あの日にかえって
幼い日の記憶は、定かでないが、2人でよく遊んでた女の子が、いた。その子は、いつも、ピアノをひいていた。名前は、佳子ちゃん。顔に、大きなほくろが、あった。
私の名前は、幹雄、28歳。中学校の体育の教師だ。もう、遠い記憶に、思いをはせる自分になったのだな、と、ふと、思っていた。あの頃は、とても、楽しかったな、と。毎日、佳子ちゃんと、おままごとをしたり、かくれんぼをしたり、いろんなことをして、あそんだ思い出がある。
今は、幹雄は、東京での一人暮らしだった。
あの時は、田舎で、暮らしていたから、のどかな田園風景が、広がっていた。佳子ちゃんが、今、どうしているか、とても、気になっていた。探す手だては、なかった。
幹雄は、仕事終わりに、ジムに通っていた。
ジムで、体を鍛えていたのだ。
その他にも、英会話も、習いにいっていたのだ。いずれ、海外旅行をしたいと思っていたので。仕事以外にも、楽しみを見つけて、充実した毎日を送っていた。彼女が、いないことを除けば…
職場にも、女性教師がいたが、職場恋愛は、なかなか、難しかった。あまり、人付き合いのいい方ではない、幹雄にとって、彼女探しは、至難の技だった。だから、小さい頃の記憶の中の、佳子ちゃんに、思いをはせていた。
探せるものなら、探し出したかった。
ある日、幹雄は、旅行会社に、海外旅行のパンフレットを、もらいに、出かけた。その旅行会社の受付の女性は、とても、親切で、優しかった。ネームを見ると、佐々木佳子と書かれてあった。佳子という名前に、思わず、目がいった。でも、残念ながら、顔にホクロはなかった。人違いだな、と、思っていた。
素敵な女性だなと、思いつつも、パンフレットをもらって、帰ってきた。幹雄は、受付の女性の事が、気になっていた。あんな感じの人と、付き合う事ができたらなと、思っていた。
再度、旅行の申し込みで、旅行会社に行った。旅行の申し込みも、佐々木佳子さんが、テキパキと、やってくれた。どうにか、接点がないかと、思っていた。
要件も、済み、帰るしかなかった。
そして、いよいよ、海外旅行に出発した。はじめての、海外旅行は、シンガポールにした。とても楽しい旅行だった。
日本に帰って、まず、最初に行ったのが、佐々木佳子さんがいる、旅行会社だった。おみやげをかってきたのだ。お世話になったので、渡すことにしたのだ。彼女は、とても喜んでくれた。「今度、お食事でも。」と、彼女の方から、言ってくれた。とても嬉しかった。
約束の日、カフェで、幹雄は、待っていた。佳子さんが、遅れて、入ってきた。まずは、注文をして、2人で、話し始めた。シンガポールでの、楽しかったことなど、話は、尽きなかった。彼女も、独身だったのだ。26歳だとのこと。仕事に明け暮れて、婚期を、逃していると、話してくれた。いろいろ、話していくうちに、同郷だということが分かった。幹雄は、少しビックリした。小さい頃の佳子ちゃんとは、違っても、同じ県の出身だったことに、驚いた。幹雄は、聞いてみた。「ピアノは、ひけますか?」佳子さんは、「小さい頃、ひいていました。」と、答えた。それにも、幹雄は、驚いた。ホクロのことは、さすがに聞けなかったが、なんとなく、親しみを感じるようになっていた。
「また、会ってもらえますか?」幹雄は、行った。佳子さんは、軽くうなずいた。幹雄は、とても嬉しかった。まだ、付き合うところまでは、いってないが、進展したことに、嬉しさを、隠しきれなかった。
それから、たびたび、2人は、食事をする様になっていった。幹雄は、ジムや英会話以外にも、楽しみができて、嬉しかった。
ある時、佳子さんが、成人式の写真を持ってきて、見せてくれたのだ。それは、着物姿で、とても、きれいだった。それよりも何よりも、幹雄が、驚いたのは、ホクロが、顔にあったのだ。幹雄が、「あれ!」というと、佳子さんは、「ホクロのこと?」と、聞いてきた。幹雄は、「うん。」と、言った。佳子さんは、「成人式のあと、ホクロの除去手術を受けたの。」そう、言った。
幹雄は、本当に、ビックリして、言葉も、出なかった。佳子さんは、あの時の、佳子ちゃんだったのだ。また、会えたのだ。本当に、嬉しかった。
幹雄は、佳子ちゃんに、自分のことを覚えてるか、聞いてみた。そしたら、なんとなく、うっすらと、覚えてる、とのこと。幹雄は、嬉しくて、こんなこと、あるのかな、と、思っていた。
また、あの小さい頃の時のように、仲良く、楽しく、佳子ちゃんと、やっていきたいな、と、思っていた。




