1話
マンホールの中から飛び出てきたメガネは間違いなく俺のメガネだ。
そして、メガネはなんと俺の方を向くように動いた。
「お前が俺っちの持ち主の村井正和だよな?」
動くだけでなく、言葉を発して俺の名前を出した。
前言撤回。俺のメガネにはこんな機能ついていない。
「最新のメガネってすごいな~。動いたり、しゃべったりするのか~。俺のメガネはなくなってしまったみたいだし、とりあえず家にある予備のメガネで過ごすか。」
メガネがない状態で外をずっと出歩くのは危ないので一旦家に帰ることにし、上り坂を上ろうとする。
「おいおい!待ってくれ!ちゃんと俺っちの話を聞いてくれ!」
「悪い、人違いだ。お前の持ち主は俺と同姓同名の人だが、それはたまたまだ。他をあたってくれ。」
「いやいや、間違えてねぇから! その証拠に持ち主であるあんたの秘密を知っているからな!」
「ほぉ~。例えば?」
「例えば、自分はメガネかけているのにメガネっ娘は好きじゃないこと!」
「間違ってないが、別に秘密にしていない!」
「とにかく! そろそろ現実見ろ! 俺っちが、お前がさっきまでかけていたメガネだ!」
そんなこと、本当はわかっている。信じられないが、目の前のメガネは俺のメガネだろう。
だが……
「どうして動いたり、しゃべったりするようになった?」
「それは……」
「それは?」
そして、メガネの口から衝撃の言葉が飛び出てくる。
メガネに口はないが。