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巨人の殺戮兵器

作者: コウマ

 嘗てこの地は、数匹の巨人が支配し闊歩していた。

 彼らは強靭な肉体と別に、有する知能は他種族を遥か下に仰ぐ程。


 しかしその強大な能力をもってしても、時の流れには逆らえずに彼らは幾つかの物を残して姿を消した。

 その次の世代であり時代を支配するは小さく、そして素早く黒く硬いモノたち。

 巨人たちよりも弱く、その分繁殖能力が高い彼らは見る見るうちに増えていく。


 この地で全員が幸せに暮らすには、少々多すぎるまでに。

 不足は争いを産み、争いは憎しみを産む。憎しみは世に野望を生み落す。


 そして野望は強大な支配者となって、彼らの前に現れた。

 麻薬的に支配者とその配下たちを酔わした、秩序や理想と言った耳触りの良い言葉。

 

 言葉に溺れ自分に酔う彼等は、しかしだからこそ狂ったように強い。

 見る見るうちに、その地は支配者の手に落ちていった。

 支配者に刃向う者、支配者の気に障るものは容赦なく迫害される。


 しかし強く抑えればそれだけ、反発する力は強くなっていった。

 反抗しうるモノたちにも、力あるものが現れ始める。


 支配者と反抗勢力。それぞれがぶつかり合い、やがてパワーバランスは崩れていく。

 支配者が有する軍の戦力はそがれ、徐々に追い詰められていくモノたち。

 その首が反抗勢力に渡る時はもう、直ぐ近くまで来ていたのかもしれない。


 しかし思想や感情はどうあれ、支配者は諦めなかった。

 彼には最後に最凶の奥の手を隠し持っていたのだ。


 それは彼らの技量では、決して生み出すの事が出来ない物。

 だが嘗て、この地には彼等よりも遥かに優れた種族が存在していたのだ。

 巨大な彼らからすれば手のひらサイズのそれも、支配者や反抗勢力のモノたちにとっては山に等しい殺戮兵器。


 羽を広げ、飛翔する支配者。

 反抗勢力が後を追うも、既に支配者はその悪魔を起動させる岩盤に手を置いていた。


「ゴキゴキゴキぃぃぃぃぃ!」


 支配者は、その身に残る全ての力を使って岩盤を押す。


 プシィィィィィィィッ! と山頂から放たれるは白煙。

 その白煙は重力に惹かれるように、この地の全てを覆った。


「ゴキキキキゴキッ!(これで終わりだ! バル……サン!)」


 全ての罪を拭い去る死神の様に、数時間この地に止まった白煙。

 それが晴れた時、同時にその場に会った全ての命も消え失せていた。

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