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NEXT WORLD(仮  作者: ほうとう。
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なんとなく書きたくなった。

なんとなく。

謎の少年、自分の謎の力。

1.


たとえば。

たとえば、である。

所属する大学の研究室の帰り。

友人と夕飯の相談をしながら気だるい気分で帰り道を歩いていた誰彼刻に、突然ファンタジーもかくやといったルビー色の鮮やかにして現実味のない大剣が脳天めがけて振り下ろされた場合、いったい人はどんな反応を示すものなのだろう。


「だりゃぁああああああああああ」

よける、逃げる、そもそも気がつかないうちに叩き切られる、防御する、反撃する、選択肢は意外とたくさんあったと思う。

だが俺といえば基本的に日々の研究で鈍っていた身体はそうそう簡単に日ごろいびきをかいている反射をみせてくれるわけもなく、夕日に光った鮮やかな赤い刀身をきれいだなーと場違いに認識するくらいしかできなかった。

そもそもであとから考えれば、自分が今まさに叩き切られるという事実そのものが、その時は理解できていなかったのかもしれない。そりゃそうだ。

現代日本。

一般区域では包丁持ち歩いていたって通報されるご時勢にあって、通り魔というのは後ろからそっ刺しが一般的だと思う。正面てアバラとかあってなかなか刺さらないしね。

――って、そうじゃない。

「タスク!」

悪友にして親友の声が聞こえる。

研究だけで手一杯な筈なのに頭と身体の疲れは別と日ごろ主張するだけあって、俺の手を引いて彼は回避を試みようとしてくれたらしい。俺がそれを実際のところ払いのけたから、 声を上げたのだ。

やろうとしてしたことではない。

死にたいわけじゃない。

男の手を握りたくないとかそういうことではなくて。


――ギィイイイイイン


余韻を残した、なにか金属同士がつぶかりあう音が耳障りに世界に響く。

「へ?」

「チッ」

間の抜けた俺の声と、襲撃者の露骨な舌打ちはその距離だったからこそお互い聞こえたものだろう。

刹那の邂逅。

蒼い光越しに、目が合う。

―――――あおい、ひかり?

少年だった。

といっても数年前の俺たちくらいか。ハイティーン。

黒髪で、体育会系体格。顔立ちはぶっちゃけ俺より上の整いっぷり。

研究引きこもり系の俺よりずっとモテそうなのが、その金色の瞳でもってはっきりとした殺意を俺にぶつけてきている。

この凶悪な表情さえなけりゃ、女の子は放っておかないだろう。

しかしなんでかかんでか第一迅を防ぎきったせいで、その辺りの濃度が増した気がした。

―――それにしても、金色の瞳?

珍しいな 、とかきれいだなとか思う中、不思議と同時にこみ上げてきたのは懐かしさだ。

だがそれをどうしてと思うよりも先には、俺は自分が生きていることを認識する。

感情がぐちゃぐちゃだ。なにを考えているのか、とにかく自分がわからない。

そう、剣を、一足飛びに距離をとった少年が未だ構えている紅玉色の剣を俺は防ぎきったのだけが事実だ。

「え?え?」

「タスク、お前」

悪友が呆然と声を上げる。

こいつに聞けば何が起きたのかはわかるだろうが、果たして聞く時間があるかどうか。

そもそも少年はすでに第二迅に向けてモーションに入ってる。居合いとかそれっぽい構えで。

目を逸らしたらその隙を逃す気はないだろう。

そもそもで奇襲で殺せなかったことへの罪悪感すらこいつにはないことははっきり理解できた。

俺を殺すことへの執着。

こいつが持っているのはそれだけだろう。

殺意なんて、産まれてこの方ぶつけられたことなんてな……い、よな?

なら俺は、コレを殺意となぜ解る?


「タガワタスクだな」

低く出された声は変声期を終えたばかりなのか、それともこのあからさまな敵意からの産物なのか。

切りかかられた後になって、確認されるというのはいかんともしがたい違和感を覚える。

ここであえて違います、という選択もあるだろう。

友人はすでに俺の名を何度か呼んでるし、高河 祐。間違いなく俺の名前である。

「お前誰だよ。いきなり確認もしねーで襲ってくるとか」

悪友が不満をあげる。友人思いはありがたいが、挑発してもターゲットは俺のままだと思うんだけどその辺どうなんだろ?

っていうかコイツが俺の逃げられそうな外堀を埋めてる 気がするんだけどきのせいですか?

「オレは」

あ、名乗るの?

挑発に乗ったのか、別の意図があるのかはわからない。

それでも友人の声に彼は口を開こうとした。

名乗るつもりだったのか、それとも殺意の理由を説明しようとしたのか、それはわからない。

先ほどの奇妙な金属音が人を呼んだのだろうか。

多くの足音が聞こえてきたのを察して、彼はきびすを返したからだ。

「待てっ」

「そう言われて待つ奴ってお約束だけどいないよな」

「お前が命狙われたんだろーが!」

友人の声はごもっともなんだが、深追いして怖いことになりそうな本音がある。

待ってもらっても、何を話してくれるか怪しいぞ、あの目じゃ。

俺たちの言い争いにもならないやりとりが終わる頃にはもう少年の姿はない。

代わりにどうした、と駆けつけてきたのは部活やってた連中か。好奇心つえーな。

ここはわからん、俺等もきたとこ、というしかない。

命を狙われました、と説明する程自意識過剰じゃない。いや、警察届けた方がいいのか?

実際にじゅーとーほーいはんだろうし……

学生一団は周囲を調べていたのでソレにいっしょに真似事めいたことを行い、結局あきらめて解散、という流れに従う。

既に夜の帳は降ろされており、足元もおぼつかないまでになっている。

このあたりには街燈がなく、遠い町明かりと馴れで歩けてこそいるが、もう少しいくまで俺は隣を歩く気配に緊張し続けなければならなかった。

「お前、俺が命狙われてる理由知ってる?」

「知るか」

くだらない会話で友人だと確認していないと、不安になる程度には。

相手も承知なのだろう。不機嫌ではあるが、言葉を返してくれる。

「だよなぁ。手引きしたって感じでもないし……」

「お前俺のことそーみてたのか」

「まさか。信用してるよ」

でなきゃ忘れ物だと騒いでいきなり踵を返していただろう。

研究所での一晩の籠城くらい珍しくない。目的は違うにしても。

「明日警察いくぞ。通り魔がいるとかなんとかでいいから」

やっぱそういう話になるよ、な?


つーづーく。

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