2.異世界の問題
「………、…リア………、マリアっ!!!」
「はいっ!!!」
―ガバッ!!!
マリアは自分を呼ぶ声に驚いて、勢いよく上半身を起こした。
「マリア、起きたか?」
漣が頬杖をつきながら、彼女の寝起きの顔を見上げていた。彼はどこか楽しそうだ。
「…ここは何処」
「俺の家。もっと言うと、マリアは俺の部屋のベッドで寝てた」
(知らない女子を自分の部屋に連れ込む男子ってどうよ!?)
普通の男子は付き合ったばかり(?)の女子を、気絶していたと言えど、自ら家に上げないはずだ。
―友達0のボッチ必須条件を満たした非リア充女子を、自宅のみならず自室に連れ込む、リア充で当たり前のイケメンが居るはずない。
…と言いたいところだが、そんなことをする男子がマリアのすぐそばに居るのだから、これは迷信だと認めざるをえない。
まして、ここは安●首相は通じてもア●ノミクスは通じない、がさっきまでいた現実と似ているようでそれとは全く違う異世界。少女マンガのような話がいつ発生してもおかしくはないのだ。
しかし、少子化問題はさっきまでいた現実でも起こっていた。それは色々な原因がかさなって発生してしまい、未婚化・晩婚化・晩産化したことも原因と考えられている。
そこで政府はその3つは若年のうちから対策すれば少子化を防げるだろうとかんがえ、“15才になったら恋人をつくるように”―「リア充政策」に乗り出し、「非リア充対策法」を制定し、2014年12月10日から施行した。つまり、若いうちに男女のペアをつくらせることにより、未婚化と晩婚化を防ぎ、既婚者を増加させると同時に早婚化させようとしているのだ。
「っ!!!」
漣はベッドに乗り上がり、起きていたマリアを床ドンするかのように押し倒し、組み敷いた。
(近い…っ!!!)
恋愛経験0の彼女にとって至近距離に迫られることは刺激的で、彼にいとも簡単に射竦められしまう。
「とりあえず、俺の彼女になれ。いや、ならせる。さもないと、一生ピンクマンにつきまとわれるぞ?」
漣の小悪魔のような甘い囁き。彼はマリアを完全にオトそうとしている。
「やだね!」
しかし彼女は抵抗する。
(…どっちも嫌だ!)
―なんて異世界に転生してしまったんだろう。
「私はあんたの彼女になる気なんてない、彼氏にする気もない!…もぅ、放っておいてよ!」
マリアは力一杯に漣を押しのけようとした。しかし彼女が運動部員であっても、彼の力には適わなかった。
(色白のくせに…)
彼女は彼が色白なのを理由に油断していた。おそらく、バスケットボール、バレーボール、新体操、など何かしらの室内スポーツはしているからだろう、鍛えられていた。
「色白だからって、ひ弱だと思うなよ?」
漣がマリアの両手をベッドに縫い付けるかのように強く押さえつけ、彼女の両手の自由を奪う。
「放してっ!!!」
「やだ」
マリアはせめてもの抵抗として、自由な脚を暴れさせた。それでも漣の身体はびくともしない。
「…諦めろ」
低く地を這うような声。それに怯えたマリアはぴたりと抵抗を止めた。
(怒らせた…?)
漣の目は笑っていない。まるで闇の中で燃える炎のように、彼の瞳のなかでマリアに対する怒りが揺れているようだ。
「ご、めんな、さい…」
―漣からは逃げられない。
「…意地っ張りないけない子には、オシオキしちゃおうかな」
漣の怒りは消え失せたようだが、恐ろしさは消え失せていない。何かしらの作戦があるのが、彼の目に表れている。
「…そうだね」
(…男子怖いーーーーーっ!!!)