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縷々  作者: 奏氛紊
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彼が何処へ行ってしまったのか、それは彼にはわからない。

出発点を一にする相反した二つの終着点。一方の終着点へは二つの道、もう一方の終着点へは一つの道。そして、前者の二つの道のうちの一つの道と後者の一つの道は同じ道から成り立っている。歩みだしたならば。

彼はその同じ道の方を歩いた。だから、どちらの終着点へ辿り着いたかは、どちらであったとしても、彼以外の者にしかわからない。そしてもう一つの道、一方の終着点へのみ行く道を歩むことは彼にはできなかった。この道を歩めば、彼は自分がどの終着点へ辿り着いたのか当然知りえただろう。この道は一方の終着点へしか向かわないのだから。しかし、仮にこちらの二つの道から行ける終着点へと彼が辿り着いたのならば、彼がどちらの道から歩んで行ったのかは、どちらにせよ彼以外の者にはわからない。つまりあの水溜めの温い水と彼は、それぞれがどちらに辿り着いたのかは別として、結局は同じ道を反対に歩いたという観点から同類なのだ。彼以外の者にとって重要なのは、彼がどちらの終着点へ辿り着いたのかということだろう。それをそれらは幸運にも知ることはできる。そして、彼にとって重要なのは、自分がどちらの道を歩むのかということだ。

肉体は糸柳の幹の中へ宙吊りに片付けられた。体全体が安堵の表情を漂わせていた。

只、眼だけは其処に加わらずに、彼が気を失ったその根元に腰掛けていた。

白い金魚が一匹、また一匹と、計七匹泳ぎ現れて、警戒を示しながらも、眼に近付いていった。

眼を喰い終えると、金魚らは優々とその場を泳ぎ去った。

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