど



ほとんど、れーみぃに似ている。


そういうところ、遺伝なのだろうけれど

面白いもの。



めぐは「あたしも、お母さんに似ているのかな?」なんて、思いながら。




自分だと、十分違ってる、と思うんだけど(笑)。







「めぐさん?れーみぃはね、お巡りさんになるって言うのね。

そんな、危ない仕事は、女の子は

しなくていい、って

お母さんは思うんだけど。

なんとか言ってあげて?(笑)」と




母は、本当に心配している、そういう感じだった。




それはそうだろう。

警察官、と言うと

悪い人も来るはずだし。





.....とはいえ、この世界は

神様のお蔭様で

そんなに、悪い人はいなかった。



過剰な欲望を、起こらないようにしよう、と言う

脳の生理学的な構造を

人間、と言うより

生物的に適正なレベルまで戻した、と

言う、それだけの事なのだけど。





つまり、人間の欲望のうちほとんどの欲は


生きて行くのに必要のない欲望なので



そのために争ったり、攻撃的になるのは


論理的に不条理、なので


それを、人々が認識すれば

欲望は起こらない。




それを、言葉ではなく


生理的メカニズムで、行うのが


彼らの改革であった。





そのせいで、そんなに悪い人は

この国に

いなくなった。



そんな訳で、お巡りさんを


女の子がする事にも

そんなに抵抗はなくなったような



......でも、その構造を


みんなが理解してるとも言えず



やっぱり、母親的な不安は

過剰なものであったりもする。



「ママ、あたしは司法警察官になるの。

泥棒を捕まえたりはしないわ」と




お母さんに、言葉で説明するれーみぃ。



でも、不安と言うのは理屈ではない。




不定な状況に、あらゆる可能性を想定し



不利益が起こらないように、と考えるのが不安である。



だから、推理ドラマや

サスペンスが好きな人々は



そういう不安も多いだろう(笑)。





空想の事を、可能性と誤認してしまうから。







.....後々、れーみぃが白バイ警官になって

ハイウェイパトロールになる、なんて

言う事は、この時は

想像できないだろう(笑)。



し、めぐも



その、3年後の出来事は


忘れているのであるし。

ひょっとして、変わるかもしれない。


未来は、そういうものである。





下り坂。

つまり、反対側は上り坂だけれども



その真ん中に、路面電車のレールが2本。


もう暮れ始めた夕方に、銀色に光っている。




めぐたちは、その下り坂を

ゆっくり下っている。



「ママ、危ない事なんてないわ。お巡りさんだからって。


司法警察官って、内務だし」と、

れーみぃは言う。



ママは「でも、警察にテロリストが入って

拳銃もってどかーん!とか、テレビで見るわ」と



れーみぃのママは、ドラマか映画を見て

そう思ってるらしい(笑)。



れーみぃが天真爛漫なのは、お母さんに似てるのだろう(笑)。




「ママ、それはドラマよ」と


れーみぃが言いかけた時



対向車線を昇ってきた若者のスクーターが




路面電車のレールを横切る。




斜めにレールを渡ろうとしたので


タイヤが滑って。




スクーターは、ころん、と倒れた。




でも、坂を下り始めていた路面電車。


本当なら、めぐたちが乗っているはずの

電車だった。





坂を上りながら転んだ若者は、

スクーターと一緒に




その、路面電車の前に吸い込まれそうになった。







危ない!




めぐは、それを見て

無意識に魔法を解放する。




若者とスクーターを


ほんの一瞬だけ、重力から解放する。


0次元モデルにすればいい。




すると、F=mghより


重力は無くなるが



それまでの慣性、F=ma,v2=vi+atより



わずかに空を飛ぶので、それで

衝突は避けられる。




スクーターごと、路面電車の前のスカートを掠め


めぐたちの乗った、ヴァンデンプラの前を横切り、舗道の敷石に当たって、止まった。







少年は、呆気に取られている(笑)。



もう、ぶつかると思って、目を閉じていたのだろう。





れーみぃのママは、スクーターの前、舗道に車を寄せた。




れーみぃは

「大丈夫?」と言うと



ミシェルくらいの年代の少年は、はい、と


恥ずかしそうに

答えた。





肘を擦りむいたくらいで、大した怪我もないらしい。



スクーターを起こして、エンジンを掛けて


また走り去る。





「驚いたわ」と、れーみぃのママは



電車に轢かれと思った、と。






それを、めぐは

とっさに魔法で回避したのだけれど(笑)。





でも、めぐは自問していた。




なんで、咄嗟に動けたのだろう?(笑)。





友達でもないのに。







そうは思っても、やっぱり、助けてしまう。



助ける能力があれば。





そんなものだろう。

魔法を使える、って事は

それだけ、できる事が多いのだから。






自然に、魔法使いしてしまっている自分に、めぐは、なんとなく驚く。



そのめぐに、れーみぃのつぶやきが聞こえる。



「道路交通法違反だわ。路面電車のレールを横切る時は、路面電車の通行を妨げてはいけないのだし、そもそもスクーターって横断禁止なのに」と

(笑)



そんな言葉を少年に言わないれーみぃは、やっぱり

思いやりのある少女。





「よく覚えているね」と

めぐは、笑う。





れーみぃは「法律って、上手く出来てるの。

知ると、そう思う。


文学みたい。」と(笑)。



それはそうかもしれない。




解釈は推理もあるし。




壮大な物語。






れーみぃが、おとなしやかなのに

法律、なんて硬いものを理解しているとは


めぐには意外だった(笑)



「もっと、女の子らしい嗜みを覚えてほしいんだけど」と

れーみぃのママは、苦笑い。


でも、法曹を目指す、なんて姿勢は

母親としては頼もしいのだろう。


でも「なんで、弁護士さんや、裁判官じゃないの?」と


めぐも思う。




「それは、難しいから(笑)」と案外現実的な

れーみぃ。



「なるほど.....。」と、めぐは納得。



司法警察官なら、給料を貰いながら勉強も出来るし

なんたって公務員だし。




「それに、いろんな人に力になりたいの。

弁護士さんとか、裁判官って

あんまり気楽なお友達って訳にもいかないし。」と、れーみぃ。





いろいろ考えてるんだなぁ。と、めぐは


なーんとなく、なりゆきで図書館にいて

そのまま司書になりたい、なんていう自分が

ちょっと、恥ずかしかったり(笑)。







「法律って、上手くできてるの。物語みたいに。

今の事故だって、スクーターの子が、ちゃんと規則を知ってれば

危険な事にならずに済んだもの。」







「そうだよね。」と、めぐは言い


確かに、あたしが魔法を咄嗟に使ってしまわなければ

あの子は電車にぶつかってたかもしれない、と


たまたま、そこに居合わせた幸運で、彼は助かったと

言う事を思う。



本当に、規則通りに、レールを斜めに横断しないでいれば

確かに、転ぶことはなかっただろう。



その規則を、知っているかどうか、も

別問題だけど(笑)。



「道路交通法だけじゃなくって、いろんな法律の事を

よく知っていれば、住みやすくなると思うの、いろいろ。」と


れーみぃ。



どんな事が、良くなるのかは

めぐには分からなかったりするけど(笑)。



でも、かわいい女の子って、割と、困ることも多いだろうな、と

れーみぃのルックスから、めぐはそんな風に思う。



割と、素っ気無い格好をめぐが好むのは

そういう、妙なところで思わぬひと目を引かない、なんて

実用的な理由もあるので(笑)。





「こんな調子なの。」と、れーみぃのお母さんは笑いながら。


でも、希望を持って将来を考えるれーみぃを

喜ばしく思っても居るのだろう。




白い、ヴァンデン・プラは

ゆっくりとエンジンを掛けた。


旧いOHVのエンジンで、ルーカスのスターターは

電動ねじ回しのような、面白い音を立ててモーターを回すけれど


それは、旧式の飛び込みギヤのせいで、モーターがゆっくり回るから。



エンジンものんびりと回転を始める。








「..........うむ。」



天上では、その魔法の気配を

神様はひとり、偶然感じ取っていた。





「あれは、確かあの、クリスタと一緒にいる娘だったな。

めぐ、とか言う....。魔法を使うようになった。」





神様は、めぐの命を助けて、それで

魔物に襲われた怖い記憶まで、消してあげた。





でも....?




「なぜ、魔法を使って自分の世界の時空間を乱すのだろう。」と

神様は思う。




3年後の未来や、さっきのように


スクーターの少年の運命を変えてしまったり。



もし、あの少年が怪我でもして

病院に入ったら。


そこのナースと恋をするかもしれない(笑)。


そんな、運命を魔法で変えてしまうのは

つまり、未来を変えてしまう事になるのだから(アリエナイ理由で。)。





それで、神様は

しばらくぶりに、クリスタさんの

事が気になったから



夜になって、そっと地上に下りて。



でも、魔法使いとは違うので


なかなか、上手く降りられれなかったりする(笑)。



めぐの家の裏の、丘の斜面に


やや乱暴に、どすん!


と、落っこちた(笑)。



「イメージを壊すわい。やれやれ」と神様は頭をカキながら。





どっかのわんこに吠えられている(笑)




「これ、静かにせい。」と



でも、犬好きの神様は


それでも吠えられるのは

やっぱり、怪しいからだろうか(笑)。





「でも、どうしてクリスタに会おうか」と


思ってみて、結局



「そうだ、あの、めぐと言う娘が

していたように


夢の中にお邪魔しよう。」と




そう、思いついて、それなら

地上に下りる事はなかった、と



天上に戻った(笑)。





それから、クリスタさんの夢にお邪魔しようと思った神様は


「果て、天使って夢を見るのかのう?(笑)」と



思ったりしたが


今は、人間界に降りて

天使ではなくなっているから



夢も見るだろう、そんなふうに

アバウトな神様である

(笑)。






たいてい、神様とか天使さんは

アバウトなもので(笑)


それは、ありのままでいいから、そのまんまでいいからで



悪魔くんとか、魔王とかが厳格で細心なのは


良くない事をしているので

つまり、誰かを意識しないといけないから。




人間も一緒で



芸術家とか、シスターとか。


そういう人たちは、ありのままでいいので

結構アバウトである(笑)。




面白いのは、科学者とかもそうで


新たな発想をするような人はアバウトな人が多い。



全体を見据えて、ほい!と

舵取をするので

細かい事にこだわっていると



それができないのである。




人間なら、その心の切替は


例に因って、考え方に沿って行われる

生理学的な、化学物質の循環で

行われるのだけれども。



古くはクレッチマーなど学者さんが言うような

執着気質、なんて言われる状態で




執着を続ける、つまり


ある事柄にこだわり続けると言うのは、実は

排他性で


ひとつの持論にこだわり、客観性を失った状態である。





そうではなく、あらゆる可能性を見出だす、と言う状態は


演算的状態、連想的状態で


よく言われるように

エンドルフィン、ドーパミンなどの

化学物質が、脳の中で

複数の記憶の接続を刺激するから起こる。

つまり、アバウトな連携である。





人間なら、そうで



つまり、天使とか、悪魔とか、そういう発想は


人間の作ったシミュレーションである。




好ましい状態の人間と、そうでない状態の人間、を

イメージしているものだ。









そんな訳で、神様はアバウトである(笑)。




ひとの良いおじさん、なんかは神様っぽくアバウトだし


いじわるなおばあちゃんは、時として

悪魔っぽいけど

(笑)


それは、もともと


人間が作り出した物語だから、である。












そういう訳で(笑)アバウトな神様はクリスタさんの夢にお邪魔して。






「あー、もしもし。クリスタや。わしじゃ」と




と、のんびり夢の中で


お歌を歌っているクリスタさんに

声を掛けた。



クリスタさんは、美しい声で

綺麗なメロディーを歌っていて。



「神様。お久しぶりです」と


ゆるゆると、お辞儀をする。


神様は、ゆっくりと手をふり



「ああ、わしは堅苦しいのは苦手での。

どうじゃ、地上の暮らしは」と


にこにこ、微笑みながら

神様は、クリスタさんを労った。





「はい、お蔭様で恙無く」と


天使さんだったクリスタさんは

丁寧にご挨拶。



「うんうん。それはよかった、よかった

。」




あの、地獄から舞い戻った猫も元気か、と



神様は、にこにこしながら。




はい、と、

クリスタさんもにこやかに。






「それは、よかった。ところでな。今日は

その話ではなくて。


以前は、お前が宿っていた、あの娘の事だが


」と



神様は、率直に言う。



隠しだてする必要もない。


損得など、神様や天使さんにはありえないのだから。




「めぐさん、ですね。」と


クリスタさんは、微笑みを絶やさず。






神様は、うなづいて

「うむ。あの娘は、魔法の使い道を


よく考えておらん。


なぜ、魔法使いになれたのか?



どうして、魔物から

護って貰えたのか、とか


何も覚えておらんから当然だが、


よく理解しておらんようなのだ。




それで、時空間の多重は増えてしまう。



別に悪い事ではないが。



あまり複雑になると、エネルギーをそれに

費やしてしまう。



エコロジー、が

このところの流行りだしな」と


神様は、ちょっとユニークだ。



(笑)。







「めぐさんにお会いになればよろしいのに」と


クリスタさんは、当然のように言う。







神様は、ちょっとどっきりしたように

(笑)


「いや、わしは、若い娘は苦手でな」と

神様は、少し赤くなって言う。




クリスタさんは、そういう神様は、


なんとなく人間っぽくて可愛い、と

思ったりしたが


それを表情には出さず

「そうですか」と


平然と言った。


神様とクリスタさんは、長い付き合いなので

その、クリスタさんの言葉を

なんとなく、神様は

恥ずかしく思う(笑)。



見透かされているのではないか?(笑)とか。




そうは思ったが、一応神様なので


そこは抑えて(笑)。




「あの娘、お前となんとなく似てるしな」と

口調が砕けるあたり。




神様は、めぐの事が

可愛い、と

思っているらしい。




父親のような、そういう視線で


めぐを愛らしく思っているらしい。




「それで、魔物から護られて、

記憶を作り直されたのですか?」と



クリスタさんは、問い掛けた。




もちろん、そうでないことは分かっているけれど。




「いや、あの娘は魔法使いとして

数少ない正統な継承者だ。



護った理由は、もちろんそれもあるが。


この世界で、魔物が狼藉を働いて

しまった、と言う事は

神としてのわしの失敗だしな。



それで、あの娘が命を失うのは、ちょっと困るのだ。



」と、神様はもっともらしい理屈を付けた。


でも、それだけではないらしい、とクリスタさんは思う。






クリスタさんが、天使を辞めて

地上に降りる事を

黙認していたり。



そういうところ、優しい気持ちのある

神様。


それなので、クリスタさんも、にゃごも

幸せに暮らせている。






「わたくしが、お伝えしましょう」と

クリスタさんは、神様にそう言った。




神様は、にっこりと笑った。




「そうか、頼む。

ありがとう、クリスタ。



と、簡潔に伝え、神様は

クリスタさんの夢から去った。




つかの間の出来事である。



夢のゆめ

まだまだ、夜明け前。


クリスタさんは、夢の中への来訪者(笑)のせいで

ちょっと、ふんわりと微睡んでいた。



朧げな意識。




.....そう。めぐさんの事で。



と、夢の中で思い.....。



廊下をはさんで向かい側のお部屋で眠っている

めぐ、の事を思った。



「夢、見てるかしら.....。」





天使、クリスタさんは

今は天使としての能力は、ほとんど使っていない。


でも、夢の中でお話するくらいなら-----。


と、クリスタさんは思った。





----割と、夢の中で誰かに会った、なんて言う。

時々、こんな風に

本当に、夢と夢がつながっている、って事も

あるのかもしれないーー。





めぐの夢の中では、めぐ自身は

きょう、出会った事を思い返していたりした。



それは、もちろんふつうの人間の夢で

そうすることで、記憶を、もう一度記録するのだけれど


その時に、データが変わってしまったりする事もある。






そんなところに、クリスタさんが現れて(笑)。


めぐは、驚く。




リサたちと一緒にいるところを、夢に見ていたところで

いるはずのないクリスタさんが、電車に乗っていたりしたので(笑)



もちろん夢だけど、そういう風に

不条理な夢、ってできていたりする。




クリスタさんの存在に、夢を見ていためぐは

ふと、夢の中で「これは夢」と認識するのだけど(笑)



それも、ふつうの事だ。



でも、めぐが違っているのは

魔法使いだから、夢に現れたクリスタさんが



夢の中の人じゃない、ってわかってしまうところ、だったり。




「クリスタさん?でしょ?」


と、めぐは夢の中で語りかけた。



こういう時、寝言を言っていたりするのだろう(笑)





「そんなの、知らないもん」と、

めぐは、言った。


クリスタさんが、めぐの夢の中にお邪魔して(笑)



神様の言った事を、そのまま伝えた。



めぐは、魔法使いの系譜に残る人で


その力は大きいから




正統に、魔法を継承るものとして



みだりに、魔法を使う事は

世界を乱す事になる。





だから、考えて使ってほしい。







でも、18歳の少女めぐにしてみれば


そんなのわからない(笑)。



生まれる前から決まってたって言われても




魔法があるおかげで


悩んだり、苦しんだり



おばあちゃんみたいに老け顔になっちゃうなら(笑)



そんな魔法なんて要らない。



「でも、なんのために魔法使えばいいの?」



と、めぐはクリスタさんに言った。





「私には、わからないです。

神様のおっしゃる事は」




と、クリスタさんは言って



「神様には、神様のお考えがあって、そうなさったのでしょう」と。





それは真実で




どんな人も、心の中のイメージをもって

生きている。




でも、誰か、他の人の存在を

心の中にイメージするとき



その、誰かの行動に

自由意思を認めないと



それは、規制とか

束縛になったりして。





この場合だと、めぐの行動を

神様だからと言って


規制する事は、できない。




無理強いすれば、強要罪だと

れーみぃなら言うだろうか(笑)。




なので、めぐの反発は尤もだ。





若いお嬢さんだから、なおさらそう思うだろう。




「そんな魔法ならいらないよ、あたし。


魔法使いになんて、ならない。


普通の女の子でいい。」めぐは、自然にそう思った。





別に、頼んだ訳じゃないし。




めんどーい(笑)。って。






この時のめぐは、しかし忘れている。


幼い頃に魔物に襲われて

命を、危うくした時


身を挺し、天使さんが護ってくれた事。


それで、天使、クリスタさんも傷ついた事。



神様が、命を授けてくれた事。




そして、魔法使いルーフィが


ふたりの命を救ってくれたこと。





大きな愛に護られて、生きている。




そういう事は、意識しないと

ちょっとわからないけれど


めぐ、18歳。



まだ、そこまでは



心配りはできないみたいだ。




それで当然、なのだけど。





神様が、めぐの記憶を消してしまった理由は


魔物に襲われた怖い記憶、それが

めぐの心にダメージを与えてしまわないように、そういう

神様の配慮だった(らしい)。




そのせいで、めぐは

クリスタさんや、ルーフィや神様に護られて

生きてきた

それまでの、1回めの

17年の人生を記憶としては失っている。



つまり、世話になっていない(笑)2回めの

今度の人生で



魔法の使い方がどうとかいろいろ


言われても(笑)

正直鬱陶しい(笑)


と、思うのは自然である。





神様の配慮も、それが伝わらなければ

めぐにとって、知らない出来事なので

配慮に恩義を感じる訳もない。



仕方ない事だけど、人の記憶を変えるのは

そのくらい、難しい。







神様と言えども

例えば、ひとの恋心までは変えられないし(笑)。



めぐの性格は、その

魔物に襲われた記憶のせいで


やや、以前は慎重に過ぎるおとなしさで


今度の人生では、ちょっと自由奔放に過ぎるくらいの


可愛い女の子になった。




なので、以前は

図書館の司書主任さんの甥っ子さんは

そんな、おとなしやかな

めぐに恋していた。




でも、後の人生では

彼は、めぐに興味を覚える事もなく(笑)

寧ろ、分身のような

天使、クリスタさんに

その、かつての彼女の幻影を見たりして。

(実際、外見も似ているのだが笑)。




そんなふうに、男の子たちの人生も変えてしまっている。





もちろん、リサの弟


ミシェルの恋心にも

影響があっただろう事は

想像するに容易い。




以前、ミシェルの話など


リサは、一言も言わなかったのだから。









「めぐさんは、そう言っています」と


朝になってから、クリスタさんは


神様にメールをしたためた。




mailto:god@heaven.com



from

crysta@angel.com




[souiu koto desu]




(笑)。




神様は、どのみち、知っておられるのだから


メールする事はないのだけれども。




そこは、クリスタさんはそつのない天使さんである(今は違うみたいだけれども。笑)


めぐは、夢のなかで

クリスタさんの言った、神様のお告げ(笑)に


不条理を感じていた。



「目の前で困ってる人がいるとき、助けるな?って言うのは

できない。」



それはごもっとも。


めぐは生きているから、同じ人間が

例えばスクーターの少年が電車にぶつかりそうになれば



ぶつからないように。



そう思う。



それは、同じひとだもの。



生き物同士、助け合うのは


ずーっと生きてきたんだもの。あたりまえにそう思う。





のは、もちろん、生物として群れを持った霊長類ひと科だからで


群れの仲間と共存して進化してきたから。



そういう暮らしが、記憶に残っているプログラム。





その中で、助けあいながら、競い合って生きていく。

より、良い暮らしの為に。




群れを持った生き物は、皆、そういう知性を持っている。




知性を持つ以前なら、縄張りを持って

その中に入るほかの生き物を遠ざける。



猫などはそういうタイプで、もちろん人間も

そういう性質が深い、遠い過去の記憶に残っているから




人間同士でも、仲間でないと縄張り争いをしたりする。





犬くらいになると、知性があるので

犬同士では、そんなに競い合いはしない。


挨拶、と言う文化でドメインを共有する。




植物くらいまで過去の記憶に遡ると


同じ種でも、競いあうが

それは、移動が出来ないためで


遠くに行ってくれ、と言う意思である。




もっと過去、微生物くらいになると



そういう意思すらなく、漂っているだけだ。






そんなふうに、過去の記憶、生物的に

助けようと思う基本があって




たまたま魔法を使えるから、助けた。



それだけのことなので、めぐが考えてそうしているわけじゃない。





なので、神様のように


そういう生理がない存在には、それもまた理解できない(笑)





自分が生き延びなくていい、そういう存在には



助け合う必然もないのである。









めぐは、「そんな魔法なら使えなくていい、魔法の継承者なんて

ならない」と.....。



そう思う。それも当然だ。






もし、魔法が使えなくても

たぶん、助けただろうと

めぐは、思う。



いつだったか、クリスタさんが


めぐの事を、銃弾から守る為


身を呈した。



その時も、めぐは

時間を逆転する魔法で、銃弾を

発射前に戻したり。



それで、クリスタさんが助かったのに。



神様は、そんなめぐの

魔法が、未来を変えてしまうから



いけない、と言うのだろうか。



めぐは、そう思った。



矛盾なんじゃない?と。





神様だから、間違えない訳でもない。



すべての世界を掌握するなんて、無理だ。







そんな、若者らしい主張を

持って



めぐは、恐れなく神様に反発した(笑)。






もちろん、それを神様は


認識した。


「まったく、あのめぐと言う娘といい

クリスタといい。


頼もしい限りじゃの」




むしろ、その

めぐの主張を、愛らしく

思う、神様だった。



神様とて、愛らしい女の子には

勝てない(笑)。





見守り、困ったら助けてあげるのも

神様の仕事だろう。





そんなふうに、

神様は思った。


別に、誰も困る訳でもないが。



「世界が複雑になりすぎると

こんがらがってしまうがの」と


神様はつぶやいた。








人間は、ずっと

3次元的に、規則的な時間の流れに沿って


生活してきて、それで済んでいた。



それが、文化が出来て


例えば、狩猟採集を行うようになった。


農耕を行った。



その対価を、交換する。



貨幣が興る。




そうすると、リアルな物と違う貨幣、と言う

現実と違う価値観が生まれたりする。




例えば、昨秋に収穫した農産物を

貨幣にして貯蓄する。


また、来秋に収穫が起こる、などと

予測するようになると




時間の流れが、イメージの中で

現実と違って来る。



もっと、近代になって



言語が興り、書物ができたりして

架空の世界を、書物が持ったりすると







架空の世界、つまり別次元の世界を

誰もがイメージできる事になる。






それら全てが、現実の

時間の流れと違う存在だし


違う価値観が、いろいろ起こる。




ひとによっては、現実の世界より

本の中がいい、映画の中がいい。



そういう感覚も起こる。




そんなふうに、時間の流れ、現実の3次元的

な速度(地球の自転に沿っているので遅くはないが笑)


に、従うのは難しい事もある。



記憶の中では、いつでもどこでも

好きな世界へ跳べるから。




そういう世界感覚は、以前は

書物を書ける人々など、一部の者が持つに限られていた。




それを、解放したのが

コンピュータ通信、ネットワークであるので



いつも、好きな世界に浸りたいと言う

欲求が



現実の、3次元世界の時間の流れを

蔑ろにする傾向、それは




このお話の中で

神様が憂慮する「こんがらがる」「うっとうしい」時間感覚は




いま、ふつうの人々の身の回りで

起きてる(笑)。





もちろん、神様には神様の視点があるし

ひとにはひとの、猫には猫の視点がある。



それぞれに、それぞれの視点に沿って

行動する事が幸せなのだ。



神様の視点に沿って、ひとが生きたから

それが、ひとにとって、幸せとは限らない。


つまり、ひとの生とは


生命が発生して以来の、生命が生き延びて来た

記憶が、それを培う為ののもので


幸せとは、その生を育くむ時に起こる

感情なのである。



つまり、生命のない神様や、天使が

高級な訳でもなく、上等な訳でもない。


視点が違うだけなので


ひとには理解できない、視点の基準が

あるのだろう。






「おはよ」めぐは、目覚め


夢の中であった事を、ほとんど忘れて

爽やかに起きる。



いつものように学校に行って、友達と

残り少なくなった高校の一日を過ごすのだ。











「おはようございます」と、クリスタさんは

丁寧にご挨拶。





めぐと、同じ歳(?)のはずだけど

物腰も柔らかで、おとなしい。



なんとなく、顔立ちも似ているような感じだけど。





夏休みの間だけ、クリスタさんに

図書館の仕事を代わってもらってた、めぐだけど



そのまま、めぐが学校に行っている間

クリスタさんが図書館にアルバイト、なんて

そんな感じになっている。



ここで暮らすには、やっぱり天使さんと

言っても


おこづかいくらいはあったほうがいいし(笑)


そんな訳で、昼間

クリスタさんは楽しそうに

図書館に行っている(笑)



元天使さんにしてみれば、人々が喜んで

くれる事をするのは


使命。



自らの生はないけれど、世界のために

なる事をするのが

天使のお仕事。



いまは、地上に降りた天使、クリスタさん。



がんばっている。





「いってきまーす」と元気に

めぐは、学校へ。



クリスタさんは、図書館へ。



ちょっと、今朝の夢見は

二人とも良くなかったけど。




爽やかな秋風と一緒に

歩いて、坂道を下る。




路面電車の通りまで来て

駅の方へゆくクリスタさんと

学校の丘へむかう、めぐと。




今朝、めぐは

なんとなく、駆けて行きたい気分だったから


路面電車にも、スクールバスにも乗らず。


歩道を駆けて言った。


靴音、軽やか。


めぐの高校は制服がないから

こんな時、靴が痛まないでいい。





ジョギングシューズで駆けていく

女子高生は、ちょっとめずらしいけど(笑)


陸上部でもなんでもない、図書委員の

めぐ(笑)

でも、運動は大好きだ。



いつもなら、学校のテニスコートに

リサの姿があって。



おはよ、って挨拶するのが日課。




今朝はでも、見当たらないその姿。




「おっかしーなぁ」と、めぐは

走りながら思う。





「めぐ、めぐーぅ、待って」と、スクールバスから降りた女の子が声を掛けた。





「あ、れーみぃ、どしたの?」と

めぐは、れーみぃの雰囲気に異変を感じる。




「国会がねぇ」と、れーみぃは意外な

事を言うので


めぐは笑う。




「笑ってる場合じゃないの!リサがね、

特待生、ダメかもしれないの!」と

れーみぃは、真面目な顔で言うので



めぐは、びっくり。


それで、テニスコートにリサの姿が無かった。




「でも、国会とつながんないよ」と、めぐが言うと



れーみぃは、かいつまんで話す。



この国の国鉄は、もちろん国家予算で動いている。




その予算、来年の予算を国会で

作っていて



国鉄を、他の国みたいに

民営化したらどうか、と言う意見が出て。




それで、特待生、と言う制度は

民営化したら続かない、と



そんな話。




「そんなぁ!今更」と、めぐは憤慨する。



でも、税金を払っている人達からすれば

そのお金で、大学へ行く人達がいるのは

ちょっと、勿体ないと思う人達も

いるかもしれない。



税金を払う人達が、みんな大学へ行ける

訳でもないから、で



それはもっともな事だけれど。





公平にしよう。


それは、めぐにも理解できる。


客観的なので、例えるなら神様の視点。


でも。



「特待生が無駄だと思わない。これからの

国鉄を支えるんじゃない。」と、めぐは思う。



それも、もうひとつの見解だ。

国の為の鉄道だから、国が人を教育するのは

国の為。



「そうよね、わたしもそう思う」と、れーみぃは言った。



それは、ひとりの視点。



いろんなひとの視点を持ってきて、折り合うのが

政治。





「鉄道だけじゃなくて、郵便局もね

民営化しようって言うの」と、れーみぃは


まだ決まってないけど、といいながら

でも、不条理な事、と心で思っているようだ。



「どうしていきなり?」と、めぐは

れーみぃに聞く。

すると、


「国のサービスだから、これまでは

あまり、利益の事は考えなくて。



でも、外国のお金持ちがね、他の国は

みんな、民営化して儲けているから


真似して儲けよう、って考えて。



この国の政治に、働き掛けているらしいの」と

れーみぃは言った。






「関係ないじゃない!よその国で儲けようなんて」と、めぐは怒る。





もちろん、商売の事ではなくて

それで、友人リサの前途が怪しくなるから

怒っている。



人間らしい視点である。




そこで、めぐは思い出す。

魔法使いルーフィ」と、神様が

以前、この国の人々の過剰な欲望を


神経内分泌的な手法で、粛正した事を。






よその国までは、手が回らないらしい。






しかし、この国が主体的に国鉄や郵便局を

国営で維持すると決めればいいのだ。





特待生は無駄じゃない事を

証明すれば、民営化がどうであれ




リサは、大学へ行ける。







「そのリサは、どこにいるの?」と、めぐは

大切な事に気づいた。






社会に出る事で、リサの運命が

そんな、大人の都合で左右されてしまって。




かわいそう。





どこにいるの?



リサだけじゃなくって、Naomiの

就職先、郵便局まで


どうして、よその国の

お金儲けの犠牲にならないといけないの??




と、めぐは思った。




れーみぃは「どこの国も、建国の頃は

鉄道とか、郵便局とか、電話とか、電気とか。


そういうものを国が作って。


それは、結構大きな資産なので

よその国のお金儲けに狙われるのね、

法律を変えて、民間の会社にして


よその国が、それを買い取るとか」そういう

事があるらしい。





でも、だからって。


リサやNaomiの来年を、犠牲にしないで。




めぐはそう思う。



でも、その前に気になるのは、リサの事。





めぐは、リサへ電話してみた。




Call!。




あっさり、ラインはつながった。


拍子抜け(笑)。





「ああ、めぐ?なに?


ああ、民営化の話?新聞で見た。

でも、すぐにって話じゃなさそうみたい。



それよっか、特待生制度が無駄だって


国会で言われてて。



国鉄じゃないけど、官僚もね、海外留学を

国のお金で行ってて。


帰って来ると、官僚辞めたりするので

それで、問題になったらしいの。



留学が。



だから、国鉄でも、って


そんな話みたい。



でも、元々国鉄のお金で

大学行こうって、ちょっと図々しかったもの(笑)。



仕方ないよ。




あたし、ちょっと出掛けてくるつもり。



これからどうするか考える。



うん、北のね、おじさんのとこ。


bluemorrisの。


おじいちゃんのお墓もあるし。




じゃね」と



リサは、案外さっぱりとした声だったけど。





でも、かえってそれが心配。


めぐは、電話を切って、れーみぃに

それを伝える。




れーみぃは「なんで今、旅するのかしら。


北の、お墓?



なんとなく、心配。」と

れーみぃはそれだけ言って。





大学諦めたって、今頃就職なんて

もう出来ないし。



まさか、おじいちゃんにお別れを言いに。






リサのおじいちゃんは、北の国境近くの

寒いところの出身。

今、おじさんの住んでいるところ、bluemorris。



そこに、お墓があって

おじいちゃんの兄弟が、お寺を構えている。



リサのお父さんが、南のこの地westbarryに自動車会社でエンジニアをするので


引っ越してきたのだけど




でも、死んだら魂は

その故郷に戻りたいと



そんな事を言っていて、それで

お墓はbluemorrisに構えたらしい。




国鉄職員は、その生涯を

転勤で終えるので



本当の出生は、bluemorrisではなく

rockmountainあたりらしいけれど。




そんな、流れて者人生を送ってまでも

鉄道に一生を捧げる、そういう人達が居て


今の、国鉄の繁栄がある。




出来上がってしまってから、外国の

お金儲けに使われるのは、さぞや無念だろう。





そんな理由でも、やっぱり


民営化の後、外国資本が入るのは

良くないと




そんなふうに、思う人達も多い。





郵便局も同じで、国民の資本を

信用で集めてきた。



それを、外国に左右されるのは

やっぱり良くない事だと


そう思う人達も多かったけど




民営化の向こうに、外国人の思惑があると

気づく人も少なかった。









とりあえず、国費の無駄遣いと言う矛先が



その、国鉄の特待生、留学制度に

向けられてしまった。





なにか変。


そう、めぐは感じている。


これまで、この国の政治家たちは

魔法使いルーフィ

の、神経内分泌回路選択型再吸収阻害魔法(笑)

のおかげで、この国の安全を最優先に

考えていたはず。



なのに、一時はルーフィの身そのものも

危うくなったし

魔法の能力を今は失って、元の世界に

戻ってしまったり。




何か、見えざる敵が

この国の前途に立ち塞がり



外国人たちの欲望を煽っているかのようだ。




神様も、気づいているのだろうか?







そう思いつつ、今は親友リサが心配で



とりあえず、リサのお家、お母さんに電話をしてみる。





「突然すみません、あの、めぐですけど、

リサちゃんの行方、ご存知ではないですか?」と



尋ねる。




リサの母親は、少し高ぶった声で



「たぶん、北に行ったのね。

リサの伯父が、今夜、夜行の乗務で

bluemorrisに戻るの。

始発駅のupperfieldに行ったのかしら」と。




車掌区が、好きで

よく行っていたから、と言う事らしい。





「じゃ、行ってみます!」と、めぐは


電話を切ろうとすると、電話の向こうから

気をつけて、と言う言葉が戻ってきた。





こんな時こそ、魔法を使わないと

魔法使いの沽券に関わると

思った訳でもないが

(笑)


めぐは、魔法を解放し、一気に空中へ飛ぶ。



F=mgh m=0



重力から解放されて、地球の自転に伴う

慣性から緩やかに解かれ



舞い上がる。



きょうは、月が近い。


質量を増やす過程で、月の引力も

影響に入ったりする。


0次元モデルを3次元に戻す間の僅かな時間に


得たエネルギーで、首都、upperfieldの


北へのターミナル駅、頭端ホームの

重厚な駅の真上に、ふわり、降り立った。






重厚な

屋根に、かっこよく舞い降りためぐ。


だけど、屋根から降りる扉がある訳でもないので


結局、屋根からもう一度

地上に降りるために

飛び上がった。




カラスさんとかに、追っかけられながら(笑)。



屋根好きのルーフィさんは

どうしたのかな?

なんて

言いながら(笑)。




15番ホームの端っこが

トンネルになってるので


そこの、トンネルよりに降りて。


ガード沿いに、駅の改札に向かった。





ふるい、この駅は


2階の手摺りから、階段まで


昔のままのところは、趣のある木造。


金属の飾りは、真鍮が

ひとの手で磨かれて、ぴかぴか。



お客様の通る場所でもないのに

2階への階段は、幅広く、国会議事堂のように


立派。




たぶん、昔は偉い人たちのお部屋があったのだろう。




建国の頃、鉄道を敷設したのは

もともと、民間の人たちで



自分の財産を使って、作った私鉄だった。


でも、戦争の時に

国に取り上げられたという歴史を



社会の時間に、習った事があると


めぐは思い出す。





リサたちみたいに、やっぱり政治の都合で


人の運命って変わるのだ。




そう、めぐは思ったりしながら



階段、重厚なそれを

歩いて昇る。



踊り場のところには、駅長さんの書いた書、が

書かれていて。




「お帰りなさい、ご苦労様」と

下から昇ると、読める。



2階から下る時には「元気で行って、いらっしゃい」と、書いてある。




そんなふうに、書に心を込めている。




温かい心が伝わってくるようだ。




リサも、リサのおじいちゃんも、おじさんも



こういうところで、家族のように


心をひとつにしていたのかな、なんて

めぐは、思ったり。





2階は、職員専用の場所だけど

回廊になっていて

1階の、お客様改札のところを

見下ろすような


その、書を見ていたりすると

時代を忘れてしまう。






昇った2階は、広いエントランスで


正面は、車掌区。


右手にロッカールーム。




ちょうど、でてきた駅職員さんに


話をすると



「ああ、その列車は夜の出発なので


そろそろ、点呼に来るかな。


それまでは、客車区で


車両整備をしていると思う」と。




寝台車なので、乗務員は

シーツとか、カーテンの取り替えをしている人たちのため鍵を開けてあげたり、


電気を付けてあげたり。



そういう事をして

時間を過ごしながら


列車のそばにいる。



そういう時間であるらしい。





その客車は、ここではなくて


北隣の駅の、外れに


車庫があると



その、年配の職員さんは


のどかに教えてくれた。




その表情だけ見ていると


国の政治がどうであれ、我関せず、そういう雰囲気に見える。





悠々としているようで


それは、この駅の佇まいそのもののようにも思えて




めぐは、なんだか


とても大きな、どっしりした

ものに触れているような、


そんな気持ちになって。







折角来たので、車庫の方まで

行ってみようと


ひょい、と、飛び立とうとして


めぐは、はた、と気づく。




「ルーフィさんみたいに、誰かに魔法を使ってるとこを

見られたら......」




そう思って、空を飛ぶのは止めて。



誰もいないガード脇の路地を


地上すれすれに飛んで見たり(笑)。


魔法もだいぶ、慣れて来たので



そんな事も出来る。



F=mghであるところのhが、ほんの少しだけ

現実よりも上になるように

モデル上のmを設定すれば良いのだ。





簡単に、そんな事が出来るくらい

魔法に慣れて来たのに



神様は、魔法をみだりに使っては

いけない、なんて言う。





まあ、今日は仕方ないけど。


普段は、あまり使わないようにしよう。



そんなふうに、めぐは柔らかく思う。






隣の駅は、すぐ。


でも、車庫はその手前から


ずっと、広がっている。



線路が、幾重にも。




広がって、いろとりどりの列車が、たくさん。



コンクリートの高架線路には


いま、主流のsuperexpressが

風のように駆け抜けてゆく。




颯爽としている。





視線を地上に戻すと

青い客車が、数本。




多くの人々が

車体を洗浄したり



車内を清掃したり。



ベッドメーキングをしたり。



取り替えたシーツや、枕カバーを

大きな袋に入れて

線路脇に置いた、クルマに積んでいたり。




力を合わせて、仕事をしている。





「結構、大変ね」と

めぐは思う。



普段、あまり

見る事のない



電車が、出発する前の姿。



こんなふうに、いろんな人々が

黙々と、仕事をしている。





でも、その人々の表情は

屈託なく明るい。





さほど、楽な仕事とも思えないけれど



仕事をきっちりと、列車のため、

鉄道のため。





そんなふうに気負っている訳でもないだろうけど


でも、楽しそうにみんな、働いてる。





「そういう気持ちに、感謝しないと」と

めぐは、それを見ていて思ったり。






感謝しなさい、と言われると反発したくなるけど(笑)



自然に、列車を愛する人々の姿を見ていると



自然に、頭が下がる。



列車を汚してはいけない、と



ゴミを落とさないように、なんてこれから気をつけよう、なんて

思ったりする。





そして、同時に思う。



こんなふうに、頑張って今まで支えてくれてきた人々に



御礼の意味で、お金を払うのは


意味はある。



でも、その鉄道を



外国のお金持ちの金儲けに使うなんて


すごく、嫌!。




気持ちってそんなものだと思う。






払うコインに変わりないけど


でも、外国のお金持ちが

汗もかかずに、儲けるだけだったら

払いたくない、と

そんなふうに思ったりもする。







郵便だってそう。



郵便配達の人々や、区分をする人、窓口の人。



みんなが、郵便を使う人のために頑張ってくれているから


郵便はある。



なのに、その仕組みだけを

お金で買い取って


儲けだけ貰おう、そんな人がいるなら



嫌。





それは自然な感情だと思う。







みんなのため、って言うのは



社会、自分たちを支えてくれてる人々なんだもの。




「お金で売ったりするからいけないんだ」と


めぐは思う。



この国の鉄道や、郵便を

外国のお金持ちに売る理由なんて、どこにもないんだもの。






ーー実際、めぐの感覚は正しい。


そういう、投資家と言うのは結局、お金を

転がして利益を得るだけだ。




なので、そういう人々は


仕事がある理由なんて考えずに

お金が儲かるように、それしか考えない。





外国に手紙を出すと、

国によっては

届かない事もあったりするのは


配達がお金にならないから、と



捨ててしまうような業者もあったりするから、なんて事を聞いた事があ。





この国では、郵便法、が

あって

そういう事をすると、厳しい罰がある、なんて話も聞いた事がある。




れーみぃの言葉だったかどうか(笑)。





国が、きっちりと、管理しているので

それにお金をかけているから。



もし、外国のお金が


そういうコストをお金儲けの邪魔、と考えると。


国民は、やっぱり困る事になるし

働いてる人々の、誇りもなくなる。




お金のために働くんじゃなくて


人々の為、使命を感じて。



そういう気持ちでないと、仕事は続かないと思う。





めぐは、働いてるの姿を見て

いろんな事を感じた。



リサが、恵まれているのは事実だけど。



おじいちゃんが、長年国鉄に勤めていたから

その、実績で

お金を貸して貰うのは

そんなに悪い事だとは思えない。



むしろ、そのお金を勿体ないと思う人々は

お金を儲けたいだけ、なんじゃないかと

そんなふうにも思ったり(笑)。





リサは、あの中のひとりになりたいと言っているのだ。






「これなのかも」と、めぐは思った。


オトナって、って批判的な気持になる事もある

18歳の自分。

でも、こういうひとたちは、嫌いになれるわけもない。


じぶんと同じ、なんだろうと思う。



がんばってるひとを、嫌いになれるわけもない。


ありのままで生きてる人を。



そういうひとたちが、この世の中を作ってきたんだ。



鉄道で言えば、荒地を拓き

敷石、枕木、レール。


トンネルや、橋。


駅を作ったり。



機関車を作って。

客車を引いて。


夜も朝も、列車を動かした。


そういうひとのうち、ひとりが

リサのおじいちゃんだった。


まだ55歳で、天国に行ってしまったのは

神様に好かれたから、なんだろうか。




....一度、会ったら聞いてみたい(笑)。





そういう人たちは、気持で動いている。


みんなのために、ひとりのために。







めぐ自身は、気づいていないけれど

魔法使いでなくても、世のため人のためって

みんながそうしている。




鉄道会社を最初に始めたひとは、もちろん

お金持ちだったけれども


じぶんのお金を使って、みんなのためにレールを敷いた。



それは投資だけど、それで自分も儲かるなら

悪い事じゃない。






...でも。



なんとなく、めぐは

世の中が見えたような気がした。


もちろん、18歳なりに、と言う事だけど。





そういう、人の気持を考えないで

自分の財布が膨らむことしか考えない心が

やっぱり、良くない。




------>>

ーーー例えば、ジグムント・フロイドが言うような

欠乏への無意識な畏怖が、金銭欲を生んでいるとか。



ーーアーサー・ヤノフなら、原初にある拒絶された愛の記憶が

その、利己性を作っているとか。


ーーアメリカの精神科医が使う、精神分析マニュアルDSMで言えば

障害を生む、要因がその利己の元である、とか。




結局、それはふしあわせだったちいさな子が

その、思い出を忘れたくてもがいているのだろうけれど

<<-----





.....などど、めぐが思っているわけではない(笑)。






けれど。


それを、感じ取っていた。






めぐは、気づいていないけれど

友達を助けるために、使う魔法だけど

みんなのためになる。


正義のヒロインなんて、ニガテだけど

友達のためだったら、魔法使うのも悪くないと

そんなふうにめぐは思った。



めんどいのはニガテだけど(笑)。



線路の外で列車のおそうじを見ていたら

黄色いヘルメットに作業服のおじさんが


「嬢ちゃん、中はいんな」と言って


作業員の詰め所に誘った。





いいのかなぁ、と思ったし

ちょっと怖い(笑)ような気持もあったけど


おばちゃんもいっぱいいたので、その笑顔に誘われた。




「どっから来た?」とか聞くおばちゃん。


「Westbarryです」と、めぐが答えると


「あんな遠くからぁ。旅?」と、別のおばちゃんが。



「友達を探して....。」と、めぐは、リサのおじさんが

Northstarの車掌で、ここに来ていると言うと



ヘルメットのおじさんは「ああ、あの。Bluemorris車掌区の専務さん。

今、列車にいるんじゃないかな。」と、いくつも停まっている編成のひとつを

指差して。



「おじさんに会いに?」と、さっきのおばちゃん。



「いえ、叔父様は親友のリサ、の、で。あたしはリサを探しに。」と

めぐは、それだけ言う。



ここに来なかったのだろうか?




と、それも聞きたかった。



黄色いヘルメットのおじさんは、日焼けの顔で

「リサちゃんは、家出でもしたの?」と、心配そうに。



そんなことまで話すつもりはなかったけど、でも

国鉄のひとなら、大丈夫かな、と思って


入社後、就学支援で大学に行くつもりで、でも

民営化でそれがなくなるかもしれない、と

リサは気にして。



おじいちゃんのお墓参りにBluemorrisへ、と。


そこまで言うと、ヘルメットのおじさんは

「嬢ちゃん、大丈夫。国鉄はなくならないさ。


そっか、リサちゃんってあの、機関車乗りの。」と


おじいちゃんの名前を口にした。



「おじさん、知ってるんですか?」と、めぐが言うと



黄色いヘルメットのおじさんは、にっこり笑って

白い歯を見せた。


「わたしも、時々入れ替えでね、Upperfieldからここまで

ご一緒した事があってね。いやぁ、あの人は立派な人だったね。」と



おじさんは回想。




「Bluemorrisで駅長に、って話を断ってまで機関車一筋で。

その後、こっちに来てからもUpperfieldの駅長を薦められても

機関車にずっと乗り続けた。


名誉駅長って、写真が飾ってあるよ。Upperfieldの駅に」と



おじさんは、遠い夕空に光る一番星を眺めて、そう言った。




「あ、そろそろNorthstarの整備が終わる頃だ。おじさんも来るよ」と


列車の方を見て。







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