表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と繋がるクローゼット  作者: りゅん。
逆トリップ編
6/30

悪態を吐いてみる。

 

「ちなみに、今日の夕飯はキャベツの豚肉巻きです。」


さっさと作って話を聞いて、限界がくる前に寝よう。冷蔵庫を開けて、ふと気付く。

いつもはこの一品で肉と野菜がとれるし、ご飯を盛ったらこれで終わりなんだけど。流石に人にご馳走するのにこれだけは不味いよね。私でも分かる。


「あー、ご飯は朝に炊いたので我慢してもらうとして。きゅうりと・・・長芋があるね。」


じゃあ和えるか。長芋ときゅうりを細切りにして、めんつゆをかけて和えるだけの簡単料理だけど。急に来たんだ、それくらい許してもらおう。ぱっと作って隅の方に置いておく。


キャベツの豚肉巻きの方も手間はかかるけど簡単だ。

朝に仕込んでいった、塩をかけて水切りをした千切りキャベツを冷蔵庫から出す。この千切りキャベツを棒状に形作って豚バラ肉で巻いていく。そして、バラけないように巻いた豚肉の端を下にして焼いていく。一度フライパンに残った油を拭いてから、オイスターソースを絡めて完成。見栄えの問題でトマトを切って同じ皿にのせておく。


後は、コンソメスープに溶き卵を入れて塩と胡椒で味付けしたら充分だろう。



「さ、食べましょう。」


お皿をテーブルに持っていく。スープと和え物は男が持っていってくれた。

そういえば、この男はお箸を使えるのだろうか。お箸を取り出して訪ねる。


「お箸、使えますか?」


首を傾げられたので、スプーンとフォークも一緒に出してテーブルに置いた。にこにこと笑っている男は黙って席についた。見事に胡散臭い笑顔だ。それ以外の顔は作れないものだろうか。後せめてその冷たい目をやめて欲しい。切実に怖い。私はお箸とお茶を持って席につく。


「いただきます。」


男はまた首を傾げたが、私に倣って手を合わせた。そのままじっと私を見てくるので、失敗してないか気になって先に食べてみる。いつもの味に安心するが、男の口に合うかどうか。私が口に入れたのを見てから同じように口に入れた男の顔を恐る恐る伺う。


「どう、ですか?」

「・・・、」


喋れないのは分かってはいるが、他人に料理を食べてもらうというのはやはり緊張する。

黙って食べるから美味しくなかったのかもしれないと思ったが、その目元が緩んでいたので口に合ったのだろう。

さっきまで胡散臭いだの不審者だなんだと言ってたけど、こうしてみると男は随分と可愛いかった。キリッとした釣り目寄りの目尻は緩んで少し垂れ下がっていて、上品ながらも一心不乱に食べるその口、ものを沢山入れているらしく少しだけ膨らんだ頬が、冷たく感じさせる表情を優しくしているからかもしれない。ほら、あれだ、ギャップ萌え。

ペロリと平らげた男を見て、野菜多めの夕飯は成人男性には少し物足りなかったかもしれないと反省。まぁ、早く本題に入れるから追加は諦めてもらおう。本音をいうと私がしんどい。


「あ、何の用事か聞いてもいいですか・・・?」


お茶のお代わりを入れつつ尋ねてみて思ったが、喋れないんだったら用事とかできないよね、家の主と意志疎通できない訳だし。今日来た意味ないんじゃないの。

しかし男の方はそのことに気付いていたらしく、苦笑して手を差し出した。そして、口をパクパクと動かす。


 "れ" "い"


「礼・・・?」


こくりと頷いた男は私に小振りの宝石を押し付けると、さっと身を翻してクローゼットの中へ消えていった。

自分の料理をあんなに美味しそうに食べる人を初めて見た私は、男を呆然と見送る。


「・・・何だったんだ一体・・・。」


苦し紛れに悪態を吐いて、少しだけ笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ