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悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
飛翔編

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80/80

最終話「残響」

二十年の月日が流れた。

王国は平和だった。

南のヴァレンシュタイン公爵家は王国の要として国境を守り、

東のサファイア公爵家は交易で国を豊かにし、

西のルクシード公爵家は軍を率いて王国の盾となっていた。

王国はこれ以上なく安定していた。

一人の女王の治世によるものだった。

後の歴史に名を刻むであろうレイア女王。

二十年を経てもなお、その統治は揺るがない。

民は彼女を敬い、王国はかつてない繁栄を迎えていた。

その女王を支える者達もまた、それぞれの道を歩んでいた。

シンシアは王国教会の司祭となり、人々の祈りを導いている。

アイミスは宮廷魔導士として王国の魔法研究を統括し、その名は大陸中に知られていた。

ミスティは王族近衛騎士団長となり、王城を守る剣として恐れられている。

そして。

王配アスベル

王配の人気はレイア女王を凌ぐ勢いであり、レイア女王の代わり地方へと赴き、治世を手助けしていた。

その姿は、二十年前と少しも変わっていない。


そして王国を支えるもう一人の男。

宰相コルド・ヴァレンシュタイン。

王国の政治を支える柱として、今も王城に立っていた。

レイア女王をよく諌め、時には果断な判断を促していた。



夜。

王城の一室。

机の上には紙が積まれていた。

アスタは羽ペンを走らせている。

静かな夜だった。

ランプの光だけが部屋を照らしている。

扉が開いた。

入ってきたのは少女だった。

金色の髪。

レイアによく似た瞳。

王女アスリナ。

十五歳になっていた。

アスリナ「父上、お身体に悪いですよ」

アスタは顔を上げる。

アスタ「ん……そうだね」

少し疲れた笑顔だった。

アスリナは机に近づく。

机の上の紙を見る。

アスリナ「何を書いていたのですか?」

アスタはペンを置いた。

そして少しだけ考える。

やがて静かに答えた。

アスタ「僕の優秀な弟の物語さ」

アスリナは首を傾げる。

アスリナ「弟?」

アスリナ「父上には弟がいるのですか?」

アスリナ「兄のアスタがいるとは聞いてましたが」

アスタは少しだけ笑った。

アスタ「……そうだね」

しばらく沈黙する。

そして机の紙を見つめる。

アスタ「だからこそ、こうやって書いているのさ」

アスリナ「??」

アスリナは不思議そうな顔をする。

アスタは窓の外を見る。

王都の灯りが広がっていた。

平和な王国。

アスタは静かに呟く。

アスタ「歴史には残らないんだ」

アスリナ「え?」

アスタ「優れた英雄の中には」

アスタは空を見上げる。

アスタ「誰にも知られずに消えていく人もいる」

沈黙。

アスリナは何も言えなかった。

アスタはもう一度ペンを持つ。

そして紙に書いた。

アスベルという名前は王国の歴史書には存在するだろう。

しかし。

確かにそこにいた。

王国を変えた男。

誰よりも王国を愛した男。

そして。

誰よりも孤独だった英雄は記されない。

アスタはペンを走らせる。

物語を書く。

ただ一人の弟のために。

静かな夜が流れていた。

王都の灯りの向こうで、風が草原を揺らしていた。


読んでくださり、ありがとうございました。

物語はここで終わりです。

次回作は「魔弾の狙撃手リィン」を予定しています。

明日3月22日から連載予定です。

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