3ヶ月記念日。(笑)
ユダさんと出会って3ヶ月が経った。
あの日、ユダさんは私の家で一夜を過ごした事に気まずく思っていたようだった。でも、私があまりにも普通だったので吹っ切れたらしい。ご飯の約束をした日は、私の家の来客用の布団を自分で引っ張り出して寝ていく事が多くなった。いや、ソファーで寝ようとしていたから布団を出したら次からは自分出すようになったのだ。
だって、夜の森は危険だとか言われたら何も言えない。じゃあ来るなと言えばいいかも知れないが、許してしまう辺り私も情にほだされている。
何もなかったから気にはしてないけど、女として駄目なのは分かっているのだから、ユダさんには気を付けて欲しい。
ユダさんからしてみれば理不尽だろう文句を、ご飯中にちょっと口を尖らせて言ってみると、ユダさんはそこには触れず、その顔似合わないな、と笑った。凄く失礼だよあんた。
他に変わった事といえば。
ユダさんは約束の日とは別に私の家にふらりと立ち寄るようになった。
家が留守の時もあるだろうに何で分かるかって、そりゃあ仕事から帰って来てテーブルを見ると食材が置いてあるからかな。
最初はご飯のお礼か、謝罪の意味かと思ったりもしたけど今なら分かる。絶対、お菓子を作れという催促だ。だって上白糖とか黒砂糖とか、紅茶とか。確実に食べたいものを作って貰うための手段に過ぎないと私は確信している。
まあ流石に毎回はしんどいから既製品も出すのだけれど。
私はお菓子作りが得意な訳ではないから全部既製品の方がいいと思うのだが、私の作ったお菓子を食べている時の方が機嫌がいいことに気づいてお菓子作りもいいかと懐柔されてしまった。
ついでに言うと、余ったお菓子をお土産にすると目を輝かせていたりもする。私はユダさんがいつかお菓子に釣られて誘拐される日が来ないか心配です。
しかもこれで甘いものに興味がなさそうな顔を保っているのだから笑える。目は口ほどにものを言うとはよくいったものだ。
「もうそろそろかな」
今日は休みだと告げたら、ユダさんは昼から来るという。私がどこかに遊びに行く予定だったらどうしたんだ。まあ、そんな予定ないんだけども。
ユダさんが料理をしているのを見たいと言ったことを律儀に守っている私は下準備を始める。
今日は簡単にサンドイッチにする予定だ。その代わりにこの前貰った上白糖でシフォンケーキを作ったので、お昼終わってすぐのティータイムとかでもでいいだろう。
まあ、準備といってもレタスを洗って千切っとくだけなんだけどさ。
後は、チーズを薄く切っとくか。チーズの種類はモッツァレラチーズだ。なるべく薄く切っていると、ユダさんが台所に姿を現して軽く頭を下げた。
「邪魔する」
「あ、ユダさんこんにちは」
「今日は?」
「サンドイッチです。後、足りないと思うので食後にシフォンケーキを」
「ケーキか。いいな」
心なしか目が輝いているのは気のせいではないだろう。
やっぱり甘いものが好きなんだ。
ニヤニヤしていると、そんな私をみて眉をしかめてからずいっと何かを渡してきた。
「わぁ、今日はベリー系ですか」
「ああ。」
今日はベリー系統の果物がお土産なのか。
ぶどう、ブルーベリー、ラズベリーは今日出すシフォンケーキに添えるとして、クランベリーは酸っぱいから砂糖付けかな?ジャムにするほど量はないし。
クランベリー以外を冷凍庫に入れてから具材作りを始める。
卵は塩と醤油を少々、砂糖は小さじ1くらいを入れて甘めの薄焼き卵を作る。
肉は二種類。鶏もも肉とこの前おつまみ用に買ったスモークタンを使う。鶏もも肉は砂糖、醤油、酒、みりんで甘辛く煮る。片栗粉を水でといてとろみを付けていく。
パンはクロワッサンパンを横に2/3くらい切れ目を入れて開く。開けた部分を下にしてトースターで焼いていく。
トマトを切って、チーズ、レタス、卵、スモークタン、鶏肉、全ての具材を挟んでから、最後に胡椒を振りかけたら完成だ。
ユダさんから貰った紅茶とサンドイッチ、後はシフォンケーキを順に机に置いて座る。
「いただきまーす」
「いただきます。」
一口口に入れて咀嚼する。サクッとした食感とふんわり香るバターの香り。醤油ベースの甘辛さとトマトの酸味がマッチしてなんとも言えない美味さを訴えてくる。薄焼き卵に入れた砂糖の甘みとと胡椒のピリッとした刺激がソースのアクセントになって、いくら食べても飽きが来ないのがこのサンドイッチの自慢だ。
「今日も美味いな」
「そう言って貰えて幸せです」
ユダさんの手元を見て、へら、と笑う。褒められると無性に照れて無愛想になるのは昔からの悪い癖だ。女の子は素直な方が可愛いというだろうに。
3つもあったサンドイッチをユダさんはぺろり、とあっという間に食べ終えた。そわそわしてる所から察するに、早くシフォンケーキが食べたいに違いない。
私も素早く食べ終わるとヨーグルトとアイスクリーム、そしてさっきのベリーをもって席に戻る。うん、凍ってないのは残念だけど、結構冷えたみたいだ。それらを適当に千切ったシフォンケーキに添えるように乗せていく。
「ケーキとは女性が好きそうな見た目の食べ物だと思っていたが、そうでもないのだな」
「え、盛り付けが下手って馬鹿にしてます?」
「いや、王都のケーキは生クリームと果物がメインだからな。宝石のような見た目なんだ。生地がメインのケーキは珍しい。地方ではみなこうなのか?」
それって地方馬鹿にしてる? なんて思うけど言わない。この3ヶ月でこういう時のユダさんの言葉には悪気はないことくらい理解しているのだ。ただ、本心が過ぎるだけで。
ユダさんは嘘を付くとき瞳の色、というか雰囲気が変わる。というか私が見つめるといかにも嘘をついてます、というように揺れるのだ。
あんたそんなんで男女の駆け引きとかできんのかとは思うけど、その顔なら女が寄ってくるんだろ羨ましい。
まあそんな訳で、ユダさんの嘘は分かるのであまり気にしない。
「地方がどうかは知りませんけど、シフォンケーキは重いものを乗せると潰れちゃうので。まあ、食べてみて下さいよ。」
首を傾げたユダさんはそっとシフォンケーキにフォークを入れた。
「!‥‥柔らか、かい‥‥?」
「どうです?」
ニヤニヤしている自覚はある。でも、驚愕に目を見開いているユダさんを見るのは面白い。
「うま、い、」
それ以上は言葉にならないらしい。味わうようにゆっくりと口に入れるユダさんにほっこりとした。
その日は満足したらしい。
ユダさんは夕方には身支度をしていた。次は果物のお菓子が食べたいと行ってくる辺りユダさんはやっぱりちゃっかりしてると思った。
レシピの紙を亡くして(誤字じゃないです!!)しまったので、思い出したら具材を変更する可能性ありですm(__)m




