表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と繋がるクローゼット  作者: りゅん。
逆トリップ編
19/30

怪しい人。

次の日。


帰宅ラッシュの時間帯に見つからないかもしれない、なんて思いつつ改札口まで向かったけれど、その予想と反して彼は既に待っていた。


「すみません、待ちましたか?」

「いえ、今来たところです。こんばんは」


所無さげに突っ立っている彼に駆け寄ると小さな笑みが浮かぶ。


「こんばんは。傘、ありがとうございました」

「いえいえ、お役に立てて良かったです」

「あれから大降りになったじゃないですか。ほんとに助かりました」

「夜中に警報出ましたもんね」


はは、と爽やかに笑う彼のキラキラスマイルは私の目に眩しい。ユダさん程顔が整っている訳ではないけど、優しそうな雰囲気とが物腰のやわらかさが相まって、最高級のイケメンと引けをとらないといってもいいレベルにまで達している。こんな優しくてイケメンの夫を掴まえた奥さんは幸運だと思う。羨ましすぎて涙が出てきそうだ。


「ほんとに、ありがとうございました」

「いえいえ、では、気を付けて」


私が警戒していることに気づいたのか、それとも嫁がいるからなのかは分からないが、送っていくと言わない人で良かった。

軽く会釈をして、帰宅ラッシュの真っ只中、それなりに人も多い隙間を抜けて駅をでる。今日は前の道路を通っている車がやけに少ないな、なんて考えていると、道路の向こう側にいる人と目が合った。


やけに浮世離れした人だ。背が高くひょろりとした体型に、何を考えているか分からないような濁った瞳。黒髪黒目のどこにでもいそうな顔つきの男なのに、異様に存在感を醸し出している。


ちょっとだけ、怖い。


まぁ、そんなことを言っても帰り道はここしかないんだけどさ。遠回りをすれば帰れるけど、そこまでして避けたい訳じゃないし。

目が合わないように下を向きつつ横を通りすぎる。


「あんたが、」

「え?」


振り返って見たが、男は既に角を曲がった後だった。


「‥‥聞き間違えた?」


周りが不審そうに見ているのに気付いて慌てて前を向く。これ凄い恥ずかしいやつだ。早く帰ろう。


私は知らなかった。ふわ、と風に乗って聞こえた声は確かに男が呟いたものであるということを。その声が木の葉の散る音と共に掻き消えてしまったことを。

だから私は、その後に続いた言葉を知るよしもなかったのだ。







 +++++





「‥‥あんたが、次のターゲットか。」


何をしたのかは分からないが、あいつに目を付けられるなんて災難もいいところだ。何もしなければ、目を付けられる可能性もなかっただろうに。


「ま、俺には関係ないか」


どうせ、今回もあいつの勝利で終わるのだろうから。



男はうっそりと笑う。そして、裏路地の暗闇の中へと消えていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ