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悪徳貴族として酒池肉林を目指しているが、世間がうるさいので黙らせることにした  作者: ルピナス
飛翔編

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第71話「双子」

聖王国

かつて、アスベルが変えた聖王国は生まれ変わり、民衆の治安も落ち着いていた。

聖王国の外れにある白壁の修道院は、冬の陽に静かに照らされていた。


アスタは中庭で一人で空から地面の一点を見つめていた。

アスタ(聖王国に来てからもう5年以上が経つ。)


背後から声がかかる。

アイミス「アスタ様、お客様です。」

アスタ(誰だ?)

アスタはゆっくりと振り返る。

アスタ「通してくれ」


しばらくして、アイミスとミスティがフードを被った男を連れてきた。

コルド「久しいな、アスタ」

コルドがフードを脱いだ瞬間、アスタの顔色が変わった。

アスタ「……王国で何かあったんですね」

挨拶より先に出た言葉。

コルドはそれだけで理解する。

コルド「これから起きるんだ。」

アスタ「国王が崩御されて、アスベルが王配となった。あなたが宰相だ。」

アスタ「問題が起きるとは思えない。」

コルドとアスタとの間で沈黙が走る。

そこにシンシア牙入ってくる。

シンシア「と、とりあえず場所を移しましょう!ここだと冷えてしまいますよ。」

アスタとコルドは無言で頷き、移動を始めた。


部屋に着く。

質素な机。飾り気のない生活。

かつてランドバーグ公爵家の嫡男だった男の住処とは思えないぐらい閑散としていた。

コルド「王国は、今は安定している」

アスタは苦く笑う。

アスタ「アスベルがいる限り、そうでしょう」

その言い方は、信頼ではない。

確信だった。

コルドは真っ直ぐ言う。

コルド「あいつは…アスベルは変わってしまった。」

空気が止まる。

アスタの視線が鋭くなる。

アスタ「……どういうことです?」

コルド「部屋に籠り、毎日遊んでいる。」

沈黙。

アスタ「アスベルらしいと言えばらしいですが」

コルドは否定する。

コルド「あいつの野望は知っているが、責任もなくやるような男ではない。」

コルド「あいつは、何かを企んでいる。」

アスタ「アスベルを信頼しているんですね」

コルド「…ふん」

部屋の中に再び沈黙が走る。

アイミスがコーヒーを持ってくる。

アスタはコーヒーを受け取ると一口飲む。

アスタ「アスベルが遊んでいることと私に何の関係が?」

コルドは重い口を開けた。

コルド「アスベルを失脚させる。」

アイミス「…!」

ミスティ「そんなこと!できるものか!」

コルド「現に、レイア女王との関係も薄く、世継ぎも生まれない。政務には滞りはないが、民衆にバレるのも時間の問題だ。」

アスタは天井を見上げる。

アスタ「そこで、僕か…」

コルドは頷く。

コルド「あなたとあいつは同じ顔だ」

コルド「王配をすげ替えれば、混乱は最小限で済み、平穏そのものだ。」

アスタは笑った。

乾いた笑いだった。

アスタ「便利ですね、双子というのは」

その目は自嘲している。

アスタは窓の外を見る。

聖王国の穏やかな景色。

アスタ「ガストンの件も、アスベルのあの傷も……私の甘さが招いた」

コルドは黙る。

アスタ「アスベルは何も私に言わない。」

アスタの目に涙がこみ上げてくる。

アスタ「ただ、私をここに送った。」

そこには恨みはない。

だが重い。

アスタ「私は、逃げた。」

アスタ「なにもかも、嫌になったんだ。」

初めて、弱さが言葉になる。

アスタ「アスベルに全てを押し付けてしまった。」

コルドは低く言う。

コルド「アスベルを休ませてやれるのはあなただけだ。」

アスタの目が揺れる。

アスタ「……」

静かに答える。

アスタ「返す」

コルドは黙って聞く。

アスタ「弟は、いつも私の影を演じてきた。」

アスタ「今度は私が、アスベルの影になる。」

その言葉は覚悟ではない。

贖罪だった。

コルドはフードを被り、立ち上がった。

コルドが部屋から出ようとすると、アスタが問う。

アスタ「弟は……私を恨んでいるでしょうか」

コルドは即答しない。

そして言う。

コルド「あいつはそんなやつじゃない。」

コルドは部屋から出て行った。


シンシア「アスタ様……」

アスタは目を閉じる。

アスタ「……アスベル」


双子は再び交差する。

読んでくださり、ありがとうございます。

アスタとアスベルが再び出会います。

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