神殿勤めのつぶやき
「はい、傷は塞がりました。お大事になさってください」
ふくらはぎを大きく切って、呻いていた石工さんに声をかける。
今日の治療はこれでようやく終わりだ。また定時を過ぎてしまった。
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この町の神殿では、怪我や病で苦しむ人達が毎日やって来る。
町内には薬師の店などもあるけれど、普通の薬は即効性がない。
例えば慢性的な肩こりや肌荒れ、そんなに深くない傷とかなら、
普通は神殿ではなく薬師を頼るのだけど、突発的な大怪我とか、
薬も飲むことが出来ないような状態の人は神殿に運ばれてくる。
治癒術が使える下級神官と見習いは、わたし含めて四人だけ。
それなりに大きい町なんだけど、神殿はここ一か所しかない。
なかなか手が回らず、患者さんを待たせてしまう事もしばしば。
患者さんの家族から治療が遅いと怒鳴られる事もある。
一生懸命やってるんだけどなぁ。
ここの責任者は中級神官の男性だけど、実は治癒術が使えない。
使える神聖魔術は疲労回復の出来る《聖者の慰労》ぐらい。
見た目はやさしそうなおじさんだ。若いそうだけど。
十二歳のわたしから見ると、よく分からない。
なんでも実家が宮中伯で、内務局?の偉い人だとか聞いている。
お貴族様が箔をつけるために、子女を神官にねじ込むのだとか。
まあ事務作業はきちんとやってくれる人なので、文句はない。
「治療まかせっきりですまないねぇ」とか寂しそうに言ってる。
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神殿での治療の仕事は、結構忙し目だ。
朝起きたら食事の支度を下級神官と見習いが総出でやって、
食事が終わったら、午前中の治療。午後も食事後はまた治療。
治癒術を学んでいる最中の人達は午前中、学舎で治癒術の勉強。
午後は食事の後、洗濯や薬草畑の世話や事務作業の手伝いを。
夜は食事前に神殿の整備と掃除。終わったらみんなでお祈り。
あまり蝋燭も無駄に出来ないから、すぐに就寝時間。
お給金は出るのだけど、それはお貴族様からの寄付や治療費と、
薬草畑で採れる薬草の売り上げからなのであまり高くない。
一般の人達は、治療費が格安なのだ。ご飯一食分ぐらい。
富める者からは恵みを、貧しき者達には施しを、
という方針は、すごく分かるんだけど…
平民だったわたしとしては「美味しい食事が食べられる」と聞き、
他人よりやや多めの体内魔素を買われて神殿に入ったのに、
やってる事は大変でも、食事は変わらないのは納得いかない。
貯めてるお給金、余裕が出たら何か町で食べようかな。
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薬草以外に、皆が食べるために野菜も少しだけ作っているけど、
たまには卵料理とか肉料理とかが食べたい。
もう、一年ぐらい前だなぁ。お肉入った煮込み食べられたの。
お貴族様達五人の大怪我をみんなで治した時。
神殿責任者の中級神官様が、見たことのない悪い顔をして、
「今夜は奮発して美味しいものを食べましょうか」なんて言って。
なんでも昔迷惑をかけられた人達で、治療費を「ほんのちょっと」
高くさせてもらった、なんて笑ってた。
一体あの人達に何されたんだろう…。
◆
うれしい。治癒術を習得した子が三人も増えた!
そうなると畑の仕事のほうが大変になるかな?と思ったんだけど、
「温室」という、安定して作物を育てられるものが増えたので、
町の人達から神殿に野菜類の寄付がよく届くようになった。
ごくたまーにだけど、果物もある!あまーい!おいしーい!
野菜を育てる肥料も、いいものが出回ってきたんだとか。
育てるのが薬草だけになれば、畑のほうも負担が減る。
それと同時に、卵が採れる鳥を飼う農家さんも増えたらしい。
時々だけど、寄付のおかげで前よりは卵料理を食べられる。
今度はお肉の寄付とか増えてくれないかなぁ。
この肥料はゴブ製ではありません。開発者は同一人物ですが。




