梅雨だからねぇ
「うむ」
草刈りお願いします!と言う私たちのリクエストに応じた白龍さまが、徐に聖域の中をゆっくり端から端まで息を吹き付けていく。
スパパパパパ〜!
ちょっと不揃いな田んぼの様にぼうぼうに生えていた草が風で切り飛ばされ、地面に落ちた。
「「ありがとうございます」」
これを草刈機でやろうと思ったら途轍も無い重労働になっていただろう。
ウィンドカッターもどきなブレスで草を一掃出来る白龍さまがいて、本当に助かった。
と言うか、ある意味白龍さまが居なかったら聖域自体が無かったので草刈りの必要も無かったので、白龍さまがいて良かったと言うよりも、気軽に草刈りを頼める様な白龍さまで良かったと言うべきかな?
「取り敢えず、段ボール箱を適当に置いて回ろうか」
碧が倉庫代わりな洞窟へ向かいながら言った。
「だね!
タヌコ、コン吉、ソラ、ヒコ〜!
またお手伝い宜しく〜!」
魔力を込めて、聖域での手伝い担当な使い魔の霊達を喚ぶ。
正式な召喚にしようとはしていないので、本霊達が来たくなければ無視できるしここら辺を離れていたら聞こえない。
だが、どうやら魔力を貰って塵取りや熊手を動かして刈られた雑草を集めるのって楽しいのか、冬眠らしき時期に連絡が取れなくなった熊霊だったタロウ以外は声を掛けると毎回直ぐに集まってくるんだよね〜。
『久しぶり!』
『早く魔力を頂戴!』
『僕の塵取りを出して!』
『明日は雨だよ〜』
使い魔の霊達が飛び出して来て、思い思いな挨拶(?)をしてくる。
「え?!」
「どうしたの?」
私が声を上げたら倉庫から段ボール箱を取り出して来た碧が声を掛けてきた。
「明日雨だって」
まあ、梅雨の時期なんだし不思議ではないんだけど。
困る。
「う〜ん、濡れると泥だらけになったり、後からカビが生えそうだね」
碧が悩ましげに言った。
梅雨の時期は雑草集めが出来ないとなると、年間収穫量がグッと減りそうだなぁ。
どうするか。
『雨が入らぬ様に、数日だけ結界を張っておけば良いじゃろう』
白龍さまが姿を現し、ふいっと尻尾を振った。人避け以外の結界が追加されたのが感じられる。
確か、ここへ藤山家関係の人間以外を侵入不可にしている結界を展開しているのも白龍さまなのだ。
雨を弾く結界の方が簡単なぐらいだろう。
「良いんですか?」
碧が尋ねる。
『ずっと雨避けをしておると草が全て枯れてしまって土埃が酷くなるが、お主らがここに居る数日間なら構わんじゃろう』
白龍さまがあっさり応じた。
「助かります!」
折角曇っているから、今のうちに出来るだけ作業をしちゃいたいのに雨だとダメとなると困るからね。
本当に助かる。
ついでに気温と湿度も少し下げてくれたらもっと助かるんだけど、そこまでは贅沢を言うべきじゃ無いよね。
神様にそんな都合のいい願い事はしない方が良いだろう。
ここ数日、ここら辺ではまだ梅雨が明けていなくて曇りなのに妙に蒸し暑くなってきたんだけどね。
西日本が猛暑らしいから、そっちから暑い空気が流れ込んできているのかな?
せめてもう少し湿度が低かったら過ごしやすいのに。
取り敢えず、しっかり水分補給をしながら作業しないと。
使い魔達が生きた動物じゃなくて実体のない霊で良かったよ。
「そういえば、今度碧のご両親が誰か使い魔になる気のある霊を紹介してもらいたいって頼まれたんだけど、鳥や熊や鹿の霊ってどこら辺で探すと沢山いるかな?」
倉庫もどきの方へ塵取りと熊手を取りに行きながら使い魔達に尋ねる。
聖域って魔素の濃度が濃いから、霊が物を動かしたりするのには向いているんだけど、あまり遊ぶ対象になるような物がないから普段はそれほど霊がいないんだよねぇ。
周囲の森とか、どこか諏訪湖に流れ込む川のそばにでも行くと良いかな?
『興味がある霊に声を掛けて集めておこうか?』
ソラが聞いてくれた。
「そうだね〜。今日の作業が終わったら、お願いできる?
明日の朝来るから」
頑張って遠くまで声を掛けて集める為に魔力を消費しなくて済むのは助かる。
『遊ぶのが好きな仲間はそれなりにいるからね。
色々物を動かせるなら喜ぶよ』
ヒコが応じる。
「う〜ん、物を動かすのはどこで、何を動かして良いかは契約者としっかり話し合っておいてね」
霊障だ!って騒ぎになって碧パパへ除霊のお願いが氏子さん達から来たりしたら、笑えない。
よその人がいない時に家の中でってぐらいにしとかないとね。
あと、お二人の希望は人探しがメインで、雑草集めはあまり無いんじゃないかなぁ。
境内の掃き掃除とかしている時にさりげなく目立たないように手伝うのは喜ばれるかもだけど。




