先ずは下調べ
生霊の元だったらしき少女の病室をハネナガに暫く覗き見(プラス盗み聞き)して貰ったところ、どうもあの少女は数年前から原因不明な病気のせいで時折極端に体が衰弱する様になり、最近はベッドから起き上がるのすら難しい状態なので入院しているらしい。
いや、それさぁ。
幽体離脱して人を突き飛ばしたりしているから、生命力を削っちゃって衰弱してるんじゃない??
幽体離脱するのが自分の意思でなのか、何かの拍子に起きてしまっているのか知らないが、交差点の側の危険な場所で人を突き飛ばしているのは自発的にやってるよね?
何とも言えない自業自得な入院状態だが、本人はともかく突き飛ばされている人がそのうち死んでしまったら問題なので、これは幽体離脱しない様に魂を体に封じるべきだね。そうすれば健康状態も改善する可能性が非常に高いし。
悪事をしていたせいで私の目について、無料で治療(と言うべきか微妙だけど)される事になるってちょっと業腹だけど、まあしょうがない。
『何時ぐらいに本人が寝るのかとか、親が来て帰るタイミング、看護師の見回りの時間とか、ちょっと見ておいてくれる?
そう言う動きがあった時に随時教えてくれたらこちらでメモするから』
ハネナガに追加で見張りを頼む。
『分かった』
出来れば日中に他のお見舞いの人間に紛れ込んで入院フロアに入り込みたいところだけど、それが無理そうだったら夜に忍び込まなきゃだなぁ。
まあ、幸い比較的近所だから電動キックボードでも借りて行けば夜でも直ぐだ。
考えてみたら夜中の方が車も歩行者も少なくて良いかも?
「あの生霊見つけた〜。
どうも、隣駅との間にあるあの大手病院に『正体不明の病気』で入院しているみたい」
ハネナガに頼み終えて、視界共有を切って目を開ける。
目の前にこちらを見ている碧がいたので、今回の成果を報告した。
「お、良かった!
正体不明の病気って……死にそうなの?」
生霊状態で動き回って人が死にそうな悪戯(嫌がらせ?)をする様な人間でも見捨てずに治療すべきかと考えたのか、碧が微妙な表情で聞いてきた。
「幽体離脱しちゃうのは体質か、意識してやってるのかは不明だけど、最初は偶然だったんだろうね。
今虚弱体質になって入院しているのは、多分生霊状態で人を突き飛ばしたり嫌がらせに落とした物を更に遠くへ蹴り飛ばしたりしているせいだと思う」
「なにそれ。
つまり、自業自得?
それなりに何度もやっていれば、生霊状態で人や物を動かそうとした時に体が弱っているって分かるもんじゃないの??」
碧が『理解を超える』と言いたげな顔で聞き返してきた。
「ある程度の思考能力があったら因果関係に気付きそうなもんだけどねぇ。
もしかしたら、幽体離脱したら毎回何かを動かそうとして弱るせいで、幽体離脱そのものが原因だと思っているのかも。
そうなると、自業自得と気付いていない可能性もワンチャンあるかも?」
そうなると幽体離脱そのものは今でも自分の意思でやっている訳ではないのかな?
意識がある状態だったらそう簡単に意識が体から抜け出ることは無いはずなんだけどねぇ。
衰弱しているから昼食後に意識を保てなくなるんかね?
それで昼寝時に幽体離脱して道行く人へちょっかいを出して更に生命力を削っちゃって衰弱するなんて、アホの極みな悪循環だけど。
自分はそのうち死ぬのだろうと思うほど弱っているから、他の人が元気なのが許せなくて八つ当たりしているんかね?
それとも元々人を痛めつけるのが好きで、昼間にしかあの交差点に姿を現さないのは他の時間帯に寝て幽体離脱する時は病院内で悪戯をしているからなのか。
そうだとしたら、病院内で誰かを既に死に至らしめている可能性もあるけど……流石に子供だからねぇ。
あまり私が勝手に罰する訳にはいかないか。
「どうするの?」
碧が聞いてきた。
「取り敢えず、1日ぐらいはどんなペースで本人と周囲が動くのかをハネナガに観察しておいて貰って1日のルーティンを確認して、理想としては明後日の昼……か、日中は無理そうだったら明日の夜にでも幽体離脱しない様に封じに行くかなぁ」
ハネナガに交差点を見張ってもらい始めてから、まだ誰も死んでいないのだ。
もう1日か2日程度準備のために時間を掛けても大丈夫だと期待しよう。
病院へ不法侵入して捕まるのは避けたい。
直接捕まえにくる人間は意思誘導で追い払えるけど、防犯カメラとかに写っていて誰かが対応を指示した場合だと、その指示が変な風に履行されない結果になったら不味いだろう。
サイコな子供のせいで、面倒くさい〜。




