第78話「清算」
整然とした部屋。
先ほどまでの酒池肉林の光景は跡形もなかった。
床にはルークレストとその部下達が縛られて転がっている。
目は虚ろで、意味のない言葉を呟いていた。
アイミス「……こんな規模の幻影魔法」
シンシア「不可能です…」
ミスティ「いつからかかっていたんだ…」
沈黙。
アスベルは椅子に座ったまま、ゆっくりと息を整えていた。
コルドはその様子を見つめる。
コルド「……香りか」
アスベルは薄っすら笑う。
コルド「あの香りが幻影魔法のトリガーだった。」
アスベルは答えない。
代わりに足元の男を見る。
アスベルはゆっくり立ち上がった。
そして机の上から一つの束を取り上げる。
かなり分厚い書類だった。
アスベル「これを」
アスベルはコルドに投げる。
コルドが受け取る。
コルド「……これは」
書類を開く。
そこには、密輸、奴隷売買、暗殺、王国貴族との癒着
すべての証拠が記されていた。
そして、アスベルが王配になってから起きた貴族の変死事件の証拠も揃っていた。
コルドの目が細くなる。
コルド「お前、こいつを利用していたのか」
アスベルは表情を変えない。
アスベル「この男が王国の闇だった。」
アスベルは淡々と言う。
アスベル「これで王国の闇は掃除完了だ。」
コルドは書類を閉じた。
コルド「……お前」
コルド「いつからだ」
アスベル「さあな」
沈黙。
アスベルはコルドの横を通り過ぎる。
そして耳元で小さく言った。
アスベル「アスタを襲撃させた件は」
コルドの呼吸が止まる。
アスベル「伏せておいたから心配するな」
コルドの拳が震える。
コルド「……お前は」
コルド「いつもそうだ!」
コルドがアスベルの胸倉を掴む
コルド「全部自分で背負いやがって」
コルド「レイアや俺は仲間じゃなかったのか!」
部屋に響く怒声。
アスタが目を見開く。
アスベルは抵抗しない。
コルドは舌打ちをしながら、ゆっくりとアスベルを下ろした。
アスベルの表情は穏やかだった。
アスベルはアスタの方を向く。
アスベル「兄さん…」
アスベル「本当は巻き込みたくなかった。」
アスタは何も言わない。
アスベル「最後まで迷惑かけてごめん」
アスベルからの始めての謝罪だった。
アスタはゆっくりとアスベルに近づく。
そして、アスタは拳をアスベルの胸に当てる。
アスタ「…お前らしくないぞ」
短い言葉だった。
アスベルは照れくさそうに、顔を背けた。
コルド「……」
コルド「さて、アスベル王配殿下」
アスベル「わかってる」
その瞬間、扉が開かれた。
レイア「アスベル!」
アスベル「レイア女王…」
レイア「コルド!アスベルは無罪です!1人で闇組織と戦っていたのよ!」
部屋に沈黙が走る。
コルド「…それは無理です」
レイア「なぜ!」
レイアの目には涙が流れていた。
コルド「闇組織による有害貴族の暗殺、酒池肉林の偽装による公務の放棄」
コルド「本来なら処刑です」
沈黙
コルド「しかしながら、闇組織を始末したことの功績により隠居という形で退くのが一番だと考えます。」
レイア「そんなこと!私が!」
アスベル「レイア…」
レイアはアスベルを見つめる。
アスベル「レイア…君は女王だ。
アスベル「俺なんかで王国を壊すな。」
コルドは無言で頷いた。
アスベルは静かに続けた。
アスベル「隠居したい場所がある」
アスベル「最後くらい我儘を聞いてくれるよな?」
アスベルはコルドの方を向く。
コルドはしばらく黙っていた。
溜息をつく。
コルド「……希望だけは聞いてやる」
アスベルは頷いた。
アイミスがアスベルに近づく。
アイミス「アスベル王配殿下を…拘束します。」
アスベル「すまないな」
アイミス「…ばか」
アスベルの両手に手錠が掛けられ、連れて行かれた。
誰も止めなかった。
読んでくださり、ありがとうございます。
毒は毒をもって制す。




