表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/36

第9話「模範生」

Aクラス最初の授業は、基礎魔法学だった。

 内容は単純だ。

 魔力循環、制御、詠唱速度――

 どれも基礎中の基礎。

 だが、教壇に立つ人物が問題だった。

サイト「教科書を開け!早くしろ!」

サイト・マークスマンは腕を組み、教室を見下ろす。 サイト「Aクラスだからといって、特別扱いはしない」

サイト「むしろ――期待外れは、Bクラス行きだ。」

 視線が、自然とアイミスやミスティに向く。

 空気がわずかに張りつめた。

アスベル(期待通りの悪役だ。)


 アスベルは真っ直ぐに背筋を伸ばし、教科書を開く。

指示通り。完璧な姿勢。予習は完璧。

サイト「では、順番に詠唱してみろ」

サイト「ランドバーグ」

 即座。

アスベル「はい」

 立ち上がり、教科書通りの詠唱を行う。

派手さはない。

 だが、魔力の流れは安定している。

アスベル(こんなの無詠唱でできるのに)

サイト「……合格」

歯切れは悪いが、否定できない。

 教室がざわつく。

「さすが首席……」 「無駄がない……」

 アスベルは静かに着席した。

アスベル(ほらな)

アスベル(“模範生”は楽でいい)

 次。

サイト「コルド・ヴァレンシュタイン」

 コルドがゆっくりと立ち上がる。

コルド「はいはい……」

 軽い態度。

 詠唱もどこか雑。

 魔法は発動したが、魔力が散る。

サイト「……やる気があるのか?」

コルド「もちろんですよ、教官」

笑顔。

コルド「魔法の発動はできていますが何か?」

 教室が静まる。

サイト「……減点だ」

苛立ちを隠さない。

サイト「もう一度だ。」

コルドは納得がいかないという態度で繰り返す。


コルド「おっと、すまない」

魔法が暴発し、アイミスの教科書に穴が空いた。

コルド「すまないねぇ。わざとじゃないんだ。」


 わざとだ。

 周囲が息を呑む。

アスベル(先生は止めない…チャンスだな)

アスベル「大丈夫ですよ」 即座に腰を上げ、アイミスの隣に座る。

教科書を見せて上げる。

アスベル「授業中ですし、気にしないでください」

 穏やかな笑み。

 コルドは一瞬だけ、面白くなさそうに目を細めた。

コルド「……流石は公爵家の人間だね」

 サイトが咳払いをする。

サイト「次、ミスティ・ロング」

 ミスティが立ち上がる。  詠唱は正確。

 だが、魔力の流れは荒い。

サイト「……力任せだな」

サイト「剣ばかり振ってきたツケだ」

 ミスティの肩が、わずかに強張る。

 その瞬間。

アスベル「教官」

手が上がる。

サイト「何だ」

アスベル「詠唱自体は正確です」

アスベル「制御は課題ですが、伸び代はあるかと」

 教室がざわつく。

 サイトは不機嫌そうに舌打ちした。

サイト「……ダメだ!このくらいのことはできてくれないと困る。補習だ。」

 ミスティが一瞬、アスベルを見る。

アスベル(はぁ…)

アスベル「なら、僕も補習を受けます。クラスメイトを見捨てられませんから」

サイト「お前は出来ているだろう!?」

アスベル「だからといって、補習を受けてはいけないという規則はないはずです。」

サイト「……勝手にしろ」

ミスティ(……助け舟、か?)

 次。

サイト「アイミス」

 アイミスが立ち上がる。  緊張が見て取れる。

 詠唱。

 魔法は成功。

 だが、出力は控えめ。

サイト「……弱い」

サイト「Aクラスの水準ではない」

 空気が重くなる。

 アスベルは、静かに口を開いた。

アスベル「教官」

サイト「……また君か」

アスベル「先日の魔法試験を覚えてないのですか?アイミスは魔力制御が苦手です。ましてや、暴発させてはいけないと思ったのではないでしょうか?」

サイト「しかしだな…」

アスベル「この段階では、正しい選択かと」

 模範的な意見。

 教科書通り。

 サイトは黙り込む。

サイト「……座れ」

不機嫌そうに言う。 サイト「次だ」

 アイミスが小さく声を出す。

アイミス(……ありがとう)

アスベル「どう致しまして」

 授業が終わる。

 教室がざわつく中、コルドが歩み寄ってくる。

コルド「いやはや」

軽く拍手する。

コルド「さすが首席殿。先生のお気に入りだ」

アスベル「そう見えますか?」

コルド「少なくとも」

目を細める。

コルド「君は、まるで教科書のような貴族だよ」

 探る視線。

アスベルは、にこやかに返す。

アスベル「面白いことを言いますね。そちらも貴族らしい貴族のようだ。」

お互いに笑い合う。

 嘘ではない。


アスベルは次の授業に向かうため教室を出る。

教室を出る背中に、視線が集まる。

「優しい貴族様だ……」 「今までの貴族と違う……」

 その声を聞きながら、アスベルは内心で笑った。

アスベル(いい反応だ)

アスベル(人は上の者が下の者を守るというエピソードが大好きだからな)

 アイミスとミスティが、自然と隣に並ぶ。

ミスティ「……補習を受けるこになってすまない」

アスベル「共に頑張りましょう。」

ミスティは肩をすくめる。


コルドは少し離れた場所で、その様子を見ていた。

コルド(……面倒な男だ)

コルド(潰してやるぞ。アスタ…)



 箱庭は、静かに歪み始めていた。

読んで下さり、ありがとうございます。

アスベルは悪い人ですねぇ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ