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管理層の不思議

書籍第二巻発売記念SS!

①決定


 管理メニューで管理層にいくつかの部屋を設置し終えた考助は、スッと椅子から立ち上がった。

 その様子を見てコウヒとミツキが視線を向けてくる。

「どちらかへお出かけですか?」

「お出かけというか、そもそもこの場所のことを全然調べてなかったからね。どうなっているのか確認」

 その考助の言葉を聞いたコウヒとミツキは、互いに顔を見合わせた。

「あの、考助様? 調べるといっても扉は一つしかないわよ?」

 ミツキにそう言われて、考助は頷いた。

「それはそうだろうね。新しく作った部屋は、この制御室と転移門がある部屋の間に作ったから」

「なるほど。そうでしたか。それではさっそく?」

「うん。行ってみよう!」

 勢いづく考助のあとを、コウヒとミツキがついていく。

 

 そして、扉を開けた考助は、そのままの姿勢で固まった。

「あ、あれ?」

「どうされましたか?」

「どうしたの?」

 固まったままの考助を見て、コウヒとミツキが揃って聞いてくる。

「ええと・・・・・・あれ?」

 そんなふたりに返事を返そうとした考助だったが、目の前の光景に首を傾げて返事ができなかった。

 このままでは埒が明かないと判断したミツキが、考助の背後から扉の先の様子をうかがう。

「・・・・・・転移門がある部屋のままね」

「そうですね」

 ミツキと同じように確認したコウヒも頷いた。

「あ、あれ? ちゃんと部屋作ったよね? なんで変わってないの?」

「主様。落ち着いてもう一度確認しましょう。何かが足りなかったのかもしれません」

 慌てる考助に、コウヒが冷静に言葉をかけた。

「う、うん。そうだね。そうしよう」

 頷いた考助は、慌てた様子で制御盤のところへと向かった。

 

 管理メニューで調べた結果、管理層の場合は、各種設置を行った後に全体の変更許可の決定を行わなければならないことが判明した。

 考助は、それを行うのを忘れていたのである。

 最終決定を行ったあとに、扉を開けるときちんと制御室と転移室の間に作った部屋が作られていた。

 ちなみに、転移門以外に管理層の「外」に出る手段がないと知った考助ががっかりするのは、そのあとすぐのことであった。

 

 

 

 

 

②光源


 コレットとシルヴィアが管理層に来てから少しの間、ふたりは初めての環境で忙しい日々を送っていた。

 そんなある日のこと。

 食事の席でコレットがそれまで不思議に思ってきたことを口にした。

「・・・・・・そういえば、管理層ってどうして明るいのかな?」

 その素朴な疑問に、集まった者たちは互いに顔を見合わせた。

 そして、代表して考助が答える。

「考えたことなかった」

 塔の場合、限られた空間に入っているにもかかわらず、各階層には昼と夜が存在している

 ダンジョン層でさえ、場所によってはある程度の光は存在していた。

 そこから考えれば、管理層に光があって昼と夜がきちんとあるのはごく当たり前と捉えていたのだ。

 

 考えてみれば確かに不思議なことだと考えた一同は、管理層にある光がどこから来ているのかを調べ始めた。

 そうはいってもその調査はすぐに終わってしまった。

 というのも、

「駄目ね。やっぱり窓は開けられないわ」

 管理層の設置された各部屋には窓があって、きちんと外の景色も見えているのだが、開けることができない。

 ついでにいえば、その外に出ることができる扉もないので、外に出て調べること自体ができなかった。

 さらに、窓からの採光もそうだが、最初から管理層にある制御室と転移室にも不思議なことがある。

 そのふたつの部屋には窓が存在していない。

 それにもかかわらず、昼間並みの光があって常に明るいのだ。

 何かの魔道具のようなものがあるのかもしれないという話も出たのだが、それも決定づけるだけの証拠もなかったのである。


 さんざん調べ回った結果、結論としては「塔(管理層)の不思議」ということになった。

 ちなみに、光源と同じように上下水道もどうなっているのかを調べたのだが、これもまた同じ結論に至ったのであった。

 

 

 

 

 

③家具


「不思議といえば、そもそも管理層にある家具とか本とか、設置できるものって誰が作っているんだろう?」

 光源を調べてからしばらくしてから、考助が食事の席でそんなことを言い出した。

 当然ながら、管理層にいるメンバーで、その答えを持っている者は誰もいない。

「確かに不思議といえば不思議じゃが、何か問題でもあるのかの?」

「いいや、特には。なんとなく不思議に思っただけ」

「でも、確かに誰かが作ったものと考えるのが自然ですよね。一体、誰が作っているのでしょう?」

 シルヴィアも首を傾げながらそう言った。

 

 ちなみに考助はこの場で「妖精さんが作ったんだ」という冗談を飛ばすことはしなかった。

 この世界に妖精がいることは、すでにコレットから聞いて知っている。

 冗談で言ったつもりが、冗談と受け止められない可能性が高いのだ。

「いやまあ、そう考えると、誰が作っているかなんてひとつしか考えられないんだけれどね」

 ひとり、ではなく、ひとつというのが重要なポイントだ。

 塔の管理層に関与することができて、作ったものと神力を交換して嬉しがる存在は、一つしかない。

「あー、そう言われてみれば、そうよねえ」

 考助の言葉に、思いっきり納得したようにコレットが頷いた。

 周りを見ると、他のメンバーも似たり寄ったりの顔をしていた。

 

 エリスと交神を行ったときに、シルヴィアがそのことについて確認をすると、あっさりと返事が返ってきた。

『勿論、神域にいる神々が作った物ですよ』

「やはり、そうでしたか」

『全部が全部そうだというわけではないですけれどね』

「といいますと?」

『ごめんなさいね。これ以上は詳しくは言えないのです』

「そうですか。わかりました」

 エリスが申し訳なさそうに言うと、シルヴィアもあっさりと頷いた。

 神々には神々の事情があることを、しっかりとわきまえているのだ。

 どんな神が、何を作っているのか、シルヴィアとしてはぜひとも聞いてみたい衝動に駆られたが、それも控えておいた。

 必要があればそのうち教えてくれるだろうと考えているのである。

 結局この日の交神は、これだけを話して終えることとなった。

 

 シルヴィアがエリスから聞いた話は、その日のうちに管理層のメンバーに伝えられた。

 普段自分たちが使っている家具が、実は女神たちが作った物だと知って、より大切に扱うようになった・・・・・・のだが、それもひと月も過ぎると以前のように戻ることになる。

 このあとに入ってくる他のメンバーにそのことを指摘されるまで、気付く者はシルヴィアも含めて誰もいないのであった。

遅くなりましたが、第二巻発売記念SSです。

二巻をご購入いただいた方なら知っていると思いますが、丁度三巻の作業とかぶってしまいまったため、発売日ちょうどに投稿できませんでした><


短編集三つを詰め込みましたが、いかがでしたでしょうか?

これだけ短い話だと、普段の本編にも入れる機会がなかなかないですからね。

ちなみに、最後の話で、シルヴィアが神様が作った物を乱雑に扱っているのか、という疑問が出るかもしれませんが、そもそもシルヴィアは普段から道具を乱雑に扱ったりしていないので、特に問題はありませんw

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